シリアル・エクスぺリメンツ・レイン(PS1)の謎を考察
ついにシリアル・エクスぺリメンツ・レインを完走した。といっても特別難しいゲームでもなく、ただ時間を要するゲームなだけであるのだが、なんだかすごくカロリーを消費した気分だ。
このゲームのうすのろな操作性には、散々苦しめられた。終盤は慣れたのか、仏のごとく悟りを開いたのかなにも思わなかったが、何一つわからない序盤は、ストーリー以上に苦しめた。やきもきして停滞してると、ペルソナちゃんはグロ映像投げてくるし、ストーリーのなぞは多いし、、、まぁ完走した今となってはいい思い出かもしれない。
上記のように操作性は散々なのだが、それ以上に厄介なものがある。それはこのゲームの多すぎる謎である。この多すぎる謎こそが、このゲームを伝説の鬱ゲーたらしめるところであるが、それにしたって多すぎる。わからない英単語が多い長文問題のようで、雰囲気わかるけど、確実にわかるものもなければ、全体像は正しく理解できないのだ。このゲームは正しく理解することが出来ないように作られている。これは確実であろうとする情報が、物語の後半で信頼性を揺らがす資料が出てきたり、全体通すと整合性がとれなかったりするのだ。
しかしこのゲームがすごいのが、こんなにも掴めないストーリーであるにもかかわらず、何故か真相を探ろうとするやる気がみなぎってくるところである。これはネット上に多くのlain考察が転がっていることもそうだし、未だにlain何周年とか祝ってるところを見ると、このゲーム特有の魅力といってよいだろう。私自身も、プレイ中や完走後の空いた時間に、このゲームの考察を頭をぐるぐる回転させて考えたし、未だにふと「あれどういうことだったのかな・・」と思うことがある。こんなにもプレイヤーをのめりこませるなんて、このゲームは本当にすごいものだ。ただのゲームと片付けるには本当に惜しい作品だ。
話の枕が長すぎなような気がしてきたので、ここらでlainの考察をしていきたいと思う。私は頭のキレるほうじゃないし、間違った情報で語ってしまっていることもあるかもしれないが、大目に見てほしい。
・美里ちゃんは実在していたのか。
一番最初にこのゲームの一番の謎に触れていきたいと思う。なぜなら、私はこの謎に対してどう答えを出すかで、この作品は大きく見方が変わると思うからだ。作品内では、実在するのかいないのか、どちらとも考えられるような情報が入り乱れており、断言はできないのだが、個人的に美里ちゃんは実在していたと考えている。なぜなら、そう仮定しないとこの物語が崩壊してしまうと思うからだ。
まず美里ちゃんがいなかったとすれば、玲音の日記にしか登場しない登場人物が本当にいたかいなかったのか判別つかなくなってしまう。美里ちゃんが実在しようとしなかろうと、それらの人々が本当にいたかなんて断定できないのだが、美里ちゃんがいなかった場合、恐ろしく実在したかどうかの信頼性が下がってしまうのだ。
なぜなら、美里ちゃんは玲音の日記上には、相当造詣が深く記されているし、それ以上に玲音に多大な影響を及ぼしているからだ。美里ちゃんのおかげで、学校にも普通に登校するようになったし、幻覚も見なくなった。幻聴だって、美里ちゃんが日記に登場して以降、特別記されていないところを見ると、なくなったように思える。学校に普通に登校するになったり、幻覚・幻聴がなくなったりする程の影響を与えた人物がいないとなると、全ての登場人物の存在が怪しくなってくる。玲音のお父さんだって実在したかどうか疑わなければいけなくなるし、お母さんだってどの時点までいたのかわからなくなる。小学校の頃の先生も、部活の顧問や先輩だってそうだ。
