「サニー・スポット」第12回
その後二人は押し黙ったままスタバを出てあてどもなく歩き続けた。しばらくして、ホテルのネオンが連なって見える辺りに出くわすと、近くに客待ちのタクシーが二台いるのを見て、突然高藤が左手で岸場の右腕をとったまま動かなくなった。
タクシーに乗るつもりなのか、もう少し歩くつもりなのか。高藤の真意を測りかねた岸場は彼の手を一度振りほどいてから、両手で高藤の左腕を掴んだ。しばらくして二人は一緒にネオン街の方向に歩き始め、帰りは深更に及んだ。
それ以来、高藤は映画館には行かなくなった。岸場は高藤が自分を避けているように思えて、携帯のメールや留守録で、あるいは職場で手渡す書類にメモを紛らせて不平を訴えた。
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