「サニー・スポット」第9回
初夏の日曜日の午後、二人は偶然市内の映画館で出会う。それは、大手配給の娯楽映画ではなく、独立プロダクション系の作品を中心に上映する小さな映画館だった。高藤が岸場に気づいて声をかけ、二人は隣り合わせて、バルト海沿岸のエストニア出身の若手監督の映画を観た。内容は、非識字者の中年男性が勤め先で出会った未亡人に字を教えてもらい、紆余曲折を経て、男性がケーキ製造機械の特許を出願して成功を収め、未亡人を迎えに来るというラブストーリーだった。
映画に感動した二人は、地下鉄駅そばのスターバックスで、コーヒー片手に映画談義に耽ってから別れた。示し合わせたわけではないが、その後も二人は日曜日の午後にその映画館で出会うことがあり、そのうち何度かはコーヒーを飲みながら作品批評を楽しんだ。
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