唯一無二
忘れられないひとならぬ、忘れられない作品。その存在を知っているだけで、心の財産になるような作品がある。
作家は久保田一竹氏。《一竹辻が花染め》と呼ばれる圧倒的な染め物の世界観に出会えるのは、山梨県の 久保田一竹美術館 ITCHIKU KUBOTA ART MUSEUM (itchiku-museum.com)。確か、河口湖駅からタクシーで着いた記憶がある。確認したら、もう6年前のことなのに、今も拝観の際の満足感が心によみがえってくる。ここは、言ってみれば氏の美意識がカタチを持って存在している空間。写真は入り口の門の風景で、エキゾチックな石門は、インドからここにやってきたもの。この門を通り、さざれ石の音を立てながら踏み進むうちに、まるで神社の道を行くようなすがすがしい気分になった。
そもそも、美術館とは豊かな自然なり設備なりと共に、その風景も計算された設計で建てられている印象がある。やはり、作品を観て終わるものではなく、その空間自体を体験することが鑑賞の醍醐味だろう。
それにしても、館内の各施設は、とてもじゃないが意図・努力して叶うものではないレベルの見事さ。作家の美意識に何か巨大なパワーが吸い寄せられて集合したに違いない。あなたも吸い寄せられてみれば、その不思議なほど強力な求心力に納得するだろう。ぜひ、一度でも訪れてほしいワールド。
作品は、私が何を語らずとも一目瞭然の逸品のみ。こんな素晴らしいものを、桁違いの施設でどう運営していくんだろう、と思えば、オーナーは海外の方々だった。あの伊藤若冲(江戸時代)の作品も、そもそもはアメリカのジョー・D・プライス(美術蒐集家)がビビビと痺れて蒐集をした後に、今の日本に逆輸入のような道を辿っている。嬉しいような、寂しいような、妙に納得のような。。。
今日たまたま話したアメリカ人が「僕の友達に、日本のちょっとした作品とか大好きなひとが何人もいるよ」と言っていたけれど、私たち日本人も、もっと日本の作品を気にしてみるのはどうだろう。この投稿が、そんなささいなきっかけになれば良いな。