写真を撮りに韓国に行く
男性はライフプランとして現実的に受け止め、女性は一生に一度のイベントと受け止める。結婚はそこに異性間のギャップが生まれやすいのではないかと個人的には思っている。
ウェディングフォトを撮りに韓国に行った。
ウェディングフォトってなに?写真撮るのに韓国?前述したように男性の「結婚」のイベントとしての意識なんてこんなものだ。
結婚を決意するまで、結婚指輪と婚約指輪の違いがわからない男性だっている。
ウェディングフォト(フォトウェディング)とはいわゆる「前撮り」みたいなものでスタジオや街中で新郎新婦がドレスやタキシードを着て撮影するものだ。(東京駅に行くとたまにそれらしき人がいる。)
最近の新郎新婦の間では城ヶ島がその撮影地として流行ってるらしい。(最近知った)
私の妻も例外ではなく、ウェディングフォトをやりたいと意気込んでいた。場所は韓国。メイクやスタジオが好みだったらしい。
せっかくなので、韓国で撮影することを決め、準備をし始めた。値段は意外と安い。
海外へ行くのは小学生以来。有楽町のとんでもない量の人が訪れる更新センターでパスポートを更新した。妻も名字が変わったので急いで更新をした。
当然韓国に行くのは初めてだった。
最近は韓国は手軽に行ける国というような風潮が同世代ではあるが、私の中では十分異国だ。
到着すると、決済方法に苦戦しながら空港直結の電車に乗った。車内では、日本語のアナウンスが聞こえてきた。
聞いていた通り、日本人に優しくインフラが整っているっぽい。街中でも若い女性グループとすれ違うと、日本語で話している声が時々聞こえた。
海外に来て、オドオドしている姿を妻に見られたくないと思っていたが少しは平常心を保てそうだ。カタコト英語も思ったより出てくる。
ホテルに到着して、コンビニで買った袋麺を食べた。撮影が明日なので、むくみ防止のため今日はあまり塩分を取らないほうがいいらしい。妻はよくわからない穀物のお茶を飲んでいた。
撮影当日、日本人の通訳さんがスタジオまでタクシーを手配してくれた。とても気さくな方だった。
話してみると私と同郷で、医療関係の仕事をしていたが仕事でもっと幸せを感じたいという思いからこの仕事を始めたそうだ。車内での会話は思いのほか盛り上がった。
スタジオに着くとパウダールームに案内された。そこには信じられない量の化粧品がびっしり並べてあった。妻の表情を確認すると嬉しそうだった。
メイクには1時間半かかった。私もメイクをしたがほんの10分で終わった。10分のメイクでは何が変わったかわからない。
妻は普段は絶対にできないようなメイクや髪型をしていたのでものすごく褒めていると、そんな旦那さん見たことない!とスタッフから私が褒められてしまった。
これはリップサービスかわからないが、あまり旦那側が撮影に乗り気なパターンは珍しいそうだ。
思い返せば、通訳さんと初めに話したときも「奥さんが主役なんだから、旦那さん色々サポートしてあげるのよ!最後まで気を抜かない!」というスタンスだった。
完全に奥さんの見方につき、むしろ旦那は共通の敵ですと言わんばかりだ。
でも私が思いのほか楽しそうなので、途中から通訳さんを含むスタッフのスタンスが変わった。というより、旦那を褒められることで妻が喜ぶといことに気付いたようだった。(もちろん逆も然り)
カメラマンもさすがのプロで、男友達には絶対に見られたくないキメ顔も恥ずかしいながらもなんとか撮ることができた。
夜まで撮影し、撮影が終わる頃にはスタッフの皆さんとも仲が良くなっていた。最後はみんなで集合写真を撮った。
帰りのタクシーは、行きのタクシーとは雰囲気が違った。どこまで接客でしてくれてるかはわからないが、通訳さんにとても可愛がってくれるようになっていた。
撮影が終わった足でそのまま通訳さんおすすめのチキン屋さんに到着した。
撮影とダイエットと塩分制限が終了したのでその夜は2人で食べまくった。
結婚して数ヶ月だがこの人と結婚してよかったとそのとき少し思った。
2人でいるときも幸せだが、この人といると周りの人もみんなで幸せになっている気がする。
妻はよく、世の中の人はみんないい人だよと言う。私はそうは思わなかった。嫌な人にたくさん会ってきたし、嫌なことも何度も言われてきた。
でも、彼女と2人でいる時はまるで彼女の人生を共有している気持ちになる。本当にいい人にしか出会わないのだ。
というより、みんな笑顔になっていく。
みんなが幸せそうなのだ。
私も正直、ウェディングフォトを楽しめるタイプの旦那じゃないのだが、心から楽しめてしまった。
結婚後、またしてもその不思議な力を目の当たりにする。この女性は最強のパートナーなのかもしれない。