
枝垂れるように光が落ちていく瞬間を眺めていたら…不意に「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?ってあったね」と話しかけられ
仕事の合間…暗がりで水分休憩をしていたら、大きな打ち上げ花火が頭上に花開いた。
暫し見惚れて…重い腰を上げ数歩歩き出したところで、またドンと音がして、思わず立ち止まって空を仰ぐ。
勤務中なので…写真は撮れないからこそじっくり光が織りなす光景を瞳に焼きつけるようにみつめる。
大きく枝垂れるように光が落ちていく。フッとなんとも言えない感覚が満ちてくる。汗にベタつく肌の事も、疲れた足のことも、その一瞬には忘れてしまったかのようだった。
ふたたび歩きだしたわたしを追い越しながら『打ち上げ花火、下から見るか横から見るかってあったね』と独り言のように声を掛けてきた人がいた。
『あったね〜、懐かしい』と映画のシーンを思い出しながら自然と言葉を返したわたし。
軽く振り返った気もしたが
それさえわからないほどの暗がりをスリムな青年のようなシルエットが過ぎ去っていった。