毎月短歌連作部門 斎藤君選 4

こんにちは。誠に僭越ながら今月も毎月短歌連作部門の選をさせていただきました。もうなんというか私より皆さんの方が全然連作うまいっすよ。ほんと。こうやって皆さんが牙を研ぎまくっているのに何で今更私はベルセルクを一巻から読み直してるんですか?ねえ?短歌やれよお前よぉ。いいんですジュドーがかっこいいから。俺もあんな風に死にてぇなぁ・・・。はい、では発表です。ででん。

巨人賞(一席)

「友だちのきみへ」 まちのあき
崇敬と言えばいいのでしょうか。友人への思いを敬虔な筆致で詠みあげており、完成度の高さに舌を巻きました。詩情という面でも申し分ないのではないかと思います。一首を観賞し終えると、次の歌への興味がぐんぐん湧いてきます。上句と下句の程良い距離感がとても好きです。

大鵬賞(二席)

「サブミッション」 ぐりこ
これはもう私が採らねば誰が採るといった内容の連作でした。え?プロレスがわからない?お前はもうあれだ、帰っていい。帰って新日本プロレスの動画を観なさい。プロレスは他の格闘技と違い、対戦相手の協力が必要不可欠な身体芸術です。対戦とはいえ、相手と阿吽の呼吸で試合を作り上げ、観客を感動の地平へと押し上げていくのです。これは敷衍して言えば大切な人との関係や暮らしにも言える事なのではないでしょうか。プロレスの連作とはいえ、しっかりそこに人間関係を表現しているのがとても素晴らしいと思いました。

卵焼き賞(三席)

「歌が生まれる」 ZENMI
この連作のテーマが一体何なのか、五首では測りかねる部分がありましたが、それでも気になって頭から離れない一編でした。短歌が言葉となって世界に出る前の胎動を詠んだものなのでしょうか。あるいは短歌という詩形の神様への祈りでしょうか。ぼんやりとした、それでいて暖かい空間に放り出されたような安心感と不安感があり、唯一無二の味わいを醸しています。


続いて私が勝手にもうけた一首表彰です。ででん。

「ササニシキおかずにコシヒカリ食えるで賞」
白雨冬子  「朝ごはん」より

立ち昇る湯気の向こうに流れない涙のようにごはんが光る

「中華クラゲ考えたやつ天才で賞」
白川侑  「微熱」より

深海でゆれるくらげは昔から青い頭痛に悩んで 火花

「今卓球でペンホルダー使ってる人いないで賞」
くらたか湖春  「白い空」より

ペン先を落としてみればそこからが夜になりゆくブルーブラック

「駒込ピペットってなんで賞」
叭居  「エタニティ」より

永遠を望むとはこういうことで放散虫の骨はガラス製

「さぁ、血糖値の心配しま賞」
武井窓花  「やさしい侍」より

心配は呪いにもなり道沿いのゆるく結ばれるモッコウバラ

「昼ドラといえば愛の嵐で賞」
宮緒かよ  「春、過ぎて」より 

抱きしめてもらう理由になりますか桜を散らす春の嵐は

「戦隊の元祖は歌舞伎で賞」
畳川鷺々  「ことばはともだち」より

二番手で燻っている春の宵あらゆる語句にブルーと添えて

「いい枕は死ぬほど高いで賞」
古井朔  「アンモナイトの記憶/タイムラプス」より

かなしみはひとよふたよとかぞえるのやがてやさしくねむりについて

「これ俺で賞」
汐留ライス  「ニトリで踊るな」より

テーブルの上に花瓶を置く暮らし造花を差して倒れる暮らし

「小児の誤嚥に注意しま賞」
水也  「誰そ彼の月」より

小舟にはこんぺいとうとあめだまをゆくべき場所も知らないままで

「今回一番好きな歌で賞」
短歌パンダ  「未来の雨」より

できたての非行少女とすれ違う濡れた路面に鋭角の月

以上です。今月も素晴らしい連作をありがとうございました。来月もよろしくお願いいたします。ではでは。

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