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前号では、MBAの入試について紹介しましたが、
本号では、MBAでは何が学べるのか、どんな大学院を選べば良いのかについて触れていきたいと思います。

MBAでは何が学べるのか

MBAでは何が学べるのかよく頂く質問です。私なりの回答をすれば、経営学に関連することは一通り浅く学べるということです。経営学といっても非常に大きな括りです。経営学には戦略論があったり、組織論があったりと多岐にわたります。
企業や組織を対象とし、効率よく管理運営することを研究する学問といえます。
例えば、人事労務の観点から、企業の持続的成長を実現するにはどのようにしたら良いか、あるいは、持続的に成長するための戦略を考える上で、自社のコアコンピタンスは何かなどの答えを求めるために学ぶ場所ともいえるかもしれません。
しかし、これらの事は書店やオンラインショップで山ほど本がでております。
ですから、これらの本を読めばある程度は理解ができると思います。
それであれば、わざわざ講義を受ける必要はないのかというと、そうでもありません。
例えば、私の母校ではどの講義もあるテーマについてグループディスカッションを行ったり、5〜6人のグループを作り、与えられたお題に対する提案書を作成したりします。教員からの一方通行の講義体制ではなく、グループ単位で討議することが多いのです。グループワークでは特に自分の意見を述べることが重要です。MBAは実務経験がある方が集う大学院でありますので、いろいろな業界の方がいます。グループメンバーがそれぞれ違う業界にいることで新しい考え方や自社では決して経験することのない出来事をメンバーから聞いたりすることで、新たな気づきや参考になるのです。
例えば、私が所属する製薬会社は、医薬品を販売して利益を生み出すメーカーですが、医師の処方箋が必要となる医療用医薬品は一部の薬価未収載品を除き、国が薬価収載を認めれば、国が価格(薬価)をつけます。原則、メーカーが値段をつけることはできません。また、医療用医薬品は製薬会社から医薬品卸売企業へ販売するので実際、製薬会社の営業であるMRは、医療機関との見積書の提示や売上金の回収ということは行いません。営業なのに見積書や回収業務がないというのは製薬会社独特の営業ですねと製薬業界を知らない同期からは驚かれました。

MBAで何を学ぶのかと問われれば、教員から経営学に関わる理論や方法論などの教えを受ける事は当然ですが、何より同じ時に入学した同期から学ぶこともとても多いのです。私自身、話しをしたことのない同期もいましたが、修了しても定期的に連絡を取り合う仲が続いています。同期にはスタートアップの代表や、旧東証一部の役員や管理職、公務員、士業の方など、業界・年齢はバラバラですが、会社の柵もないため、上下関係なく、お互い同等の立場で議論して友人となる経験ってMBAならではと思います。

どんな大学院を選べばいいのか?

この質問は本当によく聞かれます。名の通った有名な大学院がいいのか、それとも講義内容で選んだら良いのか、この教員から指導を受けて研究したいので、ここしか考えていないんですけど、本当にそれでいいのですかなど様々です。
前号でも書きましたが、私は単身赴任中ということもあり、交通の利便性という講義内容や教員で選んだわけではないので、参考になるかわかりませんがと前置きをしています。
まず、講義内容で選ぶというのはあまりしないほうが良いかと思います。在学中でさえ、履修したことのない講義はどんな講義内容なのかはシラバスでくらいしかわかりません。ましてや入学前であれば、公開されているシラバスくらいしか情報を得られないことが多いので、どんな講義内容なのかは実際聴講しないと判断できないかと思います。
また、MBAを開設している大学院では経営学に関わる中核の講義科目、例えば、経営戦略や経営組織、人的資源など講義名称は大学院によって異なるかもしれませんが、どこでも揃っているはずです。

次に名の通った有名な大学院がいいのかですが、何を持って有名なのかをはっきりさせる必要があると思います。よく聞かれるのが、学部の偏差値がトップクラスの有名大学のMBAがいいのかということです。確かにこれらの群のMBAは倍率が高いです。ですので、入学試験はある程度準備をしないと合格できないということになります。私の所属した研究室の後輩に東京大学を卒業された方がいます。その後輩が面白い話をしてくれました。ちなみに私たちの母校は私立で全国区の知名度はありますが、学部の偏差値でいえばトップクラスではありません。
会社の同僚から「せっかく東大出ているのに、なんで大学院で学歴下げるの?」と言われたそうです。
私は「???」の反応でしたし、後輩もそれを聞いた時、「???」だったようです。
そもそも、大学院の入試には偏差値というものが存在しませんし、学部の偏差値で学歴を判断しているのでしょうが、MBAは大学院なので修了すれば「修士」、学部卒の方は「学士」ですから、学歴が下がるという事はあり得ないのです。
そもそも、日本では大学進学率は6割弱であるのに対し、大学院修士課程への進学率は1割強しかありません。そこから博士課程への進学はおそらく1割を切るといわれています。しかも、修士課程への進学率は横ばいであるのに対し、博士課程への進学率は下がっているという状況です。
ですから、日本ではおおよそ、「大学はどこ出たの?」が最終学歴の話しをしており、「大学院も出ているんだけど、大学院の方を言えばいい?」とは中々ならないですね。
話しが少し脱線しましたが、MBAといえど、大学院ですから研究軽視はあり得ません。自分が取り組みたいテーマを研究できる大学院が良いわけですが、中々シラバスではわからないと思うので、ぜひオープンキャンパスなどで開催される模擬講義を受講してみてください。研究は長丁場になりますから、せっかく入学したのに途中で挫折してしまうとそこまでかけた時間と学費がもったいないです。大学名よりも、2年間じっくり研究できそうだなとか、雰囲気が良いなど自分が入りたいと思う大学院がいいと思います。結果的にそれが有名な大学院であれば、そこを目指して、頑張るのみです。

最後に師事を受けたい教員がいる場合ですが、これはぜひそこに行って研究をした方が良いです。私の同期にも、会社の研修で母校の教員が講師をされて、そこで感銘を受けて、入学を決意したという方が多くいました。この場合、所属する研究室はほぼ決まっていると思いますので、早い段階からお目当て教員と研究の打ち合わせができます。
しかし、 接点がない方もいます。私もそうでした。興味をひく大学院があったら先ほどと同様に、オープンキャンパスで雰囲気を確かめることが一番かと思います。

次号では、MBAを取って何が変わったか、仕事に役立ったかを書いていきます。

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