見出し画像

ZONE2とタイパと脂肪燃焼について考える

(サムネ写真はMIZUTANIさんのものを借用)

え、まだSSTで消耗してるの?polarized traningに変えるだけで人生はうまくいく。

 って若者は知らないであろうネットミームはさておき、今や意識高い系自転車トレーニーでpolarized traning(以下、POL)を取り入れていないものはいないだろう。
 POLの貴公子、タディ・ポガチャルは2023CYもシーズンインから快進撃の3連勝、やはりその効果は期待せずにはいられない。

 要はヒトの代謝機能に着目し、それぞれの代謝ゾーンでトレーニングを行うことで生理機能を向上させるという理論でありその応用である。その結果として、中途半端なゾーンは不要とされている。
 なお、POLが全てではないし、「中途半端」なトレーニングに求めるものもある。しかし、非常に合理的な考え方であり、自分もずっと前から考えていた理論なので、有効活用すべきと考える。

で、実際に何を基準にどのくらいすればいいんだ?

 気になるけれど、その基準ってどうしているだろうか。
 沢山の低強度(8割)とちょっとの高強度(2割)の二極化でしょう、くらいの認識の方が多いのではないか。低強度と言われると、なんとなく旧来のアンドリュー・コガン先生のL2、55~75%/FTPでいいんじゃない、と考えるかもしれない。
 しかしポガチャルのフィジカルコーチでもある、イニーゴ・サンミラン博士は狙う代謝機能を刺激するためのゾーニングであり、代謝域こそが指標の根拠になるという。FTPじゃないんだという。

 とはいえ、自治体や国のスポーツ科学センターにでも行かない限りVo2MAXパワーは測れないし、計測時のコンディションにも左右される。普段のトレーニングやレースで出てくるFTPを利用したい。
各種論文等を組合せると、
*要は有酸素代謝機能~ミトコンドリア活性や脂質代謝に関する酵素の分泌、酸素供給etc~を向上させれば自転車におけるベース持久力が獲得できる。
*有酸素代謝=脂質代謝の量を稼ぐことが重要で、効率よく脂質を酸化させるゾーンにフォーカスすることが重要。
*脂質の酸化はVo2MAX・P65%で最大化、以降は糖質酸化が亢進するため脂質酸化は抑制される。なお、Vo2MAX・PとFTPの相関は統計的に80%程度と言われている。
*よってZONE2はFTPの63%~81%。このZONEでは脂質代謝量は強度と時間に比例するため、リソースを最適配分するのが効率的。
(多分に推測を含む、ざっくりした結論)

脂質代謝量の定量化と指標

ということで、いつも通り逆算思考で数字をこねくり廻し、使いやすい指標を考えてみた。

 FTP75%で4時間走り続けた脂質代謝量(LMS:lipid metabolism score造語)を100として、一回のワークアウトをスコアリング。週の合計値で定量評価できるものと考える。
初心者はまずLMS100/Wを目安に、アマチュア選手ならLMS150~200/W、JPTならLMS180~280/Wくらいが妥当だろうか。
 個人の特性や時期的にベース期はLMSを高めに維持した方が良いし、コンディションをあげていくときは高強度の比率を増やしてZONE2は減らすべきだろう。

Fig1


このLMS係数はアベレージパワーのFTP比に有酸素代謝比αをかけて、240minを100とするため60/240で除したもの。
LMS=FTP比(%)*α(%)/(60/240)*X(min) (※αはZONE2であれば80~81と推定)
FTP72%で2時間45分だとすると、LMS=72*80/60/240*165=66

この表をもとにLMS100を得ようとすると、
FTPの65%で4時間44分、
FTPの69%で4時間19分
FTPの75%で4時間フラット
FTPの81%で3時間42分
FTPの88%で3時間45分
である。

 私の感覚でいうと、さら脚でFTPの75%で4時間フラットなら翌日も同じボリュームで出来るが、さら脚でもFTPの81%で3時間42分を二日連続は出来るけど結構しんどい。また、75%で4時間より65%で4時間44分のほうが楽だけど、1.2倍の時間をかけてダラダラやる意味も見いだせない。
 自分なら、1時間くらいしか取れないときは81%、3時間以上なら69%~75%を目安にしようと思う。

 また、この88%というとまさにSSTの下限といわれるパワーだが、ここでは有酸素代謝がぐっと制限されだすところなので、有酸素代謝機能を刺激するという点では81%よりも多くの時間を要してしまう。

グラフ1

パワーのボラティリティとタイパについて

 このLMSはアベレージパワーのFTP比によるものだが、一回のワークアウト中にあまりパワーのボラティリティが大きいと、意味をなさないものになってしまう。具体的にいうとFTP88%以上が5分以上継続したり、FTP100%以上で踏んだり休んだり、というパターンである。

 ガシガシ踏んで乳酸を出してしまうと、脂質でなく乳酸が肝臓でグリコーゲンに再合成され消費されるときに酸素が消費されてしまうからである。それはそれで、そういうトレーニングも必要だが、そこにフォーカスするのであれば、もっと短くインターバルトレーニングのような負荷のかけ方をするほうが効果的だろう(個人の見解)。そうなってしまったら身体は脂質代謝の生理機能を向上させようとしなくなる。
 せっかく頑張ってるのにイマイチ伸びないひと、こんな練習に陥ってないだろうか。

 いろんな練習会を見ると、中途半端なゾーンで頑張っている選手を多く見かける。某SZKさんが「常に速い」って評するアレとか。某イ〇ーメ信〇山形の練習でも、、、

 ということで、世界の北〇選手はZONE2でボリュームを稼いでください。毎週LMS180くらいは欲しいところ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?