改札で「かざす」価値の変化を考えてみた
こんにちは!UXデザイナーの門屋町です。
この記事を読んでいただいているということは、あなたは電車の中にいるのかも!?という想像をしながら書いております。
ところでみなさんは、鉄道改札を目の前にしたら携帯/ICカードを「かざす」という行動を当たり前のようにしていませんか?
この「かざす」という行為は私たちの日常に溶け込んでいると思います。時には、「かざす」行為がスムーズにできず、目の前の人が改札前で立ち止まると、思わず「イラっ」とする瞬間があるのではないでしょうか。
今回は、「かざす」という行為のビジネス的な価値と、ユーザーの価値を考えつつ、改札で「かざす」価値がアップデートされる未来について考えてみます。
改札で「かざす」価値とは
ビジネスにとっての「かざす」価値とは
「かざす」ことで得られるビジネス価値は、人流データが集まることだと思います。例えば、SuicaやPasmoを購入する時に生年月日や性別を入力しますが、これにより企業は、「20代の女性が18時ごろに東京駅を降りた」という統計情報を得ることができます。結果、人の移動が多い駅にイベントを開催するといったマーケティング施策に使うことができています。
ユーザーにとっての「かざす」価値とは
一方で、ユーザーにとっての価値は、当たり前に改札を通れることかなと思います。「かざす」こと自体に直接価値を感じることはなく、「かざした」結果、改札を通ってその先の目的地に辿り着けたり、人によってはポイントが付与され、そのポイントで決済ができるようになったりするという副次的なメリットが享受できます。
そのため現時点では、「かざす」ことの価値は、ビジネス的には美味しいけども、ユーザーにとってはあまり価値がないように思えました。
クレジットカードをかざす体験の現状
そんな中、ここ数年はクレジットカードによる改札通過できるようになり、特に西日本で活発化しています。私もちょうど福岡旅行でクレジットカードで改札を通る機会があったので、どんな体験ができるか利用してみました。
福岡市地下鉄を活用し、福岡空港駅で改札を通る瞬間のストーリーはこちら。
この時に私が考えていることは、他の人に迷惑をかけてしまった申し訳なさはありつつも、目的に行くために改札を通るという視点しかなく、目的地にいかにスムーズに着くか、が私にとっての価値になっています。
これは、ICカードでも同様で、クレジットカードで「かざす」ことで大きな変化があるかというとあまりなさそうに感じました。
もちろん、訪日客には大きなメリット
クレジットカードとICカードの差異はあまりないように見えますが、訪日客にとってクレジットカードで改札を通過できることは大きなメリットです。これまで、切符かICカードを購入しないと改札を通れませんでした。しかし、元々保有しているクレジットカードを「かざす」だけでその手間がなくなるというマイナスから0となる当たり前の価値が高くなりました。
今が改札の「かざす」転換期
今時点では、(特に日本在住の方にとっては)クレジットカードで改札を通ることによる直接的な価値を感じることはできないほうが多いと想定しています。しかし、クレジットカードの武器は「購買データ」を握っていること、そして特定の鉄道事業者に依存せずオープンであることです。人流データと購買データがシームレスに繋がれば、パーソナライズされた移動体験を作りやすくなります。
特に、モバイルSuicaのようなソフトウェアの形で普及していけば、「かざす」瞬間に過去の移動履歴や購入履歴を元にお得情報や寄り道情報がポップアップし、改札通過後のパーソナライズされた移動体験を作れるようになると思うのです。
改札で「かざす」価値がアップデートされる未来
すでにその片鱗は訪れていて、ビジネスとしては、1つの企画券を運賃とセットにして改札を通る実証実験が2022年に近畿鉄道で行われています。ビジネスデータとしてはこれまで分断されていたデータが一緒になるので、パーソナライズされたイベントチケットを作ることも可能になるのです。
ユーザーにとって何がおいしいの?という視点で妄想してみると、調べることがズボラな私としては旅先の移動で「かざした」瞬間に
今ここでしか味わえないカフェや日本酒のお店を教えてもらえる
日本酒好きという傾向を元に、割引券配布される
鉄道利用合計が1日乗車券金額を超えそうな場合に、自動で1日乗車券に切り替えてもらう
旅先から地元の最寄り駅まで着いたときに改札を出ると次回使える旅行クーポンが配布される
といった、改札通過後に「ちょっと嬉しい」といった体験ができるようになるかもしれません。「こんな場所があったんだ、行ってみようかな」という新しい目的地を発見できる未来が迫っている気がします。
最後に
これまでビジネス価値がメインで、ユーザーにとっては単なる目的の通過点でしかなかった「かざす」行為が、新しい機会を「発見する」という価値にアップデートされる未来に思いを馳せ、今日もワクワクしながら改札を通っています。
Goodpatchでは世の中の様々な事業をデザインすることに取り組めます。
今回の記事のように新しい価値ある体験を生み出すことを考えていきたい!興味がある!という方はぜひ一度お気軽にお話ししてみませんか?
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