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私とMBAと博士課程
博士課程進学
MBAから博士課程へ進学する方向けに備忘録を兼ねて書いていきたいと思いまMBAは専門職学位課程と修士課程(博士前期課程)があります。どちらを修了されていても進学することは可能ですが、実際進学してみて、最低限、下記条件を満たす必要があるかと思いました。
修士論文を含めた論文の業績がある
師事を仰ぎたい教員の受け入れが取れる
3年の在学期間で研究テーマをどこまで明らかにしたいか
修士論文を含めた論文の業績がある
修士課程(博士前期課程)に所属するMBAの学生はほとんど、修士論文の提出を学位取得条件としている大学院が多いため、あまり気にする必要はないと思います。しかし、専門職学位課程の場合は、修士論文の提出がない大学院もあります。博士課程の入学願書には必ず、論文の業績を記載する箇所があります。これは、修士論文でも問題ありませんが、修士論文がない場合、他の論文業績を記載する必要があります。他の論文業績は具体的に何を指すかということですが、一番実績として評価されるのが「査読論文」です。博士学位を取得するには必ずこの「査読論文」が必要となります。査読論文ではなくても、大学の「紀要」でも査読があることが多いので、入学願書に記載する実績としては問題ないかと思います。
専門職学位課程出身のMBA学生は論文を書くことに慣れていないと言われる教員が多くいます。具体的にいえば、レポートと論文の違いがわかっていないということです。自分は論文だと思って書いても、論文としてのお作法がなっていないので、レポートですと言われてしまうことがよくあります。従って、修士論文がない場合、博士課程の入学はかなり難しい状況に置かれると思っておいて間違い無いです。もし、MBAを取得して博士課程までの進学を考えれおられるのであれば、修士論文のあるMBAへ進学した方が良いということになります。
しかし、論文実績がなくても、何とかなる場合があります。それは、博士課程の学生として、指導教員が受け入れると言った場合ですが、100%では当然ありませんので、注意が必要です。
師事を仰ぎたい教員の受け入れが取れる
専門職学位課程の場合は、博士課程を設置することができないため、同じ大学にある他研究科の博士課程に進学するか、他大学の博士課程への進学を考えなければなりません。大学院によっては、修士課程(博士前期課程)設置のみで、博士課程が設置されていない場合も同様となります。一方、修士課程(博士前期課程)と博士課程(博士後期課程)が設置され、かつMBAの時の指導教員が博士課程の教室を主宰している場合は、そのまま上がることがほとんどだと思います。一貫して指導をしてもらうことが可能であり、研究テーマもよくご存知だからです。
専門職学位課程や修士課程(博士前期課程)設置のみのMBA学生は、基本的に指導教員から博士課程を指導している教員へ紹介してもらうことがほとんどです。自分の研究テーマで受け入れてもらうことが可能かどうか、判断してもらう必要があります。博士課程は、指導教員の主宰する教室に所属し、指導教員と二人三脚で研究を進めることが鉄則だからです。
入学願書を出す条件として、必ず指導を受けたい教員とコンタクトを取ることと記載している大学もあります。しかし、コンタクト必須と書いていない大学もありますが、学振採用者でも無い限り、願書を出しても高確率で落ちてしまいます。
博士課程の指導は、MBAの時よりも指導教員との距離が近く、師匠と弟子という関係ですので、師匠への入門が許可されていないと進学はできないと思った方が確実です。
3年の在学期間で研究テーマをどこまで明らかにしたいか
MBA出身の学生の専門は経営学ですので、博士課程においても経営学に関連する研究科に進学される方が多いかと思います。社会科学分野の博士課程は3年で修了が標準です。しかし、博士課程の場合、所定の単位を修めて、博士論文を提出すれば学位が取れるのかと言ったら取ることはできません。ほぼ全ての大学の博士課程では、学位を請求するために、所定の単位を修め、博士論文を提出することは当然ですが、研究業績として執筆した論文が査読を受けていることや国際学会で英語で口頭発表することを学位取得条件として挙げています。具体的には、筆頭著者で最低2本以上の査読論文の業績、国際学会で英語による1回以上の発表をしていることなどです。
博士課程に入学するということは、研究テーマがしっかりあり、しかも新規性のあるテーマであることが必須です。そして、3年の間に査読論文を数本通し、学会発表もこなさなくてはなりません。
文部科学省のデータによれば、文系の博士課程の学生が3年で修了する割合は、およそ2割強とのことで、8割弱の方が3年以上かかって学位を取得するのが現実のようです。
ですから、新規性はありつつも研究が3年という期間でどこまで明らかにするかということを重要視されます。あまりにも壮大な研究で、とても3年では結果が出ないといった場合には、注意が必要です。そもそも査読論文は新しい学術的発見を公表するものであり、新規性や独創性など著者と同じ研究分野の研究者が読んで妥当であれば、論文が掲載されることになりますが、この査読論文を通すのに時間がかかります。
査読論文を執筆にするのには、研究が進んで一定の結果が出ていないといけませんし、結果が出ているのであれば、何をどこまで明らかにするかということもわかっているはずです。
次号では働きながらの博士課程生活について触れたいと思います。