群馬と栃木をまたぐ「わたらせ渓谷鐵道」を往復で満喫した1日
わたらせ渓谷鐵道をご存知だろうか。
その名の通り渡瀬川のきわきわを攻めるイカしたローカル線である。
現在は観光列車として人気を博しているが、もともとは足尾銅山で産出した銅などを運搬するための路線であったらしい。
トンネルや駅舎など、大正時代に建設された当時の鉄道施設がいたるところに残っている。
つまり景色が良いのはもちろんのこと、乗っているだけで登録有形文化財ツアーができてしまうタイムスリップ鉄道でもあるのだ。
おそれいった。そんなものが関東にあったとは知らなんだ。
乗るっきゃねえ。
7月某日。朝9時32分。東武特急りょうもう号は定刻通りに群馬県の相老(あいおい)駅へ滑り込んだ。
この相老駅で東武線から"わ鐡"(通称)に乗り換えることができる。
ICカードで一度改札を出てから、駅の券売機で「わたらせ渓谷鐵道1日フリーきっぷ」を購入し列車を待った。
ちなみに、わ鐡ではICカードは一切使えない。きっぷの購入も現金のみ。
いつも電車の写真を撮り忘れるのだが、大丈夫。ちゃんと乗った。
発車後ほどなくして右手に渓谷があらわれる。
川を取り囲む緑と遠くに見える山並みが美しい。
三位一体の大自然に目を奪われつつ、まずは神戸(ごうど)駅で下車して、ホーム直結のレストラン清流へ。
かつて実際に使われていた車両をそのまま食堂として使用している面白いレストラン。
車窓から列車の発着を眺めつつ、舞茸天うどんとオレンジジュースをいただいた。
その後はまた列車に乗り、通洞駅で下車して足尾銅山観光。
江戸時代から昭和まで400年続いた足尾銅山。
今は坑道の一部が観光用に開放されている。教科書でしか知らなかった歴史の現場だ。
ほんの数分だけど、坑内に入るところまでトロッコで連れていってくれるのが面白い。
坑内に入った瞬間に冷気が身を包む。
少し歩いて道を曲がると、来し方に見えていた地上の光も届かなくなった。
天井は低く、時折坑道から染み出した地下水がぽたぽたと落ちてくる。
こんな道が今も銅山の中を縦横無尽に走っているらしい。その総延長1200km以上。気が遠くなる話だ。
さて、終点の間藤駅は栃木県日光市。
ここからトロッコ列車に乗って相老駅へと折り返す。トロッコ車両は窓ガラスが全て取っ払われた観光用の特別仕様。
顔に身体にびゅんびゅん風を受け、眼下には渓谷の絶景が流れていく。疾走感が半端ない。風になるかと思った。
途中の長いトンネル区間では車内が怪しげにライトアップされて和む。
すごい色だなほんと。
他にも見どころに差し掛かると案内付きでゆっくり走らせてくれるなどサービス満点。
これに乗るためだけにまた来たいと思った。
とはいえ普通電車も先頭から前方の景色が見えるので捨てがたい。
ちなみに席は右側でも左側でもそれなりに見どころがある。
ただやはりメインの絶景スポットである原向〜沢入の渓谷を見るならば、間藤方面行きは左側(つまり反対方面なら右側)に乗るのがおすすめ。
相老駅に到着し、特急りょうもう号に乗り換えて東京へ帰る。いや、東京に住んでるわけじゃないんだけど。特急の終点が浅草だからね。
さらば群馬。
無事に国境を越え、終点の浅草で下車。
夜だったので観るところもなく、思いつきで浅草寺のおみくじを引いてみたらなんと「一」の大吉を引き当てた。
終わり良く、幸先のいい旅となった。
行程表
事前に時刻表を見ながらコース組み立てたので記録しておく。
間藤駅での待ち時間をもっと減らしたければ、行きで通洞からトロッコ列車に乗るという手がある。
トロッコ列車は乗車券の他に有料の整理券が必要なので短い区間の乗車はやや勿体ない気もするが、効率重視ならありかと。
07:53 北千住駅発(東武特急りょうもう3号)
09:32 相老駅着
10:15 相老駅発(わ鐵 普通電車)
11:00 神戸駅着 レストラン「清流」で食事
12:29 神戸駅発
12:58 通洞駅着 足尾銅山観光
14:39 通洞駅発
14:45 間藤駅着
15:30 間藤発(トロッコ列車わっしー6号)
16:54 相老駅着
17:04 相老駅発(東武特急りょうもう38号)
18:55 浅草駅着