農産物直売所オタクは、売り場のココを見ている
中小企業診断士のフクダです。
私は今、食に関連するコンサルティングのお仕事をしていますが、元々は料理好きな消費者として30年以上、全国の農産物直売所や道の駅、朝市などでお買い物しまくってきました。
今でも仕事やプライベートで地方を訪れると、必ずその地域の農産物直売所を訪れるようにしています。長年にわたり農産物直売所に通い続けるうちに、農産物直売所をざざっと15分も見れば、その地域の農業や食文化、地域活動の特徴が分かるようになってきました。今日はそのお話。
野菜・果物売り場:地域の農家のタイプが分かる
野菜売り場では、ちょっと変わった野菜や果物、面白い売り方をしている生産者がいるかどうかチェックします。
特に新規就農者が多い地域では、他のベテラン農家と差別化するため、ケールやビーツ、イタリア野菜、カラフル野菜などを出していることがあります。トロピカルフルーツや珍しい柑橘類、ハーブやスパイスを作っている生産者も増えましたね。
珍しい種類の野菜を少しずつ、ちょっと変わったラベルやPOPをつけて販売されていたら、小さい栽培面積で少量多品種の野菜を作っている農家が多い地域なのでしょう。または、飲食店や観光客が多い直売所で、珍しい野菜やカラフルな野菜のニーズが大きいのかもしれません。
私が関わっているトキタ種苗は、直売所で販売されているような、イタリア野菜やカラフル野菜のタネを多く取り扱っているので、見慣れた品種を見かけると嬉しくなります。
また、地域ならではの伝統野菜もチェックします。特に葉物野菜や根菜類は、地域ならではの伝統品種が見つかることが多いですね。さいたま市内の直売場では冬になると「くわい」や「岩槻ネギ」「山東菜」などが出回ります。
同じような野菜・果物を大量に陳列している場合は、大きな面積で同じ作物を作っている大きな産地なのでしょう。
夏から秋にかけて新潟の直売所を訪れると、黒埼茶豆や肴豆など、たくさんの品種の枝豆が売られていて驚きますし、秋に岡山の直売所を訪れた際は、ぶどうだけで20種類近く販売されていてどれを買おうか迷いました。
9月の高知では、花柚子・かぼす・すだち・ぶしゅかんなど「すみかん」と呼ばれるお酢がわりの柑橘が販売され、地元の方々は料理によって使い分けていると聞いて感心しました。
安売り競争に走る生産者と、品質や売り方で差別化して高単価で売っている生産者がいるので、その違いは何かな? どんな点をアピールすると高く売れるのかな?などとチェックしています。
山菜・きのこ売り場:地域の自然の豊かさが分かる
4月、5月の山菜、9月、10月の天然キノコは、地方の直売所を訪れる楽しみのひとつです。
春はふきのとうに始まり、こごみ、タラの芽、うるい、わらび、ふき、筍など。
山菜が豊富な山形や福島の直売所に行くと、こしあぶら、根曲がり竹、アイコ、みずなど、首都圏では買えない天然の山菜に出会えます。
秋に長野や栃木の直売所を訪れた際は、近隣の山林で採れたならたけ、むきたけ、ショウゲンジ、ちちたけなども販売されていました。
天然きのこは食中毒防止のため、直売所に鑑定ができる人がいないと販売できないそうで、天然きのこを置いている直売所は貴重です。
最近は山菜やきのこの乱獲が問題になっているようですが、きのこや山菜の種類によって地域の植生もわかるので、置いていると必ずチェックします。
乾物売り場:高齢農家の元気度が分かる
地味ですが面白いのが乾物売り場です。収穫や選別に手間がかかる胡麻や山くるみは貴重なので、見かけると必ず買います。
特に東北は冬が長いためか、乾物の種類が豊富ですね。山菜が豊富な山形・置賜地方の直売所では干しゼンマイや、珍しい干しアザミ(煮物にする)を見かけました。
大根は一気に収穫できるため、各地に干し大根の文化がありますが、なかでも宮城の直売所で購入した「へそ大根」は、一度ゆでた大根を串刺しにして1ヶ月さらすという手間のかかるもので、独特の甘さ・美味しさがありました。
