毎月短歌連作部門 斎藤君選6

こんにちは。前世は江戸の豆腐売り、斎藤君でございます。今月も毎月短歌連作部門の選をさせていただきました。今回の一席~三席の賞名はレオス・カラックスの作品からとりました。早速発表したいと思います。ででん。

一席 ボーイ・ミーツ・ガール賞
「推定微罪」宇祖田都子
主体はミッション系の女学生でしょうか。全ての歌のクオリティが高く、肝心な部分を詩的なフィルターで包んだ美しい連作であると思いました。プラカードや留置場などストーリーの想像をぐっと膨らませる歌が盛り込まれており、読んでいてとても楽しかったです。

二席 汚れた血賞
「花語りのこどもたち」 武井窓花
一首目の持つ役割がしっかりと果たされていて、これから始まる物語への期待が高まりました。全体としても完成度が高く、読み終わった後にやるせないような切ないような気持ちが強く残りました。最後の一首もバッチリキマッていると思います。

三席 ポンヌフの恋人賞
「晴れになれ」 ぐりこ
見立てや上句・下句の取り合わせの着眼点が素晴らしいです。一首一首に必ず「おもしろい」と思わせる部分が盛り込まれていて、連作全体を読み通してもだれることなくそれぞれの歌が立っていると思いました。

続いて私が勝手にもうけた一首部門の発表です。ででん。

一首部門

おこげ食べないなら俺にちょうだい賞
りんか 「放浪」より

石窯にこびりついてるおこげにはなりたくなくて空を飛びたい

プッチンしなくてもプリンはプリン賞
まちのあき 「やわらかなもの」より

頬杖をつく横顔をかたどってプリンをつくるみたいな午後だ

フェリーアングルとりま賞
梅雨すみれ 「約束」より

腰までの川は穏やか岸までを泳ぎ切れたら朝がはじまる

象に踏ませま賞
早瀬 「ものとも」より

世界とか自分とか大変らしい手首の上に筆箱が立つ

お金くれれば食べま賞
白鳥 「パラレルパークパライソ」より

より丸く硬く作った泥団子その最期だけ憶えていない

黄レンジャーはカレーで賞
汐留ライス 「スターソルジャー」より

我々はスターソルジャー人類は電波で攻撃されてシュビドゥバ

松崎しげるになりま賞
ZENMI 「渋谷行き弱冷車」より

サンダルを後悔している真夏日の駅のホームで未来が過ぎる

起きたらプロテイン飲みま賞
短歌パンダ 「都会では」より

夢をみる間に少しやせたかいあらゆる川に浮くように 街

あんかけのとろとろで飯二杯いけるで賞
菜々瀬ふく 「或る映画」より

とろとろと落ちゆくお湯のとろとろを聴き分けたくてまぶたを下ろす

奇遇!俺もアメスピで賞
微円 「4TB」より

衰えた手にアメリカンスピリット父とは何か問い続けると

花言葉って誰が決めてんで賞
みじゅ 「隙間に風」より

励ましてくれているのね紫陽花の花言葉には邪魔をしないで

紫陽花って色とりどりの脳っぽいで賞
古井 朔 「記憶の海」より

紫陽花の無限の前にうでをふり辿り着けない記憶の余韻

昭和のすりガラス作りま賞
睡密堂 「麦茶を作れ」より

すりガラス越しの世界が本当であればいいのに輪郭が邪魔

さりとて工藤賞
せんぱい 「みんなおかえり」より

とてとてと連なるだけの足音だ がんばったとて泣いてみたとて

以上です。今月もありがとうございました。とても暑いので私はこれからスーパーにチョコミントアイスを一ヶ月分まとめ買いに行きたいと思います。まあ食べるのなんて三日なんですが。それではまた。


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