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呪物なのか禍々しいモノなのか2

住んでいたところには最初から家具がついてあった。なので着の身着のままで引っ越して来て、出て行く時も簡単に出ていける。自分の好きな家具とかを置けないがそれ以上の利便性もある。

私はその備え付けのタンスに服だけを入れるのみの引っ越しで済んだ。かと言ってそんなに服も持っておらず、引き出しを少し開けたスペースにだけ服を入れていた。

話は戻るが隣人のフンさんが出て行った次の日。私は洗濯した服をタンスに入れていた。全て入れ終わるとタンスを閉めようとしたが家具が古いせいもあってか引き出しが引っ込まない。

「・・・・・」

私は引き出しをしばらく見つめた後、勢いよく力任せに引き出しを押し込んだ。

ガゴッ

と乾いた音が聞こえて勢いよくタンスが押し込まれる。それと同時にタンスの中から

カタン!!コロコロコロ・・・

と何か音が聞こえた。

「ん??」

そんな転がるようなもの入れた記憶がないが・・・

そう思いながら閉めたばかりのタンスを再びゆっくりと開いた。

「ん?」

私の入れた服の奥に何かがあった。何か丸く長いもの。少し暗くてよく見えなかったので今まで最後まで開いた事のない引き出しを最後まで引っ張り出した。

「なんだこれ・・・」

その引き出しの奥にあった物。それは古い巻物だった。私はその巻物を手に取らずジッと見下ろす。

日本の古民家のタンスの奥にあるものならまだしも、何故こんなノッティングヒルの地下のアパートの引き出しにこんな物があるのか。

よく見るとそれは巻物ではなく掛け軸のようだった。しかし尚更掛け軸がこんなタンスの奥に閉まってあるのか理解できない。掛け軸は飾ってこそ意味があるもの。それをこんなタンスの奥に隠すように仕舞ってるなんて。

それに私にとってとても禍々しい雰囲気を放っている。手にとってはいけないような直感が働いた。しかし、これをどうにかしなければならないような気もする。

「・・・・・」

しばらくタンスの取っ手を持ったまま考え込んでいたが突如部屋の扉が開き彼女が部屋に入って来た。

「え?何してるの?」

そう言いながら私の元にやって来て

「え?何これ?巻物?何?こんなのあったの?」

と言いながら彼女は私が止める間も無くその掛け軸を手に取った。

「あ!!」

と私が声をあげたが彼女はすでに掛け軸の紐をほどいていた。



3に続く

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