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「メタファー:リファンタジオ」 感想&考察

きのうクリアした

正しくは「家族がクリアするのを見た」。
自分は横で見ながら口出しする役でした。最初から最後まで見届けましたが、実際プレイしている人間ではないので、やや薄味感想になることはご了承ください。

※のっけからネタバレ全開です。
自分はどちらかといえばメガテン好きであり、ペルソナは3、5のみ履修しています。

アトラススーパーお祭りゲー

このゲームがアトラスの集大成お祭りゲームだということは明白。詳しくはこの方の素晴らしい記事を参照してほしい。

個人的にはルイ様のラスボス形態にシビれましたね。イケメンが閣下と同じ格好するとあんなにエッチなのかって思いました。レーティングギリギリアウトを攻める姿勢に拍手を送りたい。
また、ルイがニンゲン化すると天使(神?)っぽくなるのも最高でした。一応、レラ様がLAW陣営のボスみたいな立ち位置でしたが普通に良識人だったので、あ〜なるほど流石にLAWボスは居ないんだね……とか思っていたらこれだよ!!
世界樹シリーズとかデビルサマナーとかやってないのでその辺りは分からないのですが、メルカバーっぽくなかったですか?

真・女神転生4のメルカバー

「弱き者よ……死ね……」とか言ってんのもそこはかとなくLAW思想ですごい好き。無意味な虐殺のない公平な世の中=力のみの世を求めた結果、自分自身が神(メガテンで言うところの創造主)の思想になって、弱者を抑圧する支配者になってしまう、っていうのが皮肉こもっててグッときました。

評価は二分しそうだが、好きなゲームだ

徹頭徹尾、王道を貫くファンタジーというテーマがズレていなかったのがとても良かった。ファンタジーはファンタジーでもダークファンタジーなので人がバンバカ死ぬし、音楽はJRPGや古き良き韓国産オンラインMMOにありそうな重厚感に満ちているし、敵はグロいエグいデザインばかりである。
主人公も殺人をするし、ペルソナに比べると選択肢に迷いがないですね。そして自分の中で完結せずに仲間に何でも話しています。生死のかかった旅、戦いであるからこその性質だろうなと感心しました。

◆手放しに賞賛したい点

ストーリー
・「王道」ひとつとっても様々な意味がこもっていて、魔法、幻想と現実、あらゆる暗喩とテーマがちりばめられた世界観に感服させられました。

・アーキタイプは、キャロル・S・ピアソン著の「英雄の旅 ヒーローズジャーニー」などに提唱されている、カール・グスタフ・ユングが提唱した分析心理学(ユング心理学)における概念を発展させたもの——が元になっているのかなと予想している。
というのもアーキタイプは、物書きの間では登場キャラクター作成の際に使用するバイブルとして、広い知名度を持っている言葉でもあるのだ。

「メタファー:リファンタジオ」自体が、ヒーローズ・ジャーニーそのものといえる話の筋立てをしているし、幻想世界であり創作世界であり、モアの書いた理想郷であり、そんな世界観を忠実に創っていることが窺い知れる。
・ちなみに、ドラゴンという単語も上記の本の中に登場する。「メタファー:リファンタジオ」では不可能の具現化と表現していたが、ヒーローズジャーニー内ではドラゴンはもう一人の自分、心に潜む影というような表現をされています。
竜宮神殿(2回目)のドラゴンは、まさにこの意味を持って表現されています。

「全ての人の魂を喰らう者」、「全ての人の魂の戦い」を思い出すしアーキタイプを順に沿っていく戦い方はまさにペルソナ3

音楽
誰か文句あるのかしら? 最高でした。むしろこれを待ってた。
ペルソナ系が好きな人もいると思いますが、今回は気持ちメガテン寄りです。お坊さんの読経を入れ込むと言うまさかのアイデアでしたが、これはストーリーとリンクしているわけですね。
よーく聞いていると、日本を代表するJRPGゲームタイトルや、ファンタジージャンルを背負うタイトルの戦闘曲、街のBGM、ダンジョンBGMを彷彿とさせるメロディが入っていると思うんですよね。戦闘曲は某ファイナルゲームのイントロぽいですし、グラントラドは某任天堂ゲームの城っぽいし、マルティラは某ドラゴンゲームの街っぽいです。ダンジョンはオンラインゲーム興隆期のMMOを思い出しますなあ・・・・・・家族は聖剣伝説っぽさを感じると言っていました。

