【ゼルダの伝説 知恵のかりもの】
2024年9月プレイ開始
総プレイ時間:約30時間
【ストーリー】
★★★★★ 5
広大なハイラルの地には「神隠し」という謎の裂け目が発生しており、ハイラル中のモノや人を飲み込んでいた。
魔王・ガノンに捕まっていたゼルダ姫を助けるため、リンクはガノンと激戦を繰り広げるが、突如出現した裂け目に飲み込まれてしまった。
単身残されたゼルダ姫はリンクや民を救出するために、トリィという不思議な妖精と共にハイラルを巡る冒険に旅立つことになる。
本作のストーリーは歴代の『ゼルダ』を踏襲しつつ、レトロな世界観で丁寧に描かれており、壮大さこそ無いものの、いつもの『ゼルダ』感を大いに楽しむことが出来る。
特に『神々のトライフォース』といった2Dの『ゼルダ』を求めていたプレイヤーにとって、本作はまさに打ってつけの作品であるはずだ。
【ゲームシステム】
★★★★★+ 5+
まず特筆すべきなのは、本作の主人公が剣士・リンクではなく、これまでもっぱら救助対象であったはずのゼルダ姫であることだ。
ゼルダ姫は剣や盾を扱うことは出来ず、代わりにトリィから授かった杖によって「カリモノ」と呼ばれるモノを生み出せる。
「カリモノ」は、ツボやベッドといった様々なオブジェクトに加えて、倒した敵ですら自由に自身の目の前に出現させられるシステムであり、プレイヤーはこれらを如何にして扱うかを常に考えなければならない。
生み出せるカリモノにはそれぞれコストがあるため好き放題することはできず、絶妙なゲームバランスが成立している。
そして、発売当日から2D版『ブレスオブザワイルド』と呼ばれる通り、本作の自由度は極めて高い。
前述したカリモノによって、戦闘は当然のこと、謎解きですら完全解答は基本的に存在せず、プレイヤーによって攻略方法は様々だ。
問題が立ちふさがった際に、プレイヤーは文字通り”知恵”を試されるという訳である。
また、主人公がリンクから変更されたからといって、操作感に不便さを感じない点も素晴らしい。
従来のシリーズのように一通りのアクションは引き継がれており、リンクとの差別化はこれ以上ないほどに図れている。
と言うよりも、ゼルダ姫の操作にも慣れてきたプレイヤーは、皆一様にこう思うのではないだろうか。
あれ? この姫様、リンクよりも強くね? と。
細かなUIの作り込みの粗さや、ミニゲームやショップのリトライ性の悪さなど、全く問題点が無い訳ではないが、初のスピンオフ作品でこれほどのクオリティを保ったゲームを世に送り出した任天堂には流石という言葉を送る他ない。
【キャラクター】
★★★★☆ 4
Switch版『夢をみる島』と同じグラフィックで描かれるキャラクターたちは敵味方問わず愛らしい見た目をしている。
また、ゾーラ族やゴロン族、デクナッツといった歴代のシリーズを通してお馴染みのキャラクターたちも登場し、本作の世界観をより一層引き立てている。
この独特なグラフィックで表現されたゼルダ姫の表情にも作り込みの高さを感じさせる。
しかし、新規のキャラクターの開拓には至っておらず、若干の物足りなさを感じたのも正直な感想だ。
【音楽】
★★★★★ 5
上述した『夢をみる島』と同じく、本作のBGMもオーケストラサウンドをふんだんに使用した贅沢な楽曲たちで彩られている。
公式から発表されたトレーラーで視聴できる「メインテーマ」に心を掴まれたプレイヤーであれば、本作で聴ける楽曲たちに文句の付けようはないはずである。
ゼルダ姫のテーマが3拍子の楽曲であることから、3拍子の楽曲が多い点も素晴らしいファンサービスである。
また、多くの楽曲からスーパーファミコンやニンテンドー64の作品たちの記憶を呼び起こされ、『ゼルダ』ファンであればノスタルジーな感傷につい浸ってしまう。
【総評】
94点
本作のことを、主人公がゼルダ姫に変わった単なるスピンオフだと思っているプレイヤーは未だに多いだろう。
それは違うと僕は断言する。
本作は間違いなく『ゼルダの伝説』の新作であり、斬新なアイデアと途轍もない作り込みによって生まれたナンバリングシリーズだと思っていい。
『ブレスオブザワイルド』や『ティアーズオブザキングダム』では3Dゼルダのアタリマエを壊したとのことだが、まさか2Dのゼルダのアタリマエすら破壊するとは、一体だれが予測できただろうか。
本作の発売によって、僕は出勤する二時間前に起床し、本作を遊んでから出社するというルーティンを組むことを余儀なくされた。
それぐらい、本作の面白さは突き抜けており、次の『ゼルダ』は一体何を破壊するのか、今からすでに期待を抱いている。