「サニー・スポット」第18回
岸場からそう聞いて、植田は一瞬きょとんとした顔になったが、すぐに気を取り直して話をつなげた。
「ほう、山畑さんがそう言ってましたか。それは何よりです。そうですか……、吉住取締役にも随分とお力添えをいただいていますので、その意味でもどうぞ、心置きなく仕事に励んでください」
そう言って岸場を送り出したあと、植田は自分の椅子ではなく、再びソファに深く身を沈めて、しばらく虚空を見つめながら考え込んでいた。
四日後、支店長室で吉住取締役への回答書の草稿を辺見に渡したあとで、植田は話を切り出した。
「先日の岸場君の話に少し引っかかるものがあったので、それとなく本店の気の置けない同期や先輩などに探りを入れてみたんだ」
「どういうことでしょうか」
植田が何を言いたいのか、辺見には見当がつきかねた。
「うん、まあちょっと聞いてほしい。単刀直入に言うと、山畑副支店長が昨年の夏以降つまり例の事案の発生以降、吉住取締役と頻繁に接触してはいないだろうかと尋ねてみた。もちろん、別な用件のあとでついでの雑談を装って話したんだけどね。少し鎌をかけて、副支店長が一生懸命取り組んでくれて、吉住取締役とも密に連絡をとってくれているみたいで実に頼もしい限りだよ。解決は早いと思っている。本店のほうではこの件で何か聞いたりしているか、という感じで」
予想もしなかった植田の話の内容に、辺見はやや面食らった。
「副支店長が吉住取締役とですか」
「岸場君が言うには、山畑さんは田野畑君同様に、熱心に岸場君を励ましていたそうだ。それに、副支店長を通じて吉住取締役からも力づけられたと言うもんでね。そしたら案の定、副支店長は三度ほどあった東京出張の度ごとに、吉住さんと夕食をともにして、酒も入っているからか、調査委員会や臨時会議のことを細々と話していたらしい。
そのうちの二回の夕食に別々に同席した同期と先輩の二人に話を聞くことができたんだ。調査委員長とリスク統括部長委嘱取締役の会話だからごく自然なことだと、二人とも思っていたそうだ。ただ、その二回の会食のあとで取締役と副支店長は二人でもう一軒はしごをしたそうだ。話してくれた二人はついていかなかったらしい」
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