【スプラトゥーン3】サイド・オーダー考察+感想(ネタバレ有)
「スプラトゥーン3」は、インクを塗ってナワバリを広げて遊ぶアクションシューティングゲームだ。今回は主にDLCについて、プレイした感想とか考察を書いていく。
🐦カナリア:
スプラトゥーン3!
なんだかんだやってるな!
❄️ウィル:
そうだな。
俺は3から始めた勢だから、前作との比較はできないが。
💙シラユキ:
今回はゲーム性をどうこういう趣旨ではないものね。
いちおうストーリーは1から把握しているけど、
ストーリーについてはどう思ってるの?
❄️ウィル:
意外とがっつりSFを持ってこられた、という感じだな……。
3のストーリーも「旧人類の生き残りが支配圏を奪い返すために現人類を作り替えようとする」と纏めてしまうと余計にSFみが強い。
1はカートゥーン色強めの、アクションはともかくイカvsタコの戦いもコミカルで、その裏でちょっと真面目な考察もできるくらいの印象だった。これは2も同じだろう。しかし2のDLCからはコミカルな雰囲気そのままに、それまであくまで裏側にあった世界観をがっつりストーリーに組み込んできている。
💙シラユキ:
2のDLCからというと、オクトね。
❄️ウィル:
2は1の続編且つ、1の語り直しをしているような気がしたな。出すハードの変更もあるから、新規プレイヤーに改めて「基本はこういう話ですよ」という。もちろんそこには前作最後のフェス、つまりプレイヤーの勝敗の結果が反映されるというおまけつきでな。
だからこそ、DLCのオクトから世界観を一気に出してきた気がする。
流れを汲んで作られたのが3のヒーローモードという感じか。
🐦カナリア:
イカとタコとシャケの共闘は熱いよな!
❄️ウィル:
ラスボス戦の絵面が完全に意味不明なんだがな……。
※この記事自体はサイド・オーダーのインタビュー記事が出る前に書いていたため、重複したり解釈が違っていることがある。注意してほしい。
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≫サイド・オーダーとは?
さて、サイド・オーダーがどんなゲームかというと。
真っ白になった前作の舞台・ハイカラスクエアで、「秩序の塔」と呼ばれる塔を最上階目指して登っていくものだ。各フロアにはクリア条件や難易度が設定されていて、攻略する際に配布されるカラーチップでブキを強化できる。塔から出ると手に入れたチップやコインはすべてなくなってしまうが、代わりにシンジュに変換される。シンジュはハッキングに必要で、ライフ数や緊急ジャンプを行えるようになるなど、基礎能力を強化できる。
場合によっちゃ敵がわんさか沸いてくることといい、ヒーローモードよりはサーモンラン寄りだな。
また、前作最後のフェス、「秩序vs混沌」の結果が今作に反映されているため、3の舞台は混沌の街・バンカラ街となった。サイド・オーダーとはその「秩序側」という意味も含んでいる。
🐦カナリア:
敵もサモランっぽいやつらがいるよな。
❄️ウィル:
ノビルメンテとかはわかりやすいな。
ノビルメンテの音が既にトラウマなんだが……。
💙シラユキ:
柱とカプリチョーソもそうね。
人によってはこっちの方がトラウマになってそうだけど。
そんな敵の名前には音楽用語が使われている。
ノビルメンテは「高貴に、気高く」。
カプリチョーソは「気まぐれ」。
最初のボスであり、助け出すことになるイイダ・エジタントのエジタントも、「控えめに」とか「静かに」という意味がある。この流れでいくと、ラスボスであるオーダコとコダコは「コーダ」、楽譜において反復記号を終わらせる場所だろうな。
≫真っ白なハイカラスクエア
さて、この真っ白なハイカラスクエアは結局なんだったのかというと、イイダの作った仮想世界ネリバース。2のDLCであるオクト・エキスパンションで、ネル社によって消毒されてしまったタコたちの意識を取り戻し、奪われた記憶を返すための世界だ。
奪われた記憶はだれのものかわからないものも大量にあるため、試練をこなして自分で取捨選択する方式をとったのが秩序の塔だ。しかしラスボス・オーダの「このままこそが至高」という思想によって秩序の塔は魔改造されてしまう。
💙シラユキ:
ウィル君は、印象はどう?
❄️ウィル:
うーん……、ベース的なところで言うと、
「幼年期の終わり」がモチーフのひとつに入っているんじゃねぇかとは思った。
「幼年期の終わり」はアーサー・C・クラークによるSF小説。突如現れた宇宙人がその圧倒的な存在感と異星の技術を提供し、世界にほぼ強制的な平和と安寧をもたらす。オーバーロードと呼ばれる彼らは、大いなる宇宙の秩序によって人類を飼い慣らし、やがて……というストーリーは、モチーフの一つというか名前の元ネタくらいにはなっていそうだな。ラスボスのオーダは英語名では「Overlorder」らしいしな。
まあそもそも、ストーリーでのタコはどう見ても宇宙人がモチーフに入ってるし、おまけにタコは英語圏では悪魔だ。
🐦カナリア:
ステージ名も「✕✕の地底に謎の○○を見た!」みたいな、
未確認生物探索番組のノリだよな、アレ。
💙シラユキ:
どうして居るのに未確認なのかしら?
