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セフレとご飯を食べる

かつて都会に住む独身一人暮らしの私は、セフレと待ち合わせるとまずどこかで食事をしました。
飲み屋か、昼間ならファミレス。そこで近況報告などをしあって、どちらかの家かホテルに向かう、というのが基本のデートプランです。


現在、田舎(住むには不自由しない程度に店があるが、車必須で娯楽はパチンコかイオンの冷やかし)の主婦の私がセフレと待ち合わせると、ホテルへ直行直帰です。
都会暮らし中との差は、私に一人暮らしの部屋がないこと・限られた時間しかないこと・飲食店は「目的地」であり、道すがら存在するものではないこと などから派生します。


セフレとの関係性や相互の存在意義にもよると思いますが、とりあえず田舎の私の中では「セフレ=ホテルで会う人」と一括りにしています。
会話が成立する人と仲良くなっていくとピロートークも延々と続くので、ホテルで3時間過ごして帰宅するとちょうど私の制限時間内だったりします。


「私たちはこういう会い方だよね」と暗黙の了解ができていくものだと思います。
たまにそれを超えて「え、ご飯行く?」という流れになると、え~あ~まあいいんだけど~、、、と感じるようになりました。
嫌ではないです。会計が私持ちなのも構わないです。
でも、ある程度時間をかけてホテルでだけ仲良くやってきた間柄で飲食店に行くのがなんか恥ずかしい。


ホテルで会う異性と面と向かっている時間て実はあまり長くありません。
ソファに横並びに座り、ベッドに並んで寝ていれば、相手の顔を正面から見る時間はそんなにないのです。
騎乗位の時間くらいじゃないでしょうか?私は相手を見ませんが。
そんなわけでホテルの薄暗い照明でせいぜい横顔を見て喋っていた相手と対面で飯を食うということが異常事態だと感じます。

これについては過去に書いていました。


行為後の22時半に「今日パンしか食べてない。お腹すいたね。焼肉行こうよ」と言い出したB君とは、知り合って1年半ほどになりますが、ホテルで会うだけの清らかな関係でした。

たしか前回会った時にも「焼肉食べたい。この時間にやってる店ないかな?」と言っていて、B君に他意はなくタダで焼肉を食べたいだけなのだろうとはわかっていても、1年半も清らかな関係だったじゃない!?と思います。


余談になりますが、私の感覚としてパートナーが自分以外と性行為をしている事実があってもあまり気にならないが、食事や健全な遊びなどを楽しんでいたらアウトと思っています。
性行為は生理現象だけど、食事中にする楽しい会話は自我だと思うのです。

1年半も生理現象の排泄先(という名目が立つ)だった間柄で、焼肉食べるの?
食べるところ見られるの恥ずかしいんだけど、、、
いや、対面して喋ること自体が恥ずかしい。
B君にそんな繊細なセンサーが備わっていないとわかっていても、私にとっても大したことじゃないよというフリに神経使うなあと思いました。
B君は私の10歳年下ですからね。カッコ悪いとこ見せたくありません。

最近考えた10歳差で一番差を感じる年代「私が17歳の時、相手は7歳」です。

「じゃあまだやってる焼肉屋調べてよ」「よーし」とゴロ寝のバックハグ状態でスマホ画面丸見えで検索しだすところがかわいいです。
「俺ねえ最近ポケポケやってるの」
「ポケ?」
「ポケポケ知らない?」
「知らない」
「あのね~」
などと雑談があり、手持ちのカードを見たりYouTubeを見たりで焼肉屋を探し始めて30分ほどで最近できた3時までやっている店を発見します。
「やってるか電話してみて」
「あい」
「今日何時までやってますか?、、、今混んでます?あ、りょうかいでーす。はい、は、、、あっこいつもう切りやがった」
「あ?接客学びなおせ!自分のシフトくらいわかっとけバイトが!」
などとやっているとさらに30分ほど経っており、空腹のピークを過ぎて店に向かいます。


ホテルからおうちに送ってあげるのと、焼肉を食べに行くのと、明らかに車内のテンションが違いました。焼肉食べに行くのが嬉しいのでしょうね。お互い元気でした。
「都市部に住んでた時にはシートベルトしないでスマホ見ながら片手運転で80km/hがデフォでも3年無違反だったのに、田舎に戻ってきたら1年で3回捕まった」
「じゃあ私の法定速度遵守運転なんてトロいと思ってるんだ」
「思ってないよw」
などと戯れ、駐車場の出口を間違えて「ビルの隙間とか通れないの!?店、裏側!?素肌の部分もう感覚ないんだけど!?」というほど寒い徒歩を経て、こんな店あったんだ〜と全然行かない区域の小洒落た焼肉屋で焼肉を焼きました。


水を飲む姿くらいしか見たことなかったB君は箸の持ち方がめちゃくちゃで、「あ〜育ち悪そうな感じ、めっちゃ解釈一致だなあ」と思いました。

なぜ初めての食事で共同性が必要な焼肉に来てしまったのか?と思いましたが、「これ焼いていい?良いに決まってるか、払うの私だし」と境地に至り、少し落ち着きました。
セックスする前だったら食べられないけど、セックスの後だから食べちゃおう。とキムチも頼みました。
「(私)ちゃんユッケ食べる?」
「ユッケって何?」
「よーし作ってあげる」
焼肉屋で頼むものなんてどの店でもほぼ固定だよねという話をしました。だから冒険してユッケなど頼まないと言いました。
「はいこれがユッケです」
「おいし!…けど飲み込んでいいのか脳がバグる」
「生肉だからねえ」

ああ楽しい。深夜にセフレと焼肉を食べているという事実が楽しい。と思いました。
次会う時にはきっと食事しないし、なんならUberしてホテルで食べるほうが楽なのですが、公共の場でセフレと堂々としていることが許される時間帯なのが良い。
お酒は飲めませんが深夜だからこそのテンションだなあと、チルいと思いました。

なぜか蛍光灯ばりに白い照明の店で、ただでさえ色白のB君が青ざめて見えるほどでした。
「この照明オレンジのほうが絶対肉美味しそうに見えるよね」
「ね。でも初めて来たから写真撮ろう」
と肉の写真を撮っていて可愛かったです。
野良猫に餌付けするような気持ちでした。
めちゃくちゃな箸の持ち方で中ライスを食べるB君は、若者というか子供みたいでした。よく0時過ぎに中ライスいけるなあ。


焼肉屋の個室で肉を焼きながら話すことと、ホテルで行為後に裸で話すことは、なぜこうも違うのか?
公共性の問題か、テーブルを挟んでの距離感かわかりませんが、服を着た状態で食欲を満たしつつでもこの子と楽しく過ごせるんだなあと思うと一層情が湧いてやばいなと思いました。

その帰りもなんだかポヤポヤしていました。

0時過ぎまで遊ぶようなセフレはB君だけですが、深夜の毒気は魔性です。

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