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家は聴いている

家のリビングは、梁がむき出しの高い天井だ。壁は漆喰。
梁の黒、漆喰の白のコントラスト。

薪ストーブのゆらゆらゆれる赤い炎を見ながら、藤田恵美のcamomile blendをかける。
スピーカーから高く透き通った歌声が舞い降りてくる。

ゆったりソファーに座って、ぼお~っとするのが好きなひと時。

今読んでいるのは、petey ピーティー。

生まれつき障害がありながら、たくましく生きる。

脳性麻痺という障害がまだ認知されていなかったころ、精神も病んでいると考えられていた時代。
ピーティーは、一人で食べることも、排泄することも、寝返りをうつこともできないのに、全てのことに感謝して生きる。そのピーティーの精神が、本当にたくましい。

寝たきりなのに、考えている。成長している。毎日、毎日、少しずつ。誰の助けを借りるでもなく。

私は、こんな風に成長できるのだろうか?人間の本当のたくましさとは何か?考えさせられる。

以前、建設会社の社長さんが家を訪れた時、こんなことを教えてくれた。
「漆喰の壁、いいですよね。」
「でも、防音とか、音響とか、そんなこと考えずに作ったから。」
「いいんですよ。こういう家は。音を吸収するから。いい音楽を聴けば聞く  ほど響きが良くなりますよ。」
そんなものかと思った。けれど・・・・・・

ああ、家も聴いているんだ。成長するんだ。動くこともなく、声を発することもないのに。

人もそうだ。動かず、声を出さずとも、聴いている。成長している。

ピーティーのように。

ピーティー、あなたのように全てに感謝して生きたい。

秋のさわやかな空気にも、夜に聞こえてくるコオロギの鳴き声にも。

オレンジ色から青に変わる美しい空にも。

ふと耳元でささやいてくれる朝の挨拶にも。

目に見えるもの、耳で聞くことができる音にも。

肌で感じる温度や感触にも。

どこからか香ってくる美味しい香りにも。

ピーティーのように。感謝して生きたい。

自分の先入観を疑わねば、変えねば。

成長できない人はいない。誰にでもそのひとなりの人生がある。

あなたにしか生きられない人生が。

あなたでないと喜ばせることができない人々が。

きっとある。


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