見出し画像

2024年8月27日(火)《GB》

《29日と30日は小学校も中学校も一斉臨時休校です。どうなるかわかりませんが仕事行けるかな》
【AXIS:富田 剛・本田 仁】
「やれやれ俺の知ってる富田さんはそんな軟弱な人じゃなかった」
「いや、軟弱とかじゃなくて、お客さんが危ないんだって」
 軽く頭を振りながら言葉を漏らした本田 仁に対して、富田 剛は不満気に返事を返した。ここはゲーム&喫茶『AXIS』ゲーセン部。時間は14時を少し回ったぐらいである。本田は午前中はいつものように魔術師鍛錬場で過ごし、基本的には1人で魔術研究を行っていた。だが、請われれば指導も行うスタンスなので、入れ替わり立ち替わりやってきた結構な数の後輩たちに、丁寧に指導を行う。そして12時少し前ぐらいで鍛錬を終えることにし、魔術師鍛錬場を後にしたのである。その後は『AXIS』喫茶部でランチを食し、その後でゲーセン部にやってきた。喫茶部の時点で気づいていたが、現在入り口に張り紙が貼ってあり、その内容は“台風接近のため、29日と30日は休業します”というものだ。その張り紙を見た本田の頭の中には若い頃の富田がイメージとして浮かび上がり、そのイメージの中では怪我をしようが病気になろうが雨が降ろうが台風が来ようがパチンコ屋へ向かっているのである。たかが台風で予定を変えるなど、本田の思い描く富田とはかけ離れ過ぎて落胆しているのだ。
「だって学校も休みだし、そもそも組織も休みでしょう?」
「それはそれ、これはこれじゃないですか」
 休む言い訳を口にする富田に対して、本田は厳し目に返事を返す。ただ、別に本気で文句を言っているわけでもないので、この話題はこれぐらいにすることにした。
「ところで本田くん最近痩せた?」
「何すか今頃気づいたっすか」
 何となく雰囲気に違和感を感じていた富田がその違和感の原因と思われることを口にし、それが正しいことを本田が回答する。もともと本田は特に太っていたわけではないが、ここ数年フードファイター並みに料理を食べており、イメージよりもかなり太って見えたのだ。だが今は昔のイメージに戻っている感じがする。
「何かあったん?」
 痩せた理由が何かあるのかと富田が質問する。すると本田は先ほどもらったお茶缶を口に運んだ後で説明を始めた。
「いや、この前健康診断の時に、医者から言われたんですよ。少し痩せた方が良いって。で、その時に“まあそう簡単には無理でしょけど5キロぐらい痩せましょう”って言われて少しイラッと来たから腹いせに20キロ痩せてやりました」
「おお、相変わらず本田くんすげーな」
 それが出来るのが当然みたいな表情を浮かべて話す内容を聞いて、富田は驚愕の言葉を漏らした。昔からやると決めたらとことんやる性格の本田だが、最近はそのようなこともあまりなかった。だが、今回の件で富田は昔を思い出しつつ改めて本田の凄さに感嘆したのであった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?