ヒルクライムの最適なケイデンスについて考える~1/2
みんな大好き「弱虫ペダル」の小野田坂道くんは「うわあああああああああ!!」 と叫びながらケイデンス 180rpm で坂道を駆け上るらしい。 私がアマプラの映画で見たときにあざみラインを駆け上るそんなシーンがあった気がする。
あざみラインは自分なら平均ケイデンス 60台か。しかも 「ぜいぜいはぁはあ。。。」で。
小野田くんはどのくらい速いのか。柳田先生に倣って計算する。
ケイデンス 180rpm: ギヤ比 34/30: 700c(周長2096mm)・・・ 26kph
あざみライン11.4km 平均勾配 10.4%
あざみを27分切りである。 あの加藤君すら、 はるか後方である。
VAM は 2,635mph。 ポガチャルの本気アタックに 1,713mph/49min という凄い記録があるらしいが、それすら足元にも及ばない。
と、いうことは、自分もアレキサンダー·カズヤ・カールトン・なんとかかんとか・タクボ・ヒバート(だったっけ?)選手のようにケイデンスをあと30上げれば自分もクライミングが速くなるのだろうか。
ヒトの生理限界とケイデンス104rpm
これはアワーレコードで目覚ましい記録を達成したときの各選手のケイデンスを纏めたものである。
1942年から現記録の 2019年までに機材やトレーニング方法は大変な進化を遂げ、 アワーレコードも45.798 km から 55.089km と飛躍的に伸びたが、 ケイデンスは変わっていない。
酸素の少ない高地で挑んだカンペナールツが定石の104から3つ減らしているのが特徴的である。また、女子の医師から自転車選手に転向したブライディはかなり低いが、これは年齢が41というのも関係あるかもしれない。
これをみるとよくある 「あなたの最適なケイデンスで走ればいい」 という助言に懐疑的になる。もちろんアワーレコードで成果を出す人の特性とそれに合ったケイデンスというものがあるのは間違いないが、 それにしても、 である。
いますぐ記録に挑むなら、 例えば乗鞍 HC で65rpmが最適の人も、 100rpmが最適の人もいるだろう。
しかし、1年後、3年後に挑むなら、目指すべきケイデンスがありそうな気がする。
時間と代謝とケイデンス
https://zwiftworker.com/?p%3D1565
ギヤ比が固定されるため、トラック競技はケイデンスが重要になる。
大雑把だけれど、上の記事に代謝系と時間の関係が特徴的に表れていると思う。
200m は140rpm
1000m は 135rpm→110rpm
4km は112rpm→104rpm
200m:クレアチンリン酸系、
1000m:クレアチンリン酸系→解糖系
4km:解糖系→有酸素 MIX 系
どうも、持久走レベルで限界まで引っ張るのは104rpm あたりのようである。おそらく、高い競技レベルにあれば MAP (Maximal Aerobic Power=Vo2Max 時の power) は、このくらいのケイデンスとなるものと思われる。
科学が証明する83rpm
しかし、高ケイデンスは間違っているという説も根強い。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10683101/
上記によると Vo2Max-80%では、エネルギー効率的に最適化されるのは80rpm前後とあり、選手は無意識に83rpmを選択するという。これは長丁場のロードレースやトライアスロンアイアンマンにおけるトップ選手の平均ケイデンスと合致している。
このような実験は国内外でいくつかなされており、「一般人はプロみたいに高ケイデンスじゃなくていい」 という記事になっている。
これとか。
https://www.jitetore.jp/contents/movie/201501130600.html
https://www.youtube.com/embed/43ci68I23hA
6%-20kph ということは4.6倍程度、心拍 172~177bpm、Vo2-50 であることを考えれば、被験者の Vo2Max パワー90~95%くらいの出力であったと思われる。ヒルクライムレースのゾーン。
他にはこんなのも。
https://www.cyclingweekly.com/fitness/why-amateurs-shouldnt-try-to-pedal-like-chris-froome-191779
これらの実験はプロトコルが適切とは言えないものではあるが、どれも高ケイデンスを否定するものである。一方、 高ケイデンスが有効とする生理的エビデンスは見つけるとこが出来なかった。
ではプロはなぜ非効率といわれる高ケイデンスなのか、生理限界の 104rpm と機械的効率の83rpm の間にはなにがあるのだろう。