乾物は手間がかかるため、高齢のベテラン農家さんが作り続けていることが多いです。乾物のバリエーションが多い直売所は、地域の高齢農家さんが元気で活躍している地域なのでしょう。
乾物は、慣れない人には食べ方がわからないものが多いので、POPなどで丁寧に食べ方が書いてあるとよし、買ってみようという気になります。
肉売り場:ジビエに注目
精肉売り場は地域のブランド肉が並んでいることが多いですが、最近ではジビエ(野生鳥獣の肉)を置く直売所も増えてきました。特に中山間地は鹿や猪の被害が深刻で、害獣駆除を兼ねてジビエや加工品を販売していることがあります。たいていは冷凍品ですね。
冷凍のジビエは処理や保存状態によってかなり味が変わるので、肉の色や霜のつき具合などを見て質を判断しています。
定番のシカ肉、イノシシ肉のほかに、ちょっと珍しいジビエが並んでいることもあります。千葉・房総の直売所ではシカに似たキョンの肉が、福岡の直売所ではアナグマの肉が売られていました。(どちらも美味しかったです!)処理に手間がかかる分ちょっとお高めですが、首都圏ではなかなか手に入らない珍しい食材なので、鮮度の良さそうなものがあれば購入しています。こちらも食べ方提案があると買いやすいですね。
調味料・加工食品売り場:地域の食文化がわかる
生鮮品を一通り見た後は、冷蔵庫の漬物や調味料を見ます。地域ならではのものが数多くあって面白いです。
東北エリアの農産物直売所には自家製の漬物が数多く並びます。「飯寿司」「三五八漬け」など米や麹を使った発酵食品が多いですね。
地元メーカーの豆腐や納豆も珍しいものが多いです。仙台や新潟、福井の直売所には分厚い油揚げが売られていて、オーブンでサクサクに焼いて食べると大変美味しいものです。
味噌や醤油、ポン酢やたれなどの調味料も手作り感あふれるものが売られています。山口や九州の醤油は糖分が入っていて甘いものが多いですね。私はなるべく裏側の原材料表示を見て、クリーンラベル(添加物が少なくシンプルな材料)のものを選んでいます。
惣菜売り場:地域の女性の活躍度がわかる
おかずや寿司、弁当、スイーツやパンの売り場は、地域の女性たちの手作り品が並んでいることが多く、料理上手のお母さんたちが活躍しているんだろうな~、と思うことが多いです。
特によくチェックするのが郷土寿司の売り場。関西ではばってらやサンマ寿司、千葉の房総では華やかな飾り巻きずし、高知では野菜寿司、山陰や北陸ではきっちきちに詰めた押し寿司など、地味ながらも郷土で作り続けられてきた味を楽しめます。
私は甘いものが得意でないのであまり詳しくありませんが、地元のお菓子も面白いですね。沖縄の直売所ではポーポーやちんびんと呼ばれる薄焼きのクレープや、ムーチーと呼ばれる月桃の葉でくるんで蒸した餅菓子が売られていました。
番外編・タネ売り場:穴場の面白さ、伝統野菜のタネが手に入る
大きな農産物直売所の場合、生産者向けの資材販売を兼ねていることがあります。そんなときは野菜のタネ売り場をのぞきます。
地域によっては、伝統野菜や、地域ならではの珍しい野菜のタネが手に入ることもあります。金沢の直売所では源助大根や加賀太きゅうりといった加賀・能登の伝統野菜のタネを、長野の直売所では地元の種苗会社が作った信州そばや辛味大根のタネを購入できました。家庭菜園を楽しんでいる人にとっては、かさばらずに楽しいお土産になります。
この話、いくらでも続けられる
めちゃくちゃ長くなってしまいましたが、書いていて自分がどれだけ直売所好きなのかを再認識しました。むしろ、直売所に行きたくて旅行しているとも言える。地方の直売所に行って「ああ、ココ惜しいなあ、もっと魅力的にできるのになあ」と思うこともしばしば。今後も直売所巡りを続けていこうと思います。
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マイナビ農業で、私の開業についてご紹介いただきました!