霧の彼方で

 一面霧が白く立ちこめている。

真っ白で視界かなく、右も左もわからない。

暗くはないので昼間のようだ。

恐る恐るゆるゆると足を出してみる。

どこからか森の香りがする、いや夏の木々の香りのようだ。

風もなく、音もない。

そこに存在しているのは、自分一人のように思えてきた。

ひろみは裸足で歩いていることに気がついた。

その裸足の足の裏に心地良さが伝わる。

歩みをとめてまわりを見渡すが、やはり一面白い霧で覆われている。

どこにいるのかもわからないが、不思議と怖くもなかった。

その時、すーっと前方の霧が晴れて森の中に小さな小屋が現れた。

自然と小屋に向かう。

小屋の向こう側に音もなく川が流れていた。

霧が川のように目の前に流れてきた。

霧は川と一体になり赤い渦を巻いて流れて空に広がっていく。

小屋の小さな窓から小さな灯りが漏れている。

中を覗くと古いベッドに髪の長い若い女性が横たえていた。

薄い透けた白いワンピースがはだけている。

豊かな張りのある乳房がこぼれ落ちている。

月の明かりとランプが陰影を創り出し、より官能的に女性を浮かび上がらせた。

女性の細い美しい足を長身な全裸の男性が優しく愛撫している。

男性の唇が女性の足を這い上がる。

ゴツゴツした両手が形の良いヒップを弄る。

長い髪が女性の表情を隠くしていたが、顎を突き出し、薄い唇から吐息が漏れる。

逞しい男性の性器が誇張している。

ゆっくりと女性が脚を広げはじめた。

男性の指と唇が女性の脚の付け根に吸い込まれていく。

その時、全裸の男性と一瞬目があった。

男の目の中に吸い込まれて、ひろみはベッドに横たえていた。

髪の長い女性と入れ替わったようだ。

鳥が羽ばたき、空に光線が縦横無尽に走る。

仰け反る身体が跳ね上がり、秘部をなぞる指が濡れる。

左手で乳首を摘み転がす。

脳裏から男性の逞しい性器が離れない。

着ているものを脱ぎ捨てて全裸になった。

半開きの唇から熱い吐息か漏れた。

両手で乳房を強く揉み右手が蜜が溢れる性器を弄る。

頂点に達して、そのまま眠りについた。

 心地良い目覚めの中でまどろんでいた。

不思議な夢を見たようだ。

夢を見つつ自分を慰めた。

今までにない快楽に襲われた。

剛とのセックスでも体験したことがない快楽があった。

女性である自分が未知なる女性の神秘さに驚き、その快楽に落ちていきそうな気がした。

自然と手が性器にのびる。

すでに濡れていた。

目を閉じ、誰もいないのに息を殺す。

その息苦しさがさらなる快楽の波となり押し寄せる。

脳裏には昨夜の夢の中の全裸の男と髪の長い美しい女性が現れた。

二人の映画のワンシーンのような優雅な解き放たれたセックスが月光の中で繰り広げられていたように思う。

その女性と自分が被り、絶頂に達した。

 枕に顔を埋めて、余韻に浸っていた。

レースのカーテンから朝の光が差し込んでいる。

週末の朝を時間を気にすることなくベッドで微睡む。

 予定のない今日は、温泉にでも行こうと思った。

ベッドから抜け出して、下着をつけて部屋着を着る。

コーヒーを入れてソファーに腰かけてコーヒーを飲む。

身体がシャキッとしてきたように思う。

コーヒーを片手に携帯をチェックする。

剛からのメールが着ていた。

所長と仕事中にゆっくりと話をしたことが書いてあった。

物を売るとは、人に夢を売ることって所長に教えてもらった、そして、取り敢えず、笑顔らしいと書いてある。

単純で感化されやすい剛のメールを読んで笑ってしまった。

そして、「剛くん!もう少し、頑張ってみようね!」

と返信した。

そして、年上なんだけど、年下みたいと思った。

きっと、今日も彼は仕事だろう。

そう思いつつ、窓の外の山並みを見た。

残雪と晴れた空のコントラストが美しい。



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