ゲームシステム
・マップ、ダンジョン、見やすいし動きやすくて文句なしです。
・見聞録のような読み物は世界観の補完もできるしテンションが上がるのでいつでも嬉しい。
・絆クエストや王の資質など、ペルソナのコミュに値する仕組みが中心になっていましたが、あっても良いし、無くてもいいかな? と言う感じ。

◆賛否両論になりそうな点

ストーリー
・好みの問題だけど、エンディングのペルソナ恒例御礼回りはすごく余計に感じた。メガテンみたいに「創世したよ!滅びちゃったよ!チャンチャン!」って終わってほしい。
・モアに現実世界がコッチダヨ〜って連れていかれた時、アカデメイアに戻らずにそのままルイ戦にいってほしかった。

戦闘
・難易度ノーマルで遊んでいましたが、メガテン>メタファー>>>ペルソナ位の手応えで、初見は攻略わからずに全滅、という光景が多かったです。
・アーキタイプは善し悪しあって、攻略が縛られるという面もあるけれど、好きな育成で挑戦できるという自由度もあった。
・爽快感はメガテン(特に5・5V)に軍配が上がる。主人公側のパワーが全体的に控えめで、「マハ」系はジンテーゼしないと使えないので、工夫も必要だし時間もちょっとかかる。
・プリンスとロイヤル系統は余計かも。「これが正解育成ルートですよ!」っていう押しつけ感がある。苦労の割に八艘飛びとか弱いし。
・サモナーはめっちゃ強いけど、強すぎる気もする。

ゲームシステム
・カレンダーシステムは余計ではないんだけど、最終盤詰まりすぎかな。
・ダンジョンでエネミーシンボルを倒していくと、いちいちコマンドバトルしなくても良いという仕様、とてもいいと思います。真5のクソトマソード

UI
色がチカチカして見にくいよ!って意見があるようですが、傍から見ていて特にそうは思いませんでした。アート性重視のデザインでしたね。

◆懸念点

戦闘
ドラゴン族は総じてクソボス。グラブルみたいな攻略しないと倒せないのはダメだ!! 次回作ではできれば方向転換してほしい。

ストーリー
・最終盤の展開、やっぱりペルソナ5になっちゃったね、っていう既視感がすごかった。デカボスが出てくること自体は歓迎なのですが、みんなの力?でスーパー巨大戦士になってバッサリ一刀両断! っていう展開は、メタファーの世界観にはちょっと合ってないと思う。 そういうことが出来なかったからこそ、敵は殺すしダンジョンは駆け回るし、空が飛べないからニューラスが頑張ってくれるっていう行動の価値があったわけなので。無力な人々が抱く幻想の力が現実を打ち砕くっていうテーマですしね。
SFCパネルでポン以来の王族一家出来レ……もちろん、モアは記憶を失っているし民意で選ばれるなら誰でもいいよ、っていう気持ちで王の魔法を使ったわけですし、母親も息子を哀れに思って妖精の中に潜み導いていたわけなので、完全な八百長ではないんですけど。終わってみると民意で選ばれたような建前で、前王と前王妃がお膳立てした主人公(王子)が王位に就いた、ってことになってしまった気がしなくもない。
例えば主人公は王子の妄想から生まれたけどドラゴンみたいに存在が固定化した人だよ〜とか、ルイと対立するけど説得して部下に迎えるよ、みたいな展開があっても良かったのかなあ、と思います。
といっても破綻してるというほどの引っかかりはなく、好き嫌いでどう判断されるか、ってくらいの部分ではあります。

音楽(SE)
何故かBGMがでかすぎてボイスが全然聞こえねえよ!ってことが頻発しました。バジリオとか陰気なの?って感じでしたからね。
音量調整をよろしく頼みたい。

ところで町の名前が気になる

ストーリー中盤、ビルガ島竜宮神殿での衝撃的なイベントを経て、
「もしかして街の名前にはなにか法則性があるのか?」と気になりまして、ささっと調べてみました。

グラン・トラド

「GrandTrad」
英語・エスペラント語ともに直訳で「壮大な/雄大な、伝統的/古典的な街」で良いと思います。

マルティラ

「Martira」
エスペラント語で「殉教者」……や、やめてくれよ……
また、イタリア文学最大の古典といわれる長編叙事詩、ダンテ・アリギエーリ作の『神曲』の地獄篇第26歌に一節「〜Rispuose a me: “Là dentro si martira〜」と出てきます。たぶん苛まれる、という意味。

