生き残されし彼女たちの顛末 第4部 第60章 助理会、はじまる
~周光立の業務日誌より~
11月11日(月)
朝から晴れた青空。しかし空気は一段とひんやりとしている。
助理会1日目。運営スタッフが第5地区の国父紀念ホールに8時に集合。進行役の自分と高儷、そしてロジ担当の李勝文と陳紅花は全部の会に立ち会う。その他の対策本部スタッフは、交替で毎日2人ずつ運営にあたる。今日は張皓軒と張子涵。民生第一部メンバーが揃った形。
運営補助、警備は、助理会が今日行われる第4自経団と第1自経団から合わせて20人が終日加わる。
周光来は9時少し前に到着し、リハーサルのときと同じ楽屋に入る。
会場外には各通信社の取材クルーが集まっている。
9時過ぎに開場。第4自経団は原則徒歩にて集合。9時半頃から人が増え、徒歩困難者用のバス5台が到着する9時45分には7割ほどの席が埋まった。最終的な会場参加者数は900人超。予定どおり10時に開始。
暗転した中、舞台上の2か所と場内の4か所のエア・ディスプレイに映像の投影。周光来の映像が終わり、会場の照明がフェード・インする中に演壇の周光来本人が現れる。場内から拍手が巻き起こる。拍手が収まるのを待って、肉声のメッセージ。「互相幇助」を語り、一致団結して難局を乗り切ることを呼びかけ、演説が終わる。最初のときより大きな拍手が起こる。しばらく応えて手を振ったのち、劉静の介添えで退場する。代わって自分と高儷による説明セッション。ここまで約1時間と想定とおり進む。
10分の休憩の後、質疑応答。開始早々5人ほどが挙手。高儷が指名し、運営スタッフがマイクを持って質問者のところに向かう。
質疑の具体的な内容は、全自経団の会が終わった後に、整理しまとめて記すこととする。
質問は最終的に7人。それぞれ1回のQ&Aですみ、質疑応答セッションは35分ほどで終了。もしも後日質問があれば、PIT上で受け付けることを述べた。
いよいよ、参加した区長助理によるPIT投票。事前投票分、リモート分とあわせて、投票結果を集計し発表。賛成985、反対0、棄権22。圧倒的多数の承認に安堵した。
承認への謝意と今後の協力のお願いを述べ、11時50分に閉会を宣する。場内から拍手。有難いことだ。
退場の誘導が場内整理で最も緊張する部分。中央の大階段と左右2つの階段。エレベーターが6機。1000人規模の人間を順次会場から退出させ、地上へと誘導する。今回は徒歩で帰路につく者が大半なのだが、午後の会は目的地別にバスに誘導する必要があり、その分手間が大幅に増えることになる。午前の部の退出は20分程度で終了した。
13時から配置につくスタッフは、一足先に昼食休憩。退出者の誘導にあたっていたスタッフも戻り、12時15分から昼食。ホールのスタッフがゴミを集めるなど場内清掃。
午後は第1自経団。バスによる輸送が中心となる。13時に開場し、13時15分にバスの最初の便が到着し、30人ほどが入場する。次々と到着するバスの便を李勝文と陳紅花が誘導し、運転手の話を聞いて2回目の運行経路を指示する。到着するバスから降車した参加者が続々と入場。13時45分頃までに会場の6割方が埋まり、13時55分に最後の便が到着。全員着席したのが14時5分過ぎ。最終的な会場参加者数は850人程度。
定刻10分遅れで午後の部を開始する。午前中と同じ進行。15時20分から質疑応答セッション。5人が質問し、うち2人がQ&A2回となった。40分ほどで終了し、16時頃からPIT投票。投票結果は賛成991、反対0、棄権18。こちらも圧倒的多数の承認。謝意と協力のお願いを述べて16時5分過ぎに閉会を宣する。
運営スタッフが午前と同様に誘導。李勝文と陳紅花はバスの調整におおわらわ。バス乗車待ちが発生した影響で午前中よりは時間がかかり、退出に45分、最後のバスが出発するまでに1時間ほどかかった。
反省会。やはりバスの会の、特に退出時が課題。バスの行き先の案内に手間取ったことから、大型のタブレットを用意して行き先を表示、案内できるようにする。タブレットの準備は張皓軒に指示。
明日は午前、午後ともバスの会。午前のバス出発が完了した直後に午後のバスが到着することが想定される。急遽、張皓軒と張子涵に午前退出~午後入場の時間帯に、応援に入ってもらうことに。また、誘導スタッフの昼食休憩を一部前倒し、残りを後ろ倒しとする。
終わって会場を出たところで、長江新報の馮万会の取材を受ける。全自経団の議決が揃うまで結果の発表はできないが、「今日のところは首尾よく進んだ」とだけ答えた。
夜、楊大地とビデオ通話。明日は武漢の助理会。3つの支団を1日で行う。ダイチと陳春鈴の移動日をはさんで木曜日に重慶の3支団。金曜午前に移動して午後に成都自経団。各回200から300人程度の規模で、武漢は3支団それぞれの場所で開催し、重慶は中心部の1ヶ所で3支団とも行う。
今日の午後、武昌でリハーサルを行い、漢陽、漢口、重慶、成都に中継。各地のスタッフが運営の流れを確認したとのこと。緊張してぎこちなかった陳春鈴も、慣れるにつれて生き生きと動くようになったらしい。
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~陳春鈴の日記より~
さあ、明日から本番だ。あの人のためにもがんばらなくっちゃ!
