見出し画像

EUはドイツ関税同盟の再現か-ドイツ史10講を読んで考えたこと。

この本について

ドイツ史10講と題し、ローマ帝国時代から現代までのドイツの歴史を10個に章立てし概略的に紹介しており、これを読めば現在のドイツの成り立ちが大まかに理解できる。

そして、この本の初版が2003年だが、この手の本によくあるように、最終章では今後のドイツの行末を予想している。初版が2003年なので、当時未来のドイツをどのように見通していたか振り返ってみるのも面白い。

ドイツ関税同盟とEU

この本の中で私が特に注目している部分が、プロイセンによってドイツが統一される過程です。
この中で、プロイセンは周辺諸侯との間で完全同盟を結びます。これは、地理的に分散した領土を持つプロイセンが、経済的に統一するための政策でした。

もし間に入った国がプロイセンの関税・通商政策に合流し、通商政策上プロイセンと一体化すれば、両国は政治的には他国でも、経済的は一つの国と同じになる。

P134.第6講 ドイツ統一への道

この政策は1854年にハノーファーが加盟したことによって満たされ、さらに通商同盟は、ドイツ統一の方向性で対立するオーストリアとの国力差を広げる効果をもたらします。

ハノーファーを加えた関税同盟の総輸出額は、1853年から56年の間に3億5700万ターラーから4億6600万ターラーに増大するのだが、オーストリアのそれは逆に1億8400万から1億7300万に低下してしまう。力の差は全く明らかである。

その後、プロイセンはいわば関税同盟を拡大する形でドイツ統一に向かいます。
私たちが「ドイツ」と言っているものは、正確にはプロイセンが拡大した結果の「小ドイツ」の後継としてのドイツなのです。

この「政治的には独立の複数の国が関税的政策では統一的経済領域を形づくる」さらに「それを発展させ政治的にも統一的領域を形成する」というのは、EUの歴史と類似点があるように思えます。

もちろん、EUの成立当初からドイツが中心的な役割を果たしていたわけではありませんが(フランスのシューマン宣言など)現在のEUにおいてその利益を最も享受しているのがドイツであることを考えると、ドイツ(プロイセン)は過去も現在もグローバリズムの申し子と言えるのかもしれません。


いいなと思ったら応援しよう!