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つくれないモノなどない
明日6日(日)まで開催の 燕三条 工場の祭典2024 (kouba-fes.jp) へ行ってまいりました。
これまで消費中心の場に身をひたしてきたわたくしからしますと、"生産" のとてもパワフルで尊いマインドに、カルチャーショックの3日間でありました。
アテンドをしてくださったS氏によりますと
「ひらめいたら、自分たちでつくることしか考えない。自分でわからないことは、どこに相談すれば進むのか、という考えのみ。」
と。
実際に、あっけらかんと
「この機械は、先代が個人で開発しました。難しい金属を初めて溶かすことができるようになったので、他社にないこのような製品ができました。少なくとも、この技術は日本でここだけのはずです」
などとぶっとんだ説明をあちこちで耳にいたしました。
二重に驚くというか考えれば納得なのが、どちらに伺ってもまんべんなく実に若い世代が多かったこと。
お話ししていても、口角が上がって目が輝いている。嬉しそうに笑う。なんのてらいもなく
「ハイ、毎日すごく楽しいです。ここにいて良かった」
と100%の回答でした。ひとをそらさないで自然に会話を続けられるのも、精神が充実しているからでしょう。
それはきっと、どちらの工場でも若者の受け入れ・育成を鑑みた環境だからだと思います。生産マインドは、若者を一人前にも生産するのです。
最初に伺ったのは 朝倉家具 | 燕三条 工場の祭典2024 (kouba-fes.jp) さんです。桐ダンスの老舗ですが、その技術と知識を展開し、家具や木製のお弁当箱まで製作されています。
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お弁当箱の角は、曲げたあとにピタッとカーブがつくようになるまで、切込みの本数や深さなどなど、1年半を費やして研究されたそうです。出来る限り修理もやります、とのこと。本体は杉、蓋は桐製というのも食材のことを考えて。
家具に用いる材木は、自社の森林から自然保護に必要な分を切り出して使用。アンティークの桐たんすをモダンと融合させ、棚に変身もさせていました。
経営者の方の言葉で
「うちの職人が持っている素晴らしい大切な技術や知識は、桐たんすだけを製作していたら残っていかなくなってしまう。なので、分野を広げているのです」
というのが、心にささりました。
確かに、製品をみれば "どうやってつくっているんだろう" という箇所が必ず見つかります。桐たんす以外のモノから、桐たんすづくりの技術へと導かれるのです。
家具やお弁当箱を売っているのではおさまらないコトが、その製品には込められています。
現在、実際に売り物を手掛ける職人人数の3倍の若者を育てていらっしゃるのが 玉川堂 | 燕三条 工場の祭典2024 (kouba-fes.jp) です。
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たたいた金槌の文様はあるけれど、一つ一つ同じではない。
さらに、仕上げにカラーバリエーションを持たせるために、わざわざ温度変化をつけて手間をかけて商品提供されています。
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どこからどこまでが工芸品で芸術品なのか、昔の日本人は江戸時代までは関係なく今よりもずっと身近に親しんでいたもの。
つくるほうも使う方も、現代よりモノを楽しんでいたのではないでしょうか。ちゃんとつくられた心地よいモノ。
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上記の花瓶の文様はどうやって出しているのですかとお訪ねしたところ、
何層にも金属を重ね、削りだすことで出るものだそうです。
口元をみて、確かに厚そうですね、重いのかしら、とつぶやいたところ
「どうぞどうぞ確かめてください、持って」
とこれまたあっけらかんと仰る。
えええ、そんな、しかも素手だよ。。
ガラスケースにも入ってないし、普通に手近なところに置いてあるよ、、、
と1秒だけ考えて、持ち上げてみました。人間国宝の作品を。
もっと削れば、また違う文様が出てきますよ、とさらに重ねてご説明が。
立派な作品を前にして、その発想こそが、生産側の魂なのだと恐れ入りました。
各工場では製品を購入できるのですが、こちらの展示の仕方が大好きです。
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そうそう、こうでなくっちゃ。棚に整然と在庫があるのは、こちらの製品ににつかわしくはないですね。急須・湯飲みや茶たく、一輪挿しもこのような雰囲気で商談されていらっしゃいました。
S氏によると、有栖川公園の近くにブティックを出す予定があるとのこと。そちらでもこのスタイルでしょうか。
一人職人さんを常駐させるそうですよ。都内近郊の方、気になられたらチェックされてください。
まだまだ他にもストーリーはございますが、本日はこれにて。
朝倉家具さんで職人さんがくださった、カンナで削ったヒノキの香りを胸に吸い込み、また次回お伝えいたします。