サニー・スポット 第23回
12・13調査委員会の主な役割は、旧8・3調査委員会の活動の検証であり、それは順調に進んだ。旧調査委員会が廃止に至った経緯については、吉住取締役への回答書の内容をほぼ踏襲した文書に基づいて、植田特別臨時支店会議議長や田野畑前調査委員などに確認を求めて調査報告を作成した。旧委員会の調査結果の妥当性の検討については、完成目前だった旧委員会調査報告書をなぞる形で、内容確認のために当事者二名への事情聴取を再度実施した。
新委員会は計三回の調査と二回の会議を経て、最終報告書を二月二十二日開催の、第四回特別臨時支店会議に提出し承認された。最終報告書には、高藤修一の岸場綾音に対するセクシュアル・ハラスメントを事実として認定し、規定に基づいて六ヶ月の停職処分が妥当であると記されていた。また、会議では山畑委員長から、沢内香奈恵弁護士が、二週間前の二月八日付けで委員会に辞表を提出したとの報告があった。
二月三日に行われた申立人岸場綾音への事情聴取で、沢内委員はこう質問した。
「あなたの言動に、相手の誤解を招くようなところがあったと思いますか」
この問いに岸場は少し動揺した様子を見せたが、やや間を置いて冷静に
「思い当たりません」と答えた。
だが、その後の聴取では、彼女の態度には、かたくなで素っ気ない非協力的な雰囲気が漂っていた。そして翌日、岸場から沢内弁護士を忌避したいので、委員の交代を要求するという申し立てが提出されたと、山畑委員長から辺見議長と調査委員に報告があった。忌避の理由は「沢内委員の言動は被害者に対する配慮に欠け、被害者の尊厳を傷つけた」というものだった。岸場の不平を察知した山畑がそれをくみ取り、忌避という手段を教え授けてその方向に導いたのではないか、と辺見は疑いもしたが、それは推察だけにとどめることにした。
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