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新規就農者が生き残るための「稼ぎ方」

中小企業診断士のフクダです。
私は中小企業支援機関で働いていた頃から、新規就農者(農家の後継ぎでなく、初めて農業経営に取り組んでいる方)の経営相談を受ける機会が多くありました。

資金なし、農地なし、設備なし、機械なし、技術なし、地域のコネなし、JAにもなかなか入れない。ないないづくしの新規就農者がどうやって生き残るか。
農業収入だけでは食べていけず、アルバイトをして収入を補っている方も多くいらっしゃいます。
それでも皆さん知恵を絞りながら「農業で食べていく」ための手段を見つけています。

今日は私が見てきて、なるほど!と感心した新規就農者の「稼ぎ方」についてお話します。 

農業体験サービスを提供する

新規就農者は「いちばん素人に違い感覚を持った農家」とも言えます。
田んぼに足を入れる時の緊張感、蒔いたタネが一斉に芽を出した時の喜び、トマトが実をつけて色付いていく時のワクワク感、大根や人参がスポン!と抜けた時の気持ち良さ… 

ベテランの農家からすると、日常の作業すぎて何とも思わないことが、一般の人達にとっては新鮮な体験だったりします。 

新規就農者はそういう「素人目線」を持っているので、体験サービスに向いています。
農業学校ではないので、技術的に高度である必要はありません。自分自身が農業に「ハマった」きっかけになるような体験を、一般の方にも提供していく。

ボランティアではなく、しっかりとサービスとして稼ぐビジネスモデルにするためには、SNSなどを活用して「ファン作り」「コミュニティ作り」をしていくことも重要です。

異業種と組む

先日、農業の専門用語は難しい、というお話をしました。
新規就農者は、農業の専門用語と、一般の方向けの表現が両方できる、いわばバイリンガルです。

そのためか、新規就農者は飲食店や食品加工業など、地域内外の異業種の方々と組んで、販売や加工に取り組むのが上手い方が多いです。

農業の常識と異業種の常識の違いを認識して、翻訳し、お互いの事情を擦り合わせる。ベテラン農家だと、どうしても「農家目線」になってしまうので、この作業は結構難しいのです。

売り先だけでなく、就労支援施設や学校と組んで、人手が足りない問題を解決していく新規就農者も多くいます。

新規就農者の多くは異業種での勤務経験を持っているので、「生まれた時からずっと農家」という方々よりも、ビジネスとしての感覚を持ち合わせていることが多い点も強みです。

オリジナルの加工品を作る

異業種との連携から一歩進んで、オリジナルの加工品販売に取り組む新規就農者も多いです。
最近の新規就農者は市場出荷だけでなく、スーパーや直売所などに独自の販路を持つ方が多いので、加工品はシーズンオフの「売り物」を作る意味でも役立ちます。

従来のよくある「余った作物をとりあえず加工してみました」的な乾燥野菜やジャムなどではなく、クラフトコーラや野菜たっぷりの調味料、バスソルトなど、消費者目線でユニークな商品開発に取り組まれる方も多いですね。

就農して最初の頃は技術的にB品や規格外品が出やすいので、生で販売できなかった作物の「アップサイクル」としても加工品は有効です。

グループで販売する

経営規模の小さい新規就農者は、せっかく販売の機会があっても出荷が不安定なことがよくあります。
特に少量多品種で有機栽培、といった経営モデルの新規就農者は、出荷単位が小さすぎて売り先を広げられない。少ない商品を販売するために、配送の手間ばかりかかってしまう。といったお悩みもよく聞きます。

最近よく聞くのは、同じような経営スタイルの新規就農者がグループを作って、共同でマルシェを開催したり、配送や販売を共同化する方法です。
1軒で出すと採算が合わないマルシェなどのイベントも、複数メンバーで共同ブースを作れば、品数も揃うし人手も少なくてすみます。

CSA(コミュニティで地域農業を支える仕組み)として、有機栽培農家グループの「サブスク野菜宅配サービス」に取り組む例もあります。

不利な状況を逆手にとる

新規就農者で急激に売上が伸びている方は、新規就農者の不利な点を、うまく逆手に取っているなと感じます。
田んぼが小さい→体験農業に使いやすい!
人手が足りない→みんなに手伝ってもらおう!
加工設備がない→異業種と組もう!

逆に「いろいろ持っているからこそ身動きが取りにくい」農業法人などもあります。
新規就農者ならではの身軽さ、スピード感を持って事業を伸ばしていきたい方、応援しますよ!


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