また、美里ちゃんは日記上でイラストで出てきている。このイラストをこのゲームの世界における写真だと考え、それでもなお美里ちゃんが実在しなかったと考えるなら、もう何一つ信頼できる情報源がないことになる。映像だって、日記上のイラストも信頼できない。だとすると、最後の柊子と玲音が死んだ映像だって、最初のカウンセリングだって信頼できない。そうなるとこの物語をいかようにも捉えることが出来てしまう。そもそもこんな物語無くて、誰かの夢でしたとか。全部魔法のせいだったとか。もう物語として崩壊してしまうわけだ。だからここは、美里ちゃんは実在したと仮定しなければ、それ以上の考察はできないのだ。私は美里ちゃんが実在したのかしてないか、どちらかを決めることがlain考察の根幹であり、全ての始まりだと考えてる。
大体、今日子ちゃんに柊子が聞き取り調査していた頃には、柊子自身もメンタルが不安定でどこまで信じていいのかわからないし、柊子が玲音に「肉体か戸籍のような第三者の情報がないと存在証明出来ない」と大口かましたにもかかわらず、柊子は美里ちゃんの肉体だって、戸籍の情報だって調べている形跡がない。柊子自身も今日子ちゃんの一方的な情報だけで、存在しないと早急に決めつけているように感じる。また、玲音の友達であるなら、きっと今日子ちゃんのような明るくて人気者タイプの人物ではなくて、大人しめで目立たない子だと予想できるし、今日子ちゃんと美里ちゃんは同じ小学校でもないし、中学に入ってからのクラスだってかぶってない。美術部内では有名だったようだが、所詮一文化部内の話だし、展覧会にも結局出展してないし、大きな功績も築いてないだろう、いっても中一だし。だから今日子ちゃんが美里ちゃんのことを認知していなくても、まぁおかしな話ではない。だから柊子の早とちり説にも一定の説得力があると思う。
玲音と柊子が美里ちゃんの存在証明について衝突するカウンセリングでは、もう玲音が柊子のメンタルを揺すぶるパートに入っているし、玲音が遠回しに美里ちゃんの存在証明をしているだけで、やっぱり美里ちゃんが実在しなかったと考えるだけの情報は、両者とも出してない。
結論は、美里ちゃんが実在していたと考えなければ前に進まないし、そもそも柊子の早とちりだった可能性もあるし、柊子が疑ったときにはもう玲音とカウンセラーの立場が変わろうとしていて碌な精神状態じゃなかった、ので実在すると仮定するということだ。
・玲音は三年前に突如現れた、特別な存在なのか。
終盤の映像記録や、柊子の記録によると、玲音の記録は三年前からしかないようで、玲音はまるで三年前に突如この世に現れたかのようだ。他にも玲音の出生の謎を深める情報がある。玲音が柊子にぬいぐるみのビケちゃんを紹介する際に、ビケちゃんは生まれたときにはもうあったと話しており、その「生まれたときにあった」というニュアンスは普通の人間であればおかしく、物心ついたときからあることを記憶しているならともかく、生まれた時からそばにあると認知しているのはどうにもおかしい。この情報と、玲音の記録が三年前からしかないことを合わせて考えると、玲音は三年前に小学校の高学年レベルの発育状態で突如現れ、その時からビケちゃんがそばにいたと考えることが出来る。しかし、この考えはこれら二つの情報だけで考えたらこうなるというだけで、この考えがおかしいと思える要素なんて山のようにある。玲音の両親は一体なんなのか、小学校の同級生のとも君や今日子ちゃんは別に玲音に対して、違和感があるようなそぶりは見せていないのはなぜか。なぜ橘グループは、そのような普通の人とは違う点を調べずにクライアントとして請け負ったのか。このように玲音が三年前に突如現れたとするとおかしな点だらけなのである。
そもそも玲音の記録に三年前以前のものがないということは、PCのデータベース上になかったことから端を発したもので、その程度なら玲音ならいくらでも改ざん出来るだろし、そのことに気づいた頃の柊子は、もう命を絶つすんでのことだった。だから三年前以前の記録がないというのも実際本当かわからない。周囲の人々が(特に小学校の一緒だったとも君や今日子ちゃん)玲音に対して違和感を持ってるそぶりがないし、やはり私は玲音が普通の人間のように三年前以前の情報もあったと考えている。
