古木は深山ではなく神社仏閣に残ってる
森の作業は結構重労働ですので、今年の酷暑の中、7月末と8月の作業は中止になりました・・と言う事で作業の報告、感想はお休みですが、昨年は今の時期に近隣の古木、名木を見学に行きました。
大変楽しかったので今年も行くのかなと思っていましたが、皆さんの健康を優先して中止されたようです(僕には決定権ないので・・)。しかし、昨年を思い出しながら報告します。
この地区(三河)では、古木は、主に神社、仏閣に残っていますが、さすがに屋久島のように数千年と言う古木はないものの、数百年、あるいは千年近いと言われる古木は結構あります。
この地方は戦国時代には信長、信玄、秀吉そして家康など日本の中心的な役割をしていた土地で、歴史があり、それに伴う由緒ある神社、仏閣が多い一方、低い山が多く連なっている地形で、山林はほとんど木こりなど、人の手が入っている、いわゆる“里山”で、原始林はほとんどありません。このような歴史や環境の中で、神社、仏閣などにだけ、古木が、多くが信仰の対象となりながら何百年の間、大切に保存されています。
ただ、それだからこそ、古木、とは言っても全くの自然の樹木ではなく、人間の歴史とともに生きてきたと強く感じさせるのがこの地域の古木達で、植林と伐採を繰り返してきた里山の森と、悠然とその人間の歴史を見てきた古木のコントラストが、なんとも言えません。ちなみに京都でも古木巡りをした事がありますが、それぞれ個性的でありながら、木々の境遇は良く似ています。
古木には、杉が多いようですが、枝垂桜(しだれざクラ)などもこの近辺には古木がよくあります。ただ、杉と違い桜はひこばえ(孫生え)も含んで、樹齢としているケースもあるようで(個人的推量)、ひこばえがしにくい杉とは定義が違うようにも思われます。いずれにしても人間の寿命に比較すれば樹木は桁違いに永い寿命です。
昨年見学したのは、杉2本、ヒメシャラ、梨の原木、松、イチョウでした。最初に見た大杉は、長い年月で太い根が地上に露出し、うねっている独特の形で迫力満点でした。もう一本の杉は主幹が真っすぐ天を衝いて、他を圧する大木です。2本とも貫禄、迫力十分で数百年と言われる樹齢も納得できるものでした。後者の大杉は丁度昨年度はNHKの大河ドラマが放映され、家康の命を救った杉と言われています。
少し珍しいのはヒメシャラの大木で、夏椿とも呼ばれる梅雨時に白いきれいな花をつける木で人気があり、拙宅も含め庭に植える事の多い木ですがこの神社の境内にあるほどの大木はそうめったにないようです。行った時期は花季ではなく、残念ながら花は咲いていませんでしたが、木肌がとても美しい木で、大木になるとそれが際立っていました。
このような古木は人間が保護しなければ、あっという間に寿命を迎えてしまいます。たとえ人間の生活環境に妨げになる事があっても何もしないで我慢する事も重要です。保護と言うと色々人間が世話をする事をイメージしますが、よく名木、大木に人々が興味を持つように周りの土地を整備したり、見学し易いように根本に駐車場を作ったりすることで、何百年も生きてきた木が短期間で弱ったり、枯れてしまう残念な例は少なくありません。
人間の都合のいいように環境を整えることと、自然を守ることは相いれないことは良くあります。環境を良くすることと、自然を守ることは全く別の視点で考える必要がある事を古木達は教えてくれるように思います。