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肩を押して
私と彼の好みは、ずいぶん違う。
まあ、正反対かもしれない。
彼は食事に全くこだわりがない。自分のお箸で私が食べても全然気にしない。
一つしかないお菓子を半分食べて、「食べる?」
って聞いてくる。
気取らない、お得感満載のレストランや、食事にはすご~く詳しい。
私はというと・・・自分はフーディーズだと思っているくらいなので、とにかく美味しいと聞くといてもたってもいられない。
美味しい和食、洋食。普段は、ほぼほぼ外食しないけど、そんな時には、どか~~んと使ってしまう。
きっと彼が聞いたら、目を真ん丸にして、もったいない、高すぎる。って言うんだろうな。
そんな彼と私。
ちょっと前にコンサートに行った。彼が先にチケットをゲットした。私は行くつもりはなかったので、買ってなかったけど。
ふと行く気になって、チケットを買った。
「チケット買おっかな。」
「そう?高いよチケット。」
「でも、なんか行きたくなったし。」
「ごめん、誘えばよかったね。俺が悪かった。」
うん?いやあ。あなたのせいじゃないよ。初めは行く気なかったんだから。
夜中にチケットを発券して、帰ってきた。
「チケット、げっと~。」
「こんな遅くに?悪かったね。俺が早く誘えばよかった。」
何度も謝る彼。
いやいや、あなたが悪いんじゃないってば。でも、心配してくれた?
・・・なんだか回数追うごとに、優しくなってるんだよね、彼。
「コンサートの前にお茶でもしようか?」
「うん。」
お茶をしている間、彼はた~~~くさん話を聞かせてくれた。
「ねえ、もうそろそろコンサート会場行こうよ。」
「今日楽しいけん、コンサート行くのやめようか?」
えっ?あなたの好きなアーティストじゃないの?
まじか。冗談?
私といるほうが楽しい?ふふふ。へへへ。
コンサート会場で、彼が、
「こっちこっち。」
すっと私の背中を押してくれた。
「こっちだよ。一緒に入ろう。」
私の背中に置かれた彼の手は、優しかった。
左肩に、彼のあったかさを感じて、私の心は、ほわんとなった。
あ~二人でコンサートっていいなあ。
誰かがそばにいてくれるって、いいなあ。
その日私は、コンサートより、彼のことで頭がいっぱいになった。
ほわんほわん。うふふ。えへへ。