ブライハーヴェン

「BrileHaven」
BrightでもHeavenでもないんです。
Brileはエスペラント語で「素晴らしい」
Havenは英語ですがそのまま「港」という意味かと。

ビルガ島

「Virga(Island)」
ラテン語では「棒、笏、杖、枝」
英語では尾流雲(びりゅううん)という意味もある。これは日本語がVirgaに宛てにいった例だそうな。

尾流雲とは、雲の分類において部分的に特徴のある雲(副変種)の1つ。雲から降水が落下しているが途中で蒸発・昇華し先端が地表に到達していないもの。降水条(こうすいじょう)とも言う。地上に達すれば降水雲となる

Wikipediaより

個人的にはラテン語「杖」の方を推すのですが、これはキリスト教で有名な、旧約聖書の詩篇23篇の一篇から来ているのではないかな?と予想します。

4.Nam etsi ambulavero in medio umbrae mortis, non timebo mala, quoniam tu mecum es. Virga tua, et baculus tuus, ipsa me consolata sunt.
たとえ死の陰の谷を歩むとも私は災いを恐れない。あなたは私と共におられあなたの鞭とが私を慰める。

Wikipediaより

竜神エトに護られ、共に(巫女が)戦ってきたビルガ島の精神としては、かなり近いものではないかと思います。

アルタベリー

「AltaBury」
こいつが曲者なんですけど……
Altaはイタリア語、スペイン語で「高い」という形容詞「alto」の女性形です。キリスト教やヒンドゥー語でも似た発音の用語がありますが、それぞれAlterとAlthaなのでちょっと違います。
Buryは英語・エスペラント語で「埋葬する、葬る、葬り去る、埋める、沈ます、忘れる、覆う」等という意味があります。不吉!!!!

Altaについては、直前にホラ、えっここって東……みたいな事件があったので商業施設のALTAが頭に浮かんでしまったのですが、多分違います。
というのも、ギリシャに『アルタの橋』という場所がありましてね……

古代、ギリシャ、アンブラキアのアルタ (ギリシャ)で架橋工事が難航した際、工事指揮者の妻が自ら川に沈んで川の神の怒りを鎮め、工事が成功したとの伝説がある

Wikipediaより

人柱!!!

この街のストーリーを考えるとこっちが正解な気がします。「人柱を葬る」です……。だから音楽が常に不穏なのか。

アトラスの今後は安泰、日本のゲーム業界の希望となるか

一通りクリアまで鑑賞して、ペルソナ3R・メガテン5V・メタファーと続いているアトラスの快進撃はまだまだ止まらなそうだなと感じた。
これだけ中身の詰まったゲームを三連続でリリースできる体力が他社にはないだろうし、熱意も凄い。
全86頁に及ぶジャーナルを発売までアップし続けるとか正気の沙汰ではない。

アトラスが失墜していくことは考えにくいけれども、問題は日本のゲーム業界全体のほうだ。
これまで王道ファンタジーを牽引してきた某大手はすっかり勢いを失っているし、中国産マルチプラットフォームゲームに次々と市場を侵食され、コンシューマーゲーム企業は苦戦している。何を作っても、資金的にも人材的にも潤沢な中国企業に日本の規模では太刀打ちできず「グラフィックがしょぼい」「3Dモデルが少ない」「演出が」等々と辛口レビューを付けられてしまうのが現状である。豪華にしようとすればするほど制作年数も延びる。
ただ近年、中国はまたもや政府規制が入って制作現場も四苦八苦している状況のようだし、風向きは多少変わってきている様子だ。

何より、今回メタファー:リファンタジオが示したのは、ゲームの価値はフォトリアルモデルやリッチなグラフィックだけにあるのではない、という部分でもあると思う。
様々なゲームタイトルを彷彿とさせる世界観とストーリー、音楽、JRPG、日本社会、政治、王道、現実、幻想……あらゆる暗喩を含み、織り重なって作品世界全体に広がるテーマ性の深層を表現した。ゲームというクリエイティブの新たな可能性を示してくれたタイトルだ。

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