「サニー・スポット」第20回
Ⅳ
平成への改元後まもなく発覚した金融不祥事によって、投資家や金融機関が投資や融資を引き揚げ、バブル経済の崩壊が起きた。それに続く、失われた十年あるいは二十年や三十年とも呼ばれるデフレ不況の影響を受けて、都市銀行の多くが財務体質悪化に見舞われ、合併、持ち株会社、業務提携などの手法による再編の波に飲み込まれた。椿銀行と春日銀行もその例に漏れず、さまざまな方策を検討吟味した末に、窮余の策ともいえる対等合併に踏み切った。二十年以上前のことである。
両行とも銀行業界の中堅クラスで、資本金、行員数、預金高、支店数、営業収益に加えて、関東以北を主な地盤とする点も、ほぼ同じであった。同地域で競合していた銀行同士の合併の常で、異質の企業風土の融合は、一筋縄では行かないことが多い。さらに、必然的に促進される店舗の統廃合は、顧客には不便を強いると同時に、銀行内では昇格人事の停滞という憂鬱な状況をもたらす。
合併後のこだま銀行の役員は、旧椿銀行と旧春日銀行の出身者が交代で取締役会長、取締役頭取、専務取締役、常務取締役、取締役の役職を分け合っている。当時は社外取締役を別として、トップの田上圭輔取締役会長が椿系、ナンバー2の酒井修太郎取締役頭取が春日系で、以下両系列が交互に続き、次の役員人事では逆の順序で分け合う。
たすき掛け人事とかジグザグ人事と呼ばれる方式で、双方のバランスをとるための方便ともいえる。当然規定などはないが、不文律として存在する。一般行員の昇格人事にはこのような仕組みはないが、おおむね同様の趣旨で運ばれる。いずれの場合も、合併に起因する昇任機会の減少や遅延という事態を、行員は耐え忍ばなければならない。
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