ビケちゃんの発言も、単なるニュアンスのミスだと考えるのが普通だと思う。玲音はまだ小学生だったし、友達が少ないほうでコミュ力も低いだろうし。それか生まれたばかりの玲音とビケちゃんが一緒に写ってる写真か動画かの記録があって、それに基づく発言だったか。だから結論として、玲音は三年前以前も普通に生きていた普通の人間であり、ビケちゃん発言もニュアンスのミスか、そういう記録があったかで、決して特別な生命体であるわけではないとする。
しかし牧野の死だったり、その他色々な資料からも、玲音の超能力的なものが示唆されているのは明確だ。それでも玲音の出生に関しては、周りの人々が何も違和感なく過ごしているから、普通の人間とするしかない。よく言われる橘グループの実験体で、玲音の柊子以外の人間関係は全てハリボテであるとするなら、玲音は特別な生命体といえるだろう。でもその言説を支持できるような証拠が少ないというか皆無といってよい程なので、私は拡大解釈がすぎる考えだと思っている。
・玲音や柊子の裏に、第三者の目論見があったのか。
玲音の発言には、誰かからの妨害を受けているという内容のものが複数ある。ロボ父ちゃん作り中のが顕著であるが、その他にも、玲音の周囲の環境の悪化が不自然なほどの不幸の連続によるものであり、誰かが仕組んでそうなったのではないかと勘繰る程だ。柊子のほうは、妨害は主に玲音からされていたが、環境の悪化は玲音同様、不自然なほど不幸の連続に起因していた。玲音は友達の引っ越し、両親の離婚のダブルパンチで、柊子は新しいクライアントがつかない、タケシが別の女と結婚、ヨシダが裏切りが連続的に起きた。玲音のほうは、友達の引っ越しと両親の離婚との因果関係があるので、事実だけ並べると別に不自然ではないのだが、両親の変貌っぷりは明らかにおかしい。柊子のほうは、もうファラオの呪いにでもかかっているようなオーバーキルっぷりであり、これらの不幸だけで首をくくらなかったのは、もう強靭なメンタルだったと言っていいだろう。
玲音の妨害もそうだし、玲音や柊子二人の連続的な不幸も、やはり人為的なものと疑ってしまう。それと高島教授や牧野の自殺も極めて不自然だ。しかし誰がそんなことをするのかなんて、作中では到底わからない。唯一橘グループが怪しいような雰囲気を見せているが、グループ一丸として関与していたのか、グループ内の特定の人物だけが意図的にやっていたのかわからない。タケシは浮気しといて平然としていたから、タケシの浮気は単なるデマで、そうするとタケシは玲音・柊子研究に積極的に参加していないように思えるから、やはり特定の人物だけの研究なのだろうか。
シリアルエクスぺリメンツレインは、「レインに関する連続的な研究」という意味で、連続的ということをメディアミックスの各々でのシナリオのことを指すなら、アニメの黒幕は橘総研であるので、ゲームも橘グループが黒幕であるのかもしれない。
でもここまで読んでいただければわかると思うが、そうかもくらいで断言できるほど資料がないのだ。その中で説得力のあるシナリオを見つけ出すことが考察だとわかっているのだが、この作品のこの要素に関してはそこまで踏み込めるほど情報がない。なのでここでは、橘グループの特定の人物が関与していた可能性があるが、よくわからないという結論にしておく。ここまで読んでいただいてこんな結論で申し訳ないが、そういうゲームなので、としか言いようがない。もしこれ以上の考察がある方は教えていただきたいです。
この記事ではここまで。まだまだ考察したいことはあるが、それはあるのかわからない次回に回すことにします。