私とMBAと院試
MBAへの進学理由
MBAに進学される理由は、人それぞれあると思います。
現在のポジションでマーケティングの勉強をしたい、アカウンティングについてもっと専門的に学びたいなど、進学理由はそれぞれあります。
私の場合、MBAの進学理由は、ある医師との出会いでした。
ある疾患で初診でみる場合、患者さんが多く、数ヶ月単位で待たせていることに歯痒さを感じておられており、待機をなくすことはできないが、待機期間を短縮させることで、患者さんやご家族を長期間待たせずに診察したい。でも、自分のできることには限界があるといった内容でした。
もし、これが解決できるのであれば、社会に貢献できるのかなと思ったのが、進学を思い立った出来事でした。
大学院探し
当時、私は家族と離れて、単身赴任しており、毎週金曜日の夜に家族がいる自宅へ戻り、日曜日の夜に単身赴任先に戻るという生活を数年間送っていました。私の赴任先にはMBAがある大学院がなく、もし学ぶなら家族がいる自宅近辺でした。
在学中に、家族の住んでいるところへ異動となり、単身赴任は終わりましたので、M2の時は自宅から通うことができました。実際入試の時には面接官から通えますか?と質問されたくらいです。なにせ、新幹線ではないと移動できないわけですから。そんな通うことができないかもしれない私に合格通知を送ってきた母校には本当に感謝しております。
MBAの場合、オンラインや通学を組み合わせたスタイルで受講できる大学院もありますが、私は、通学型の大学院への進学を希望していました。これが、後の博士課程進学につながります。これについては、別号で触れたいと思います。
勤務しながら通学する社会人学生が多いため、ほとんどの大学院では夜間に講義を開設しているところが多いです。しかし、自宅に戻るには新幹線に乗らなければならず、平日の夜に通うことは到底無理でした。土曜日Maxで講義を入れたり、夏季集中講義を履修すれば、標準の2年で修了は可能であったため、自宅近辺の大学院の受験を行いました。
本来なら、もっと詳しく調べるべきだったと反省しています。言うなれば、新幹線の駅や自宅の最寄駅から近いところが志望校でした。受験は母校のみでしたが、結果論としては、選択は間違っていないかったと思っています。
こんな私にもMBAの進学を考えているので、話しを聞かせてくださいと相談を受けることが多々あります。その際の質問の内容はほとんどが下記の質問です。
MBAへの進学を考えていますが、どんな受験対策をしたら良いですか?
MBAで何が学べますか?
〇〇を学びたいのですが、どこの大学院がいいですか?
MBAを取って何が変わりましたか?
MBAを取れば仕事に役立ちますか?
これらの質問に関する私なりの考えを書きたいと思います。全部書くととても長くなるので、本号は、1の受験対策について触れたいと思います。
MBAの受験対策
MBAに進学するにあたり、ほとんどの方は実務経験があると思いますが、MBAの受験基準として、原則学部卒以上の学歴を有する方、実務経験3年以上の社会人など、大学によって基準はまちまちだと思いますが、MBAは現在進行形で何らかの実務を行っている方に門戸を開いています。しかし、MBAの院生になるには必ず入試があります。入試対策として、予備校に入学して対策をされる方もいらっしゃいます。対策の中でも時間をかけて取り組むのが、必ず要求される「研究計画書」です。
私は、予備校には行かなかったので、完全独学で研究計画書を書いたのですが、入試では面接を課す大学がほとんどであり、この研究計画書に基づいて面接が行われます。
研究計画書はその名のとおり、入学したらどんな研究をするのかを大学に知ってもらうために作成します。
面接では、今まで歩んできたキャリアを踏まえ、研究計画書に基づいて面接官から質問を受けます。その際、気をつけなければならないのが下記の3点です。
その研究は、社会や人がより良くなるためなのか
その研究は、新規性のあるテーマか
その研究は、在学中に一定の結果が出るのか
まず、1点目について私の考えを示します。MBAの修了条件として、修士論文が不要の大学院もあれば、私の母校のように、修士論文を作成するために指導を受けたい教員の研究室に入り、自分の研究したいテーマを探究していく大学院もあります。通学型の大学院は後者の方が多いと思います。修士論文があるという前提で書きますが、そもそもMBAは経営学を学ぶ大学院です。経営学は社会科学へ分類される代表的な学問ですから、人間社会の様々な面を科学的に探究する分野となります。ですから、その研究が「誰」の「何」を解決するのかという視点が重要になります。「誰」は会社なのか、顧客なのか、あるいは特定の技能を有する方なのか、それこそ無限にあります。また、「何」は収益に関する問題なのか、時間に関することなのか、これも無限にあるわけです。しかし、冒頭にも書きましたとおり、MBAは実務経験がある方が対象なので、自分が携わっている実務に関することが多いのだと思います。
2点目については、在学中も指導教員から幾度となく指導を受けます。MBAといえど、大学院での研究となるため、研究テーマは新規性が求められます。ここでは新規性について細かく触れませんが、簡単にいえば、誰も検討したことがない手法や対象、既に行われている研究とは違った属性での検討などです。先人たちの研究結果があり、繰り返し行うことには、オリジナリティがなく研究テーマとして相応しいとはいえません。入試で用意する研究計画書では、書けるスペースも限られているので、ざっくりでこんなテーマで研究したいと書き、なぜなら、同様の研究(先行研究)があり、解決すべき研究課題として先人たちが挙げている点や自身を取り巻く環境を示し、違った視点や理論で研究を行いたいなどオリジナリティを出すことが必要となります。院生生活を送るようになれば、必ず本格的に先行研究のリサーチを行います。
3点目は、在学中に結果が出せるのかです。修士課程の標準は2年で修了ですが、1年制のコースもあります。1年制の場合は、入学しすぐに研究室に所属しますが、2年制の場合は、M2で所属することが多いのではないかと思います。結果、どちらにしても留年せずストレートで修了するには1年弱で研究を行い、結果を導き出さなくてはなりません。結果がないと、結果に対する考察ができませんし、新規性を主張することもできません。相談に来られる方で研究テーマがはっきりしており、確かにそれは価値がある研究だけど、1年で結果出るの?というテーマも少なくありません。大風呂敷を広げたはいいが、畳めないという状況です。
決めたテーマはそれに沿って研究を続けていくので、研究テーマの設定は本当に重要です。もちろん、研究計画書に記載した研究テーマが入学後変わることは珍しいことではありませんし、ほとんどの方が変わります。私は、研究テーマの中核部分は変わっていないのですが、研究手法や対象は変わりました。
MBAに入学を希望される方は実務経験があり、その経験からこれはなぜ起こったのだろう、どうしてこれを防げなかったのだろう、ここで研究を行えばその結果が社会に還元できるのではないかと考えている方は面接でも問題ないと思います。
次号では「MBAでは何が学べますか」、「〇〇を学びたいのですが、どこの大学院がいいですか?」について触れたいと思います。