ジグソー 第2回
その流れに導かれるように、佐伯が語り出す。
「昔ね、子どもたちが小さい頃、いろんなとこ連れてって一緒に遊んだ。日曜日、朝ご飯の前に、近所の田んぼを自転車三台で走って、近くの公園でキャッチボールとかフリスビーをよくした。子どもって公園にある遊び道具が大好きだよね。知らない道具を見つけると目が輝くんだ。公園の隣の空き地に行ったら、雲雀がものすごく高く舞い上がって、ピーチクパーチク鳴いていた。見上げる首が痛くなるくらい高かった。子どもたちもポカーンとして見上げていた。お日様の光が眩しかった。暖かくて気持ちよかった。槇野さんは、お子さんはいらっしゃるの?」
佐伯の話を聞いていて、槇野の脳裏にも黄色いフリスビーが滑空し始めた。一成は、貴裕より遙かに遠くまで飛ばしていた。いくら頑張っても、その半分の距離も投げられなくて、悔しかった。そうだ、思い出した、雲雀もいた。本当に高く舞い上がって、うるさいくらいに鳴いていた。青空に浮かぶ白い雲がきれいで、そこにポツンと雲雀のシルエットが浮いていた。え? うちには子どもがいるのって、訊かれたんだよな。貴裕は慌てて答えた。
「うちは上が男、下が女で三つ違いですけど、どちらも公園の遊具は大好きでしたね。昔のことを思い出したんですか?」
一成は、一生懸命思い出そうとしているような表情になった。
「うーん、分からない。そんなことがあったような気がするけど、はっきりとは思い出せない。でも、懐かしいなあ。そうだ、その空き地は、今はもうマンションがいくつも建っている。そう、あそこだ。あの辺りまで自転車で行ったりしたのかなあ」
「多分、そうなんでしょうね」
「でも、子どもたちの顔や名前は忘れちゃったなあ」
「そのうちまた思い出すんじゃないですか」
そう言いながら、貴裕は、自分はそうなることを願っているのだろうか、それともそうはならないことを望んでいるのだろうか、と自分自身に問いかけていた。