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【制作スタッフレポート】わたしの一日を紹介します!

みなさんこんにちは、竹中と申します。
総合芸術と言われ、音楽、演技、美術、照明、衣装など様々な要素からなるオペラ。その中に「制作」というお仕事があるのをご存知でしょうか?

2022年度全国共同制作オペラ 歌劇『道化師』歌劇『田舎騎士道(カヴァレリア・ルスティカーナ)』では、200人以上の出演者・スタッフが公演のために日々準備をしています。そしてその200人超をまとめ、円滑に本番を迎えられるようにするのが「制作」部門なのです。

この記事では、駆け出し制作スタッフであるわたし竹中が、ご来場のお客様の目には決して触れることのない真の裏方(ウラカタ)、「制作」の一日をご紹介します!

10:30 出勤

夜型人間なので出勤時間はこれくらいが嬉しい。コーヒー片手にのんびり出勤です。
今日は13時から歌劇『田舎騎士道(カヴァレリア・ルスティカーナ)』の立ち稽古(※1)があるので、メールチェックを終えたらさっそく稽古場の事前準備へ向かいます。

※1 立ち稽古とは、出演者が動作・表情や立ち位置の確認を行う演技稽古のことです。

今日はコーラスの方々が参加するので、ぱっと見でお名前とパートが分かるよう、全員分のゼッケンを用意しました。

控室に予備の楽譜やアルコール消毒セット、検温表などを準備したら事前準備は完了!
しっかりお昼休憩を取り、午後の稽古に備えて英気を養います。

東京芸術劇場の近くには美味しいお店がいっぱいあってランチの場所には困らないけど、結局コンビニに行っちゃうんですよね…。
劇場の楽屋口の目の前にあるセブンイレブンは店員さんのシフトを覚えるくらいにはよくお世話になっております。

13:00 稽古開始

続々と稽古場に出演者の皆さんが集まってきました。
全員が稽古場に揃ったところで、まずは制作スタッフからみなさんへ新年のご挨拶。次に、現場にいらっしゃる方々のご紹介を行います。

オペラには演出家、演出助手、副指揮者、コレペティ(※2)、振付、振付助手など、本当にたくさんのアーティストやスタッフが関わっています。制作はその日現場にいる方をすべて把握し、稽古場へのアテンドなども行っています。

※2 コレペティとは、コレペティトゥア(独:Korrepetitor、仏:corépétiteur)の略で、歌手に音楽稽古をつけたり、稽古場でピアノ伴奏を行ったりする職業のこと。オペラの本番はオーケストラが伴奏をしますが、稽古中はコレペティがピアノで伴奏を行います。コレペティの方々はピアノだけでなく言語も非常に堪能で、稽古場では指揮者とイタリア語で会話することも。

続いて、演出家の上田久美子さんによる演出プランの説明が始まりました。舞台模型を見ながら、今回の読み替え演出についての解説が行われます。

舞台模型は常に稽古場の真ん中に鎮座しています。

さて、皆さんは歌劇『田舎騎士道(カヴァレリア・ルスティカーナ)』というオペラをご存知でしょうか。
このオペラは貧困が深刻化していた19世紀の南イタリアが舞台の作品で、村娘サントゥッツァが夫トリッドゥの不倫(お相手は元カノ、しかも既婚者!)を知って半狂乱になり、夫や姑を問い詰めたり縋ったりと、とにかく泥臭いお話です。
着飾った貴族の皆さんがシャンパン万歳!と叫びながらパーティーをしたりしませんし、魔法の笛も出てこないし、病弱な美女と学生の儚い大恋愛もありません。
『田舎騎士道(カヴァレリア・ルスティカーナ)』は、貧困層の世界が舞台のめちゃくちゃ現実的でドロドロなダブル不倫物語なんです。

しかも今回の上田版『田舎騎士道(カヴァレリア・ルスティカーナ)』と『道化師』は、舞台が19世紀南イタリアから現代日本の関西に移されています。両演目とも、舞台にはなんと通常の字幕のほかに関西弁の字幕が投影されるんですよ!?斬新!!!

というわけで、出演者の皆さんには上田さんが作成された関西弁台本と、イタリア語の歌詞の上に関西弁が書き込まれた楽譜をお配りしています。

関西弁で書かれた台本。字幕の内容はぜひ劇場でお確かめください!

演出プランを頭に入れたら、いよいよ実際に動きを付けていきます。振付の前田清実さんと振付助手の方々によって細かく”立ち”がつけられていきます。
コーラスの方々も率先して演技プランを提案してくださるので、非常に活気に満ちた稽古場に。

その間わたしたち制作スタッフはというと、稽古場の隅に常駐し、出演者が稽古内容を復習できるよう動画を撮影したり、出演者の出欠登録や雑誌取材の調整など様々な業務をこなしています。

  19:00 稽古終了

稽古は順調に進み、定刻で稽古が終了しました。終了後は演出家や演出助手の方々と今日の稽古の振り返りと明日の稽古の予定を確認します。
今日使った稽古道具を消毒し稽古場の清掃が完了したら、稽古場の鍵を閉めて撤収です。皆さんお疲れさまでした~!

さて、事務所に戻ったら、先ほど調整した予定を関係者全員にデイリーメールとして送信します。
オペラの稽古は刻々と状況が変化するので、事前に予定していた内容から変更になることも多いのです。このため、制作スタッフが毎日、明日の予定をメールでご連絡します。このように、関係者の皆さんが快適に稽古を進められるよう準備するのが制作のお仕事なのです。

  20:00 業務終了

メールチェックをし、明日の稽古の下準備が完了したら業務終了です。
他の制作スタッフはこれ以外にも、来日する歌手の方々との連絡や来年度のオペラの打ち合わせ準備など様々な業務があるのですがそれはまた後日……。
今日のところはこれにて退勤です!

  いかがでしたか?

「結局、制作スタッフって何者なの?」と、さらに謎が深まったかもしれませんね……。
制作スタッフとは一言でいえば、「オペラ公演を成立させるために必要なあらゆる事務をこなすなんでも屋さん」なのかもしれません。

それでは、明日の稽古も頑張ります!

次回は1月20日(金)に投稿予定です。


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