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第2期トランプ政権で米国は、環境対策を撤回し石油・ガス産業の利益を最大化する

 ドナルド・トランプが次期大統領に決まった。「もしトラ」が現実のものとなった。これによって米国のエネルギー政策はどう変わるのか。

 これまで継続的にバイデン政権を批判し続けてきた石油・ガス業界メディアである「World Oil」は第2期トランプ政権の誕生で大喜びしている。
 早速、「トランプ氏の歴史的な勝利は米国のエネルギー政策に大きな転換をもたらすだろう」という記事を掲載、第2期トランプ政権でのエネルギー政策の転換への期待を示した。
 まず最初に「トランプは就任後、間違いなく米国のエネルギー自立を回復すべく、全米で掘削を増強しようとするだろう」としている。米国の石油・ガス掘削数はバイデン政権下の規制もあって、減少していた。その規制をトランプが撤廃することを期待している。ただ、掘削数が伸びないのは「多くの事業者が引き続き財政規律を実践していること、合理的な利益を確保するには商品価格が一定の水準を上回る必要があること、機器やサービスのコストがまだ多くの事業者に見合うほど下がっていないこと」もあり、2025年に急速に拡大することはない、と見ている。
 もう一つは戦略備蓄の拡大。バイデン政権で石油高騰の緩和のために備蓄放出したが、逆に備蓄を増加させることを期待。
 ただ、これは石油業界によって利益にはなるが、一般市民には負担が大きくなる施策と思われる。

 LNGに関しては、今年1月にバイデン政権が行った新規LNGプロジェクトの認可手続きの停止が再開されると期待している。
 新規認可の一時停止によって米国のLNGプロジェクトの長期供給安定性への不安感があり、米国LNGの競争力が落ちた、という分析がある。今年FIDとなったアブダビLNGにはそうした不安がなく、しかも電動LNGプロジェクトであることから、多くのバイヤーが集まっており、むしろ調達力の下がっている日本が厳しくなったともいわれている。米国LNGも、電動化やCCS(CO2回収・貯留)を想定した案件が普通となっており、環境適合性については遜色はないので、長期安定性が回復すれば、世界市場への供給に不安定感はなくなり、日本も調達しやすくなるので、この点はよい成果となるかも知れない。

 一方で最大の問題がIRA(インフレ抑制法)が撤回される可能性がある。これは環境適合性の高いプロジェクト、水素や大気直接回収(DAC)、そしてCCSなどの案件に対して、炭素強度に応じて税制控除などの支援をするもの。これを撤回することで、既に進んでいる大規模DACやCCSハブといった米国のプロジェクトの進展が止まる。あるいはプロジェクトが撤回される可能性もある。また電気自動車普及促進政策もトランプは止める。
 
 さらに、環境保護庁やその他の機関が業界に課そうとしたメタン報告規則は、時間はかかるにしても、トランプによって阻止されることになる。

 つまり、石油・ガス業界の利益の為ならば、気候変動など気にしないという身勝手な政策がトランプによって実行される可能性が高い。アメリカは自国の利益以外考えなくなった。

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