❄️ウィル:
話がややこしくなるからやめろ!
しかしこの秩序の世界で、ユメエビは面白い学名だな。
そんなユメエビの学名にはルシファーの名が入っている。秩序の世界に反逆して変化に興味を持っている存在だから……と考えると、ユメエビが変化に興味を持っているという設定は面白い。……ルシファーの名を冠するものがあれほど穏やかで「タコさん」とか話しかけてくるの、だいぶ誰かの性癖を刺しそうだが……。
というか、ユメエビの存在を作ったイイダも知らんとは。この世界、もはやイイダもタコの技術者も知らん成長を遂げつつあるのでは……。
🐦カナリア:
それにしても、なんでオーダはタコなんだろうな?
❄️ウィル:
タコたちの潜在意識が入ってるからじゃないか?
中ボスなんかでも顕著にわかるだろ。
例えば中ボス「イカイノカノン」。
「イカイノカノン」は元々、イイダがネリバースの治安維持として頼んだ4号のデータを改変されたものだろう。4号はイカだから、タコにとっては本来は敵。しかし、イカイノカノンは明らかにタコである8号に似ている、と言われる。これは潜在的にイカを「異界(地上)からやってくる、自分達に似ているもの」と考えているとも見える。曲にもナイスとカモンが使われてるのも面白いな。これがイカ語であるなら、タコにはどういう意味なのかわからんだろう。これが「カノン(輪唱)」にもかかってるわけか。
💙シラユキ:
潜在意識といえば、8号のことはどう思うかしら?
イカイノカノンはハチ君に似ているのでしょ?
❄️ウィル:
こいつはメタ的に魂(プレイヤー)が一緒だから説もあるな。
3号も4号も8号も、同じ魂(プレイヤー)の欠片があるから似ている、というメタ的な見方ができるが、8号の魂を補強していたのが3号だったのではないかな。
他の奴等は「ときどきボーッとする」程度だったが、8号の魂はロッカーそのものになっていたせいで足りない部分が多くなっていた。その部分に3号が入り込んだとすれば、ゲソだって2色にもなるだろ。
というわけで、8号のアバターの中には「8号と3号が同居していた説」を推すぞ、俺は。共同戦線だな。8という数字を縦で割れば3になるし。エンディングでこっちを見て微笑む8号は、プレイヤーに対してともとれるし、動くのに足りない魂を満たして手助けをしてくれた3号に対してともとれる。プレイヤーという同じ魂の欠片を有しているから同調しやすかった、と捉えると面白いかもな。
≫「このまま」とは?
🐦カナリア:
あとはー、そもそも
「このままがいい」の正体とか?
作中での言葉をそのまま受け取るなら、地上に出るタコが増えたことで、タコの世界も変化が生じた。それを良く思っていない奴等がいて、仮想世界に手を加えた……という事だが。
❄️ウィル:
そもそも世の中とは良い方にも悪い方にも緩やかに変化し続ける。
穏やかな凪のような瞬間というのは実はほんの少ししかない。
その変化を混沌と捉えるなら、秩序とは、「変わりたくない」「この日々が永遠に続くといいのに」と願った何気ない瞬間、そして「過去」ともとれるな。
そもそもが過去の因縁が原因になって起きていることが多いしな、スプラトゥーン。
1・2は百年前の大ナワバリバトルから続いている因縁だし、タルタル総帥はかつての人間が作ったAI。クマサンは哺乳類の復活。
そこから考えると、今回は多くの人にとって身近な過去がピックアップされているのかもしれない。
ここにある記憶の断片を見ると子供時代のものが大半だ。それが「あの日のパンケーキ」や「思い出のえほん」や「ドの出ないトイピアノ」に象徴されているなら……、子供時代、つまり大人の庇護のもとにある不安と心配の無い時間や、小さな幸せ、はたまた友と笑い合った時間ともとれる。
🐦カナリア:
子供の頃の何気ない瞬間って感じなのか?
オレはよくわかんねぇけど。
💙シラユキ:
そんなに難しく考えなくてもいいんじゃない?
コダコ君を見るとすごくわかりやすいのだわ。
仲間が出て行ってしまって寂しいとか、
楽しかった頃に戻りたいってことでしょう?
