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雨戸をカリカリする音から始まった物語

もう40年も昔の話だけれど
今でもはっきり覚えている

まだ20歳の頃に一人暮らしをしていたアパートで

ある日、雨戸をカリカリする音がして開けてみると黒い綺麗な猫が小さな仔猫(3ヶ月くらい)を2匹連れて訪ねてきた。

お腹が空いてるのかなと、確か牛乳くらいしかなかったがお皿にあげた記憶がある。それを飲み、香箱座りをして暫し部屋で暖をとる母猫と戯れ合う2匹の仔猫たち。
ミケの女の子と黒いブチの男の子。

ヤンチャがすぎてカーテンによじ登ろうとすると母猫は低く唸って『駄目だよ、いい子にして』とでも言ってるようで、仔猫たちも、母猫の声に耳を傾けているようだった。

堂々とした雰囲気で懐っこいわけではなく生粋の野良猫って感じの黒猫。

一度もニャーとか鳴くことはなかったし、触れる感じでもなかったが何を思って来たのか…

ほんの短い時間を過ごして、仔猫を引き連れ開けておいた戸から外に戻っていった。

そして数ヶ月が経ち

『開けて!』というようにカリカリと雨戸側から音がして、見てみるとあの時、きょうだいと戯れあってたミケの女の子だった。もう仔猫というよりは若い独り立ちして間もない女の子って感じに育っていて毛並みも綺麗。

『えっ⁉︎もしかして、あのお母さん猫が、あのお家だったらきっと世話してくれそうだよと教えたのかな』『それとも小さい時の記憶で、あそこのカーテンで遊んだな、あそこだったらご飯くれそう』とか思ったのかな?

部屋に入っては来たけれど、手を伸ばせばスッと逃げ撫でることも出来ない…あのままずっと野良としてお母さんと暮らしていたんだろうな。

黒猫のお母さんは賢そうな感じだったから、しっかりと生き延びる力と知恵を授けたのだろう。

とりあえず、あるものでご飯を作ってあげたかパンをちぎってあげたのか…細かなところは忘れてしまったが、また何処かに帰るんだろうなと戸を少し開けたままにしておいた(平和な時代だったな…今なら物騒で開けて置けないね)

そのまま居着いて、少しずつ撫でることもできるようになり、そのうちゴミ出しに行く時にも着いてくる可愛い子だった。

トイレもすぐ覚え、一度も粗相した事がない。吐く時にも庭先に出てから吐いていた。

たまに訪ねてくる年配の大家さんも『あら、猫がいるのね』と…今思うとおおらかで優しかったな。


とても賢い子だったが、お母さん猫から狩りの仕方などもしっかり教わったようで、いちど渡り鳥系の鳥の羽根の付け根部分をくわえ唸りながら帰って来たことがあり、捕まえてすぐらしく、つがいらしき旦那さんが奥さんの鳥が助けようと一緒に飛んできていてびっくりして「離してあげようね」と口から外してあげたことがある。幸い深い傷にはなってなかったようで二羽で飛んでいったのでホッとした。

スクーターで仕事に通っていたのだけれど、スクーターの音で飛んで迎えにきてくれたものだ。

かなり遠出のお散歩にもおいでと言えば着いて来たし、普通に「行ってくるね」と言う時はついてはこない。

悲しくて泣いてる時にはそばに寄り添ってくれた。

ある時、カボチャくん(頭の大きい、ちょっとボーっとした)若い猫と仲良くなったようでよく一緒にいるようになり、やがて子どもが産まれ、初のお産をお腹をさすってあげたりして手伝った時のことは今でもはっきり覚えている。

たくさん産まれて、いろいろな人に声かけて新聞の勧誘の人とかにも貰ってもらった。

子煩悩な猫でパパ猫もたまに子育てに参加していた。外猫という感じで我が家に遊びに来ていた。

そのうち一年ほどしてふらっと何処かに旅に出てしまったようで見なくなったが。

あの頃住んでいた地区は野良猫や飼い猫たちが自由に行き来していて、駅までの道にある竹藪では、いつも待ってる人慣れした猫もいたな。膝にしばらくのるだけでついては来ない。

ミケ猫は母性本能マックスな感じで、ある時仕事から帰ると…
いつもお母さん猫と仔猫たちがピョンピョンと迎えに駐輪場まで出てくるのだが、ピョンピョンの数が1匹多い。

なんとよその迷子の子まで拾って来てしまったようで、1匹増えてしまい里親見つけるのに苦労した覚えがある。

子煩悩で(猫っ可愛がりとはよく言ったもの)、すごく可愛がっているので全部とりあげてしまうのは忍びなくシバトラの子『チビ』を残した。ちょっと成長も遅い子だったというのもある。

チビは避妊手術をして(当時のわたしはお給料も少ない一人暮らしだったので費用の捻出も大変だった)

チビは大きくなってもミケお母さんとベッタリで仲良かった。

そんな姿を見ているのは微笑ましく仕事の疲れが癒えたものだ。

結婚して旦那の住んでいた場所へ引っ越した時にも段ボールから出してあげたらチビは移動が怖かったようで、かなりビビっていて飛び出して外へ行ってしまったのだけれど、ミケ母さんは、ニャーニャーと呼びかけながらしっかり連れ戻して来た。

引っ越した先は河原近くの家だったので、狩猟本能も満たされていたかも…モグラやヘビなど軒先に並べてあった…わたしへのお土産?

引っ越した先ではドラゴンと子どもたちが呼んでいた迫力のある綺麗な雄猫がいて、よく庭先に来てはうちのミケを呼んでいた。一帯をしきるボス猫だったと思う。

後にミケが死んでしまった後も、何度も呼びに来ていた



わたしを選んで来てくれたミケとの思い出は多く、逸話も多い。

ふと思い出し、残しておこうと思い立って書いてみた。


今いる我が家の猫たちは多頭飼い飼育になってしまったお家の猫ちゃんもきょうだいで2匹引き取った子。

外の世界は全く知らない子たち。網戸越しに、景色を楽しむだけだ。

2匹とも手術をしたので勿論子育てを楽しむ機会を奪ってしまっている。

あの、子育てを楽しんでいた姿を思い出すと微妙な気持ちにもなるが、今はもう時代が変わってしまった。

あちこちにあった草っ原も少なくなり安全に自由に楽しめる環境は少ない。

駅の近くの駐車場にいる地域猫ちゃんもゴワゴワした毛並みで、外の世界の大変さが滲み出ている。

島とか行くと猫ちゃんたちがお腹だしてのんびり海辺や商店の軒先あたりにいるのを見かけて、しっかりお腹も満たされているようだとほっとする。



昨夜は疲れて早く寝てしまったせいか夜中に覚醒‥思い出すままにミケとの思い出を綴ってみました。また他のエピソードもいくつか思い出したので折に触れて綴ってみたいなと思います


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