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1996年5月28日(火)《BN》

【煉瓦亭:富田 剛・立石 啓二】
「そういえば俺冒険者引退したよ」
「まじで、どしたの?」
 テーブルに座ってすぐ話を切り出した富田 剛の言葉を聞いて立石 啓二は疑問の声を上げた。ここは喫茶店『煉瓦亭』。たくさんの客が美味しいランチを食べにやって来ている。現在全国をぶらぶらと遊んで回っている立石が熊本に戻って来ているというので、一緒にランチを食べることにしたのである。そして言いそびれていた引退についての話を切り出したのだ。
「いや、引退する気はザビアロフザビアロフなかったんだけど、ある事情で忍者に転職したんだよね。そしたら忍者ってすごい能力あるんだろうけど、通常探索を行えないぐらい体にダメージがあるってわけ」
「ふーん。じゃあアムロあるかね」
 引退した理由について、富田が説明し、それを聞いた立石はそういう理由であればしゃーないと返事を返した。
「ところで富田は今週の日曜日はどうするの?ダービー。暇だったら一緒に小倉に行こうよ」
「お、いいねえ。お供しますよ」
 今週末の日本ダービーに向けて立石が提案した内容を富田は即答でOKする。特に週末は予定が無かったので、断る理由は何も無かったのだ。
「じゃあ土曜日の夜にこっち出発しようかね。車で迎えにくるわ」
「お願いします」
 こうして週末の予定が決定する。2人が小倉競馬に行く際は、大体夜に熊本を出発して、山道を抜けながら小倉に向かう。そして小倉競馬場の近くに車を停めて、そこで眠りながら朝を待つのがいつものパターンとなっているのだ。
「ところで立石くんは本命何にすると?」
「そうやね。皐月賞はチアズサイレンス本命やったけど、ダービーは厳しそうなのでロイヤルタッチかな」
 質問に対して立石がきちんと返事を返す。そして質問内容をそのまま聞き返した。
「俺は皐月賞で本命だったミナモトマリノスで。まあ勝つのはダンスっぽい気はするけどね」
 このように話したタイミングで、マスターが注文した料理を持って来たので、2人は一旦話を置いて料理を食べることにした。

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