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~カオル(李薫)の独白~
あの人が…
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~周光立の業務日誌より~
11月12日(火)
朝から雨が降って底冷えする。午前・午後ともバス輸送が続き人の流れのコントロールが難しいところに、生憎の天気。ただ、小雨とのこと。
昨日と同じく8時に集合。交替の対策本部スタッフは、今日は林興建とジョン・スミスの技術第二部コンビ。第2自経団と第9自経団から合わせて20人の運営メンバー。
午前は第9自経団。9時に開場し入場のペースは昨日の午後と同じ。10時10分頃に開始。会場参加者数は800人強。昨日と同じルーティーンの後、質疑応答は6人が各1回。11時50分頃にPIT投票。賛成979、反対2、棄権36。11時55分に閉会し、いよいよ退場の誘導となる。大型タブレットを持って待機していた張皓軒と張子涵が誘導に加わる。雨のせいで人の流れが滞りがち。一方、大型タブレットの行き先案内により、バスへの誘導は昨日よりスムーズになった。両方の効果が打ち消しあって、昨日午後の会と同じく、退出に45分、最後のバスが出るまでに1時間かかった。
ほどなく午後の第2自経団の区長助理たちを乗せたバスが到着し始める。14時5分頃に開始。会場参加者数は900人弱。午前と同様に進み、質疑応答の質問は8人で1人がQ&A2回となった。16時頃にPIT投票。賛成995、反対0、棄権14。16時5分に閉会。雨も上がり、人の流れもスムーズになり退出に40分、最後のバスが出るまで50分で完了。
バス輸送の回が続いた1日。しかも雨降りで気を揉んだが、みんなよく動いてくれて、大過なくすませることができた。
武漢は朝9時から武昌、13時から漢陽、17時から漢口で、最終の会場撤収が20時頃になる長丁場。しかも翌日楊大地と陳春鈴は朝から重慶へ移動。21時頃楊大地とビデオ通話。武漢3支団が問題なく終わり、圧倒的多数で承認されたことを確認した。
11月13日(水)
今日の上海の交替本部スタッフは技術第一部からアドラ・カプールとヒカリ。昨日と同様、本日開催する2つの自経団から合わせて20人の運営メンバーが参加。
午前の第10自経団はバス輸送。天候に恵まれ、昨日よりスムーズな誘導ができた。予定通り10時に開始。会場参加者は750人ほど。同じルーティーンの後、質疑応答は9人でうち2人が2回のQ&A。今までで一番長い質疑応答セッションで、PIT投票は12時少し前になった。賛成961、反対5、棄権36。12時5分に閉会し、退出誘導。こちらも昨日よりはスムーズになって退出に35分、最後のバスが出るまで45分。
午後の第6自経団は原則徒歩による集合。予定通り14時に開始。会場参加者は900人弱。質疑応答は7人ですべて1回のQ&A。15時45分に行ったPIT投票は、賛成988、反対0、棄権15。ここまで圧倒的多数で承認されている。16時15分までには退出が完了。
スタッフのおかげで今日も無事終了。あと2日。
帰りがけにヒカリがアドラ・カプールと連れ立ってやってきた。今日の参加者の誘導を見ていて、ネオ・シャンハイへの移動の際に最もネックになるのは、レフュージの登録ゲートではないかと考えたとのこと。ラフなシミュレーションをして、MATESメッセージを入れてくれることに。
楊大地よりメッセージ。陳春鈴とともに無事重慶入りし、明日の運営について現地スタッフと打ち合わせに入るとのこと。
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~MATESチャットより:陳春鈴と周光立~
陳春鈴:こんばんは。
周光立:これはこれは、こんばんは。
陳春鈴:いきなりごめんなさい。お元気ですか。
周光立:メッセージありがとう。いま、どうされていますか。
陳春鈴:打ち合わせが終わって、用意された重慶の部屋に落ち着いたところです。
周光立:それは、お疲れのところわざわざメッセージくださって、本当に嬉しいです。
陳春鈴:貴方こそ、お疲れじゃないですか。ご迷惑だったかしら。
周光立:とんでもない。貴女からメッセージいただくのは、嬉しいサプライズです。
陳春鈴:ごめんなさい。明日もお忙しいでしょうから、今日はこれぐらいにしておきます。
周光立:こちらこそごめんなさい。貴女も、どうぞご無理はなさらないでくださいね。
陳春鈴:お気遣いありがとうございます。では、おやすみなさい。
周光立:ゆっくり休んでください。おやすみなさい。
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~陳春鈴の日記より~
緊張して、うれしくて、楽しくて、そして緊張した。ああ…眠れないかもしれない…
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~カオル(李薫)~
(PITを出しては…しまい…出しては…)
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(つづく)