
えも言われぬほど美しいノクターンとセレナーデはいかが? 【クラシック編】
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昨日、右目の白内障の手術をしたばかりなので、しばらくは眼帯に覆われたまま、不自由極まりない日々を過ごすことになる。
海も山も車の運転も、そして長い読書もスケッチもビールもダメだとなると、何を楽しみに・・・

そうだ、こういう時こそじっくりと音楽に浸るチャンスじゃないか!とポジティブに思い直す。
あぁ、音楽があって良かった ^_^
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秋の夜長はノクターンとセレナーデがよく似合う。

ノクターンは日本語では《夜想曲》と訳されるように、「夜《に》想う曲」、または「夜《を》想う曲」と定義されるが、楽曲構成に特別の形式や決まりがあるわけではない。
ノクターンといえば誰しも真っ先に思い浮かべるのはショパンだろうが、では、この曲をお聴きになったことはあるだろうか?
さだまさし『風が伝えた愛の唄』
(1985年リリース)
曲の一部にショパンのノクターン2番をモチーフとして取り入れていることに気づかれるだろう。
ショパン 『ノクターン2番 変ホ長調』
ピアノ:フジコ・ヘミング
さだまさしはクラシックの素養を積んだ優れたメロディ・メーカーである。
この曲も自然な形でクラシックをポップスに融合させて実に美しい楽曲に仕上げている。
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ノクターンに対してセレナーデ(小夜曲)とは、本来は「夜の窓辺で愛しい人に向けて奏でる音楽」、といったほどの意味だ。
ここで紹介するセレナーデの原曲は、19世紀のイタリアのエンリコ・トセッリが書いた地味なピアノ曲だ。
ご覧のように、ごく普通の愛らしいピアノ曲だ。悪くない。
Serenata Rimpianto, Op. 6, No. 1
ところが、この曲が現代のワルツ王、アンドレ・リウの手にかかると、未だ見ぬ桃源郷とはかくもありなん…と思わせるほどノスタルジックで美しい弦楽セレナーデに変貌する。
『ナイチンゲール・セレナーデ』
アンドレ・リウ・オーケストラ
音楽は解釈と編曲とプロデュース次第で、忘れ去られる平凡な曲ともなり、受け継がれる名曲とも成り得るという見本だろう。
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もう一曲、一般には広く知られていないが、ジョージアの作曲家、ヴァージャ・アザラシヴィリ(今年の2月に死去)のノクターンをご紹介したい。
モーツァルトやシューベルトなどの古典派から現代のシャンソン、スタンダード・ジャズまでの影響が伺えるが、えも言われぬ甘美な旋律に、これ以上何の解説が必要だろうか。
アザラシヴィリ 『ノクターン』
チェロ:アレクサンダー・スレイマン
ピアノ:イルマ・イサカーゼ
その曲を、今度は髙木璃々子のヴァイオリンで聴いてみよう。
ストラディヴァリウス特有の深い音色を、G線の低音域からE線の高音域までフルに響かせて、ノクターンというよりも華やかなセレナーデ風に仕上げている。
胸に込み上げてくるものを感じないだろうか。
このように、ノクターンはショパンだけの専売特許ではない。
有名無名を問わず、この世界には美しく素晴らしい音楽が星の数ほど散らばっている。