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前庭神経炎の発症から復帰までの軌跡①

社労士とも人事とも全く関係ない、直近の経験談です。10日ほど前に前庭神経炎が発症しました。現在は退院して自宅療養中で明日から仕事です。この記事を書こうと思ったのは、文献によるとこの前庭神経炎は10万人に3.5人しか発症しないのでネットに経験者の話がなかったからです。もし、前庭神経炎が発症する人がいた時に経験者として参考になればと思い、備忘録も兼ねて書きます。

前庭とは耳の内部にある平衡感覚を認識する器官のことで、そこから脳に認識した情報を伝える神経が炎症を起こし、正しい平衡が保てずに目眩を発症する疾病が前庭神経炎です。症状を端的にいえば、船酔いの様な感じで目眩が長時間続く病気です。目眩が酷いので立つことも歩くことが出来ません。歩くと気持ち悪くなり嘔吐します。常に世界がグルグル回る状態が続きます。この世のものとな思えないぐらい気持ち悪いです。

ある木曜日のことです。リモートワークが終わって散歩に出かけようと思ったのが午後6時頃。パソコンの電源を落とした時にちょっとだけクラッとしました。軽い目眩でしたが30秒もすると治りました。私は目眩になることは殆どありませでした。はっきり覚えているのは過去に2回ほど。それも短時間で治りました。なので、この時も大したことはないと思っていました。散歩に出掛けて、公園を悪いている時にまた目眩がしました。今後は1分以上続きました。「何かおかしい」と思ったものの、外食する予定があったので治るのを待ち、自宅の方まで歩きました。自宅近くの飲食店に入り、ビールを飲んでいると、また目眩が始まりました。ただ、目眩が全く収まらない。10分経っても全く変わらない。ちょっと頭を動かすだけで目眩が酷くなりました。こうなると食事どころではないので、そのまま自宅に戻り、午後9時にはベッドに入りました。体調なんて寝れば治る。大病をしたことがない私はこの時まではそう思っていました。夜中に目が覚めると、目を閉じているのに船酔いの様な状態でした。目を閉じているのに天井が回っている感じがします。それでも「寝て起きれば治ってる。」と信じてそのまま目を閉じました。

日差しで目が覚めても、昨日のグルグル感が一層酷くなっていました。昨日はビール一杯だけ。二日酔いのはずがない。おかしいと思い、立ち上がって歩こうとするけど立てない。無理に立って歩いても真っ直ぐ歩けない。千鳥足の様な感じで、目の前の景色が左から右に回転している。それでも立って、トイレに向かうと強い吐き気がする。ベットからトイレまでの僅か5メートルしかない。でもこの5メートルを歩けない。この時は気付きませんでしたが、完全に方向感覚が狂って目が廻り、それが吐き気を引き起こしていたのだと思います。意地でトイレまで行くととても気分が悪くなり嘔吐しました。トイレからベットに戻る間にも気持ち悪くなり、またトイレに戻る。これを何度か繰り返してベットに辿り着いた時に「病院に行こう」と決めました。午前9時を待って花粉症で通院したかかりつけの耳鼻科に電話し、受付の方に症状と状況を伝えるると「今日は予約で埋まってます。明後日どうですか?」との返事。私が「急患でお願いできませんか。」と言っても取り合ってくれない。冷静に考えれば受付の人は看護師でもないただの素人。症状を伝えても意味ないんですよね。こういう時って気を利かせて先生に判断を仰いで貰えればとも思いましたが時間の無駄。ここで潔く諦めて、初めて#7119の「救急相談センター」に電話しました。症状を伝えると「直ぐに救急車を手配します。」と返事があり、5分後には救急車が到着しました。この間寝巻きからもう少し綺麗な格好にしないととか、無駄に気を使って着替えました。救急隊員の方に状況と症状伝えると、名前、生年月日、今日の日付を訊かれ、私の意識が朦朧としていないことの確認がありました。そして、私の目を覗き込み「ガンシンがありますね。直ぐに病院に行きましょう。」と言いました。この時点で私はぐったりしているので何も考えらませんでしたが「ガンシン」という言葉だけが妙に頭に離れずに、救急車で病院に運ばれる間「ガンシンってどんな漢字書くんだろう。」とかどうでも良いことを考えていました。

私が搬送されたのは運良く近くにある救急医療センターがある病院でした。目眩というのは脳出血の可能性があるので、今思えば最初に脳神経科の医師が診察してくれたのだと思います。指先に痺れはあるか、意識の混濁はないか、手足に触感はあるか等々、質問や触診がありました。そして、救急隊員の方と同じ様に私の目を覗き込み「指先を見てください。指先を動かすので、そのまま指先を目で追ってください。」と指示がありました。指示に従い指先を追うと「強いガンシンがあります。」と言いました。また「ガンシン」。「そうだ。ガンシンってなんだろう。どんな漢字なんだろう。」と考えていると今度は別の医師が来て同じ様に「指先を見てください」と言いました。同じ様に指先を目で追うとと「ガンシンがある」と言いました。また別の医師が同じことを何度か繰り返した後、点滴が始まりました。暫くして、医師が「少しは良くなりましたか」と訊いてくれたので、私は「少し良くなった思います。」と答えると、医師はまた私の目を覗き込みました。暫くして、同じ医師が同じ質問をします。これを数回繰り返した時、医師は静かに「本当に良くなっていますか?その兆しが全然見られないのですが。ガンシンが改善していません。」と言いました。確かに点滴を投与された私は確実に安心していました。「医師が効果があると判断したから点滴が始まった。だから点滴は効いているのだ」と私は勝手に思い込んでいました。言われてみると、目を開ければ天井は左から右に回転しているし、目眩は全く治っていない。これがプラシーボ効果なのか、と妙に冷静に考える自分がいました。そして、医師は指先を立てて「いま、真っ直ぐにこの指先を見ていますよね。でもあなたの眼球は動いています。すごい速さで左から右に動いているのです。これが治らないんです。」なるほど、「ガンシン」とは「眼振」のことだったのかと妙に納得した。その後、心電図、レントゲンに健康診断のオプションでは高くて手が出なかった脳のMRIを行った結果、脳梗塞ではなく前庭神経炎の可能性が高いと診断をされ、そのまま緊急入院することになった。

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