55話 文化祭1日目①
1週間はあっという間に過ぎ去り、文化祭当日の朝がやって来た。僕はもみじが来る前に転移魔法で領主様の家を訪れることにした。理由は魔法が使えるようになったのに女の子にならないことだ。僕は屋敷の前に転移するとそこには使用人らしき人の姿があった。
「あなた様は、アイザワ様ですか?」
「はい!僕がアイザワです!領主様に会いたいのですが」
「かしこまりました。少々お待ちください」10分程待っていると懐かしい顔が出てきた。
「久しぶりね。アイザワ殿」
「久しぶりですね。領主様」
「それで、今日はどんな用事できたの?」
「はい。実は折り入って相談がありまして」
「相談?」
「私の身体のことです」僕は言葉で伝えることが難しいと思ったため実際に魔法を打ってみた。
「まぁ、男にも魔法が使えるのね」
「あの、どういうことですか?」
「あら、ごめんなさい。この国では男が魔法を使う事例はないのよ」
「前にもそんなこと言ってましたね」
「えぇ、だからこれは仮説に過ぎないのだけどあなたの身体の中には何かあるのかもしれないわね」
「僕の身体の中?」
「魔法はね。心臓を中心に血を巡って体外に放出されるの。相手を攻撃する時でもね」
「そうだったんですか」これは初耳だ。今まで魔法の原理がよく分からないまま使ってきたがようやく理解することが出来た。
「えぇ、でも私にも詳しくは分からないの。ごめんなさいね」
「いえ、いいんですよ」
「あえていうなら、私たちの世界とあなたの世界では魔法に対する概念が何か違うのかもしれないわね」
「概念、ですか?」
「えぇ、私たちの住む世界は女しか魔法は使えない。だけど、あなたの住んでる世界はこちらと違い男も魔法が使えるのかもしれないということよ」
「なるほど」理解したように返事をしておく。なぜなら僕の世界には魔法というものはないからだ。領主さんに聞きたいことも聞けてので今日はこの辺で現代に帰還することにした。
「今日は色々と教えていただいてありがとうございました」
「気にしなくていいのよ!力になれなかったんだし」領主さんは申し訳なさそうに返事をしてきた。
「それじゃあ、また来ますね」
「いつでも待ってるわ!」現代に戻った僕は急いで学校へ向かった。なぜなら今日は文化祭1日目だからだ。
「もう、ともきどこに行ってたの!?」寝室から出るとリビングにはもみじが来ていた。どうやら、心配してきてくれたようだ。
「あと少しで文化祭始まるのよ!準備もしないといけないし早く行きましょ!」
「うん!そうだね」こうして僕は学校へ向かった。