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プリズンブレイク

久しい更新となったが、相変わらずきんちゃくと私の生活は順調に進んでいる。
時に巣箱に籠り、時に大暴れし。
そんな中、脱走劇は起こったのだ。

執念

ハムスターは甘くはない。
我々人間が考えている以上に賢い生物だと痛感させられた。
ある日、私が自宅へ帰ると、ケージと砂場を接続しているパイプが浮いている状態となっていた。
そう。きんちゃくは自身の城から脱出していたのだ。
焦るという表現では片付くはずもなかった。
例によってすぐに彼女へ電話で伝え、捜索を開始した。

まずは捜索範囲を考える必要があった。
私の独自ルールの中には、各部屋の扉を閉めておく。というものが存在する。
何か気持ち悪く、そして何よりも温度管理がうまくできないからだ。
しかしその日に限っては、最後に家を出たのは彼女だ。
彼女は逆にあまり扉を閉めない。
もはやその日は全部のドアが開いている状況だったのだ。

絶望

それからはとにかく部屋をひっくり返すようにきんちゃくを探した。
風呂場、トイレ、キッチン、テレビ下、クローゼット。
どこにもいない。かすかな音さえも聞こえない。
もちろんだが、最悪のケースを想像していた。
どこかに挟まり身動きが取れないのでは…
何らかの隙間を見つけ、もう家にすらいないのではないのか…

ふと、きんちゃくが部屋んぽをする時に興味を持っていた場所を思い出した。
クローゼットの中の衣装箱だ。
最後の頼みの綱だ。ここに居なければこれ以上探すところが無い程にまで探した。
衣装箱は3段仕様になっており、上から順に下着類、サッカー衣類、彼女の衣類。と分けてある。
私は上段から探し始めた。
中身を全て取り出し、わしゃわしゃと振ってみる。
やはりいない。

最後下段の中身をガサっと取り出す。
その時手に感じた感触は確実なるハムスターの感触だ。
やつらは想像をはるか超えてふさふさしている。
そして爪が引っかかり痛い。
無事にきんちゃくを発見した。
非常に安堵し、良かった。と口から漏れた。
彼女の下着の中で寝ていたきんちゃく。
その気持ちは分からなくも無い。
一旦ケージには戻さず、そっとそのまま衣装箱の蓋を閉じた。

いきなり見つかって驚くきんちゃく。
そわそわしている…

再反省

やはり主である私の管理不足だ。
winwinの関係である為には、もちろん安全管理を行うことが一つの前提である。
今回の出来事は非常に危険な為、改めて反省を行うこととする。
反省には改善がつきものだ。

きんちゃくの脱走からの大冒険はさぞ楽しかっただろう。
不安もありながらも新しい寝床を探し続ける旅。
「馬鹿にすんなよ」と言わんばかりの清々しい脱走劇だった。
マイケル・スコフィールドも愕然とするだろう。

夜ゲームをしようとコントローラーを手に持ち気付く。
スティックのゴム部分が少し齧られていた。


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