呪物なのか禍々しいモノなのか3
巻物が紐解かれるとそこには色の付いた日本画が現れた。
赤い着物を着た女性がボロボロの家のような軒下で立っている。そして少し後ろを振り向きながらどこか上の方を見ている絵だった。おそらく江戸時代頃の絵だと思う。かなり古い物なのか色が少し霞んでいたがそこまで保存状態が悪いと言う感じでも無かった。
ただ・・・
その絵を見た瞬間に背筋に悪寒が走った。言葉も出なかった。あくまでも直感だがあまりこの絵を長い間見てはいけないと感じた。特に女性の目だけは見てはいけないと。
「何これ?江戸時代の絵?なんでこんな・・・」
「とにかく早くしまって!!早く!!」
「え?なんで?」
「いいから早く!!」
彼女の言葉を遮り私は言った。彼女もその私が言わんとしてる事を感じ取ったのか黙って巻物を丸め直して紐を結んだ。
「何?これ?やばいやつ?」
彼女の言葉に私は頷いた。とりあえず、私はこのモノが本当にやばいモノなのか確認したかった。彼女はそう言った感覚がゼロなので影響を受けにくいし全く何も感じとる事も出来ない。
確か隣に住むさとちゃんは霊感が強い。彼女に見てもらったらやばいモノかどうかは分かるだろう。
「とりあえずさとちゃんに見せてみよう」
私はそう言うと巻物を持った彼女を連れて隣の部屋に行きドアをノックした。確か1時間くらい前に帰宅していた音がしたから部屋にいるはず。
「はぁーい」
と声がして扉が開きさとちゃんが出て来た。
「どうしたの?」
さとちゃんが私と彼女を交互に見て言った。
「さとちゃん、ちょっと見て欲しいモノがあるんだけど見てくれる?」
私がそう言うと私の隣に立つ彼女がさとちゃんに巻物を差し出した。
「え?何これ?巻物?なんでこんなの・・・」
と、さとちゃんが喋りながら巻物に手を伸ばしてそれを手に取った。
「きゃあああ!!」
と、さとちゃの指にそれが触れたと同時だった。さとちゃんは悲鳴をあげて巻物を地面に落とした。
「さとちゃん!?大丈夫!?」
彼女が落ちた巻物を拾ってさとちゃんを見た。
「何これ!?熱い!?熱すぎる!?これなんなの!?やばすぎるよ!!これ!!」
さとちゃんは顔面蒼白になりながら両手を振っている。
「やっぱり・・・やばいやつだったか・・・」
私がそう言うさとちゃんが「何これ!?説明してよ!!」と悲鳴に近い声で言ったので私はこれまでの経緯を説明した。
「とりあえず、これがやばいモノだと分かったからこれをなんとかしよう。どこかこのアパートの一目につかないところに隠すか置いておこう」
私がそう言うとさとちゃんと私はアパートの中を探し出した。それと同時に恐ろしい事に2人は気づくのである。今まで毎日のように歩いていた廊下。階段の横。キッチン。リビング。
なぜ・・・
なぜ今まで気付かなかったのだろう・・・
さとちゃんと私は顔を見合わせる。私もだが、さとちゃんの顔も引き攣っていた。
「ってかこのアパートっていつからこんな禍々しいものだらけになってるの?」
「いつから?なんで?」
さとちゃんは深いため息をついて顔を両手で覆った。廊下には奇妙な仏像があり、階段の横には異様なオーラを放つ人形があった。キッチン、リビングにはなんとも表現し難い歪な絵があった。
そう、このアパートのあらゆる所に普通じゃない凶々しいモノがあったのだ。
おそらく今までそれはそこにあったのだろう。しかしさとちゃんと私は何故かそれに気付けなかった。
理由は分からないが私が巻物を発見した事により堰を切ったようにそれが次々と分かるようになった。
このアパートに置いてあるモノ。その全てがやばいモノだった。
私達はその異常さにこれ以上このアパートにいるのは危険と判断して、私と彼女とさとちゃんの3人で次のアパートに一緒に引っ越すこととなった。
不思議な事にそれからさとちゃんの様子はみるみると良くなり最初のような明るいさとちゃんに戻った。私達もそれ以降全く喧嘩する事なく平和な日々が再びやってきた。
モノが狂わす何か。モノが何か良くないモノを呼んだりする事もある。それが更に渦を作りそれは強大となり飲み込まれていく。
あの時あの巻物を見つけて良かったのかどうだったのか。それは今でも分からない。
これを書くに当たって久々にあのアパートを調べてみたらそれはまだ存在していた・・・
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?