moment作品紹介其の21猫街西成編、長本淳
大阪に住んだことがない人間でも
一度は聞いたことのある地名「西成」。
簡易宿泊施設が集中する釜ヶ崎や元遊郭跡の飛田新地を含む
かつての濃い大阪が残る街である。
まだ無機質な高層ビルに浸食されきっていないゆえに
路上で猫に遭遇することの多い猫街でもある。
そんな西成では、時折「猫しかいない風景」に出くわすことがある。
まるで昔からそこにいたかのように
飄々と景色に馴染み佇んでいたりするのだ。
その瞬間、猫こそがこの街の真の住人ではないか、という気がしてくる。
家と家の隙間、軒下、塀や屋根の上を自由に往来する彼らは
人間よりもよほど街のことを知っている。
時代性や価値観とも無縁に、ただ逞しく健気に生きている。
ある種の羨望を覚えながら思う。
この猫たちと彼らを優しく包み込む街を
いつか消え去るであろうこの風景を
記憶に留めたいと。
作者キャプションより
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