❄️ウィル:
お、お前、そんなあっさり……。
……だがそう考えるとミズタとイイダの関係もわかりやすいかもな。
≫ミズタとイイダの話
さて、このゲームは「イカとタコ」「秩序と混沌」「3号と実験体3号」のように、対の関係になっているものが沢山出てくる。
例えば仮想世界を「偽物の街」と見れば、地下にかつての文明を模倣したオルタナとも対応するし、「タコの世界を飛び出したイイダと、変化を望まないタコ」という関係にも見られる。
そしてここにもう一組。
タコの世界で、切っ掛けを作ったのは間違いなくイイダだ。
1作目のラスボス戦で流れたシオカラ節のグルーヴを宿し、たったひとりタコの世界を抜け出してイカの世界へと飛び込んだイイダ。そしてヒメと出会い、世界公演を経た現在のイイダ。
そしてその変化を目の前で見させられたのが、他ならぬミズタだ。
……それじゃあ今回の本題ともいえるミズタについての考察にいってみようか。
≫ミズタについての考察
そんなミズタからの手紙は創作をしている人間には刺さるのではないかな。
ミズタはクールであまり自分の事を語ろうとしない。ダウナー系で、あっさりしている。
それはミズタが、確かめたいことがあって秩序の塔に戻ってきたと言っている時にもうかがえる。ミズタは、消毒されていたときに聞こえていた歌がヒメの声だと確信しているそぶりを見せ、礼まで言うが、それを直接説明することはない。つまりミズタとはそういう奴だ。
自分のことを不良と言っているが、要は学校や社会に馴染めなかったタイプだろう。だが、イイダとはレコードの貸し借りをするような仲で、イイダの持つ「ヤバい音源」にも驚いている。それは退屈な日常のなかで、輝くような一瞬だったのかもしれない。
だが、イイダはそんな日常すら捨てて地上へ向かった。
反対に、ミズタは何かを吹っ切れるために地下へ向かった。そのときの記憶は無いと言っているが、同時に辛い場所に居たとも言っている。
実際、ミズタは消毒されて音楽を作るだけの存在になっていたが……それを「自分にはこれしかないと音楽を追究するものの、燻って芽が出ないまま長い時が経ってしまった」と捉えるとどうだろう。これは音楽でなくても、小説でも絵でも漫才でも当てはめてみるといい。そして、自分がただひたすら向き合っている間に、仲の良かった友人は才能を発揮し、センパイと慕う誰かと一緒に世界的に活躍していると知ったら……?
おそらくミズタ自身も気がつかないまま、「レコードを貸し借りしたイイダとのあの頃」に戻りたいという思いがあったんじゃないか。それこそ「このまま」だ。
しかし、それでも消毒されて記憶と自我を失っていた時=燻っていた時に心を動かしてくれたのは他ならぬヒメの音楽だったし、かつての友人と再び繋げてくれたのも他ならぬ音楽だった、というわけだ。
それにしても、向かった先が正反対なのも象徴的だな。
外に飛び出していった天才肌と、内に籠もった努力家。
左手の怪我も音楽に対する挫折と復活の象徴として見るとちょっと面白いものがある。あの瞬間にようやく治療を受け入れたと考えると、心境の変化もあったんだろう。
こうして見ると2月という時期に発表したのも、単純にスプラ2に引っかけたのと同時に、3月という卒業シーズンや新しい事をはじめようとする人間が増える時期に向けたエールに思えてくる。どれほど頑張っても突出した才能が自分を軽々と追い越していく経験があると刺さりそうだな。
このDLC自体も、上級者ではなく初心者~中級者向けなのだろう。
自分もゲームが好きでやっているのに上級者に勝てずに燻ってしまう奴等に向けたメッセージにも見える。……とはいえ、上級者向けにクリア後に30Fの制限を撤廃してどこまで登れるかの挑戦みたいなのがあっても良かったのでは、と思うが。
❄️ウィル:
サイド・オーダーはハチというある種の部外者がいなければ攻略できなかったと思う。ヒメだけでもダメだったし、もしイイダを助け出せたとしてもこの三人ではきっと攻略できなかったんじゃないか。
それにしても、現れたのがヒメドローンを連れたハチだったのは運命的だな。
💙シラユキ:
実はオーダコ君はミズタさんの本心だったと思うと、
話もちょっと変わってきそうね。
🐦カナリア:
よくわかんねーけど、
コダコが嬉しそうだったのはわかるぞ!
≫感想
と、いうわけで感想に入ろう。
俺個人としては楽しめた。そもそも、俺の腕前が……というのはさておき、一時期サーモンランばかりやっていたこともあるからな。終わってからもカラーチップを統一して疑似クマブキを作り上げたり、それ以上の何かを作ったり、こういうことをグダグダと考えたり……。
ただ、俺がちょうどいいと感じるくらいの難易度なので、腕前によってはあっさり終わってしまうように感じてしまうかもしれない。途中でも言ったが、上級者向けになにかあっても良かったんじゃないかと思うぞ。上限の撤廃とか、どこまで上がれるか記録がとれるとか。
ボスももっといても良かった気がする。ただそこまでやるともう今回のDLCの範疇に収まらないような気がするな……。
まあこんなところにしておくか。
あんまりうだうだ考えていても、今後また変わる可能性もあるしな。
というわけで、今回はここまでにしておこう。
読んでくれてありがとう。
じゃ、また別のゲームで。