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E.T.としての福留光帆
〈SungerBook-舌鼓12〉
─ 大喜利ファンタジーの新世界
いま、日本じゅう福留光帆に罹患している人は大勢いることと思います。私も、こんなことは初めてなので、なぜだろう、なぜだろうと考えているうちに、やっと見えてきたものがあります。それを、以下にレポートしたいと思っています。
2024年春、降臨
私の感覚では2010年代後半ぐらいから動画配信が活況を呈してきて、まずは個人がユーチューバーとして出てき、そのうちその成行を見てYouTubeの世界に既存のTV界から本腰をいれての参入があるのでは、と思っていました。その予想と違ったのは、ベテランのプロデューサークラスが先行きを考えて退社、サラリーマンとしてではなく、個人のキャラが立った動画制作に乗り出していることです。テレ東の高橋弘樹氏、佐久間宣行氏などです。企画力、プロデュース力が俄然、動画をおもしろくしていると感じています。
最近、佐久間氏のNOBROCK TVで、福留光帆なる若い女性が出てきました。トンツカタンの森本とでやりとりする大喜利動画です。この動画企画に至るきっかけとなったアルコ&ピースと彼女の回もあるのですが、この二企画について私は気がついたら、それぞれ10回は視聴してしまっているのです。何故かおもしろくて、ついつい繰り返してしまうのです。私は、このおもしろさが不思議でしようがありません。
一人、部屋で口を開けて笑ってしまっている
自分に、気がつきます。すでに観始めて2週間ぐらいになるかと思いますが、私は今日確信しました。福留光帆はE.T.だった、と。
若い子にありがちな経歴
福留光帆は元AKB、今は二ートであり、アルピーの回にも「久しぶりのお仕事です」と登場してきます。年齢二十歳、若々しく、初々しい、人間の「女の子」に成りきっています。
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上記の二つの動画を何回か観ているうちに、私は福留光帆はE.T.であるかもしれないと疑うようになりました。回答が早く、キレが並みの人間ではないのです。特にその時の表情が淡々としていて「何、人間はこんなこと面白がっているのかしら」と超然としているのです。
そもそもはアルピーの平子が、二ートのタレント志望女子を前に、往年のキャリアを生かし、お笑いで圧倒する筈だったのでしょう。ところが、設備上のアクシデントがあり、番組ディレクターとゴタゴタし、ゲスト的存在の福留をドギマギさせるという風向きとなります。アルピーは準備不十分で大喜利はできないと、制作側の責任をなじります。このように本番前の打合せの感じで展開していきます。しかし、ディレクターは強行し、お題を平子に迫ります。
「『池の水抜いてみた』のようなタイトルのクソ番組言ってみてください」とディレクター。
平子は「甘栗むいてみた」と回答。ディレクターはつまんないとして一蹴します。すると、平子はお題を彼女に振ります。
「福留さん!」
と福留光帆へ。
「・・・・〇〇〇〇〇〇〇〇〇」
すると、それを聞いた平子は思わず笑い、酒井の表情が変わります。あっけにとられているのです。
少しあって、ディレクターから第2問が発せられます。
「学校にあるこわいチョークどんなチョーク?」
関西人として地球に侵入
平子が必死で答えるのは
「おばけチョーク」
ディレクターは、おもしろくないとしてダメを出します。
平子は半ばふてくされ、
「福留さん、いける?」
すると
「〇〇〇〇〇〇〇」
今度は平子も酒井も揃ってはっきりと笑いを見せます。
平子は、
「大喜利やってたでしょう」
しかし、福留は明確に否定しつつ、
「関西人なんで、尼崎出身なんで・・・」と説明すると、アルピーの二人は、揃ってうなずきます。
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noteでこの大喜利動画の逐一を紹介するために、これを書いているわけではありません。それは動画自体で楽しんでいただくべきものでしょう。この福留嬢の回答ぶりや表情の動きやらで、私は、人間としてのリアリティー、エビデンス作りを察知したと感じています。関西の大喜利の生活風土にいた、とはかなり説得的な説明のしかたです。アルコの二人は「尼崎出身なんで・・・」を聞いて妙に得心していました。異星人は、人間を精通した説明をするのです。
それに、元AKBとしてアイドル志望の履歴も、可愛らしい二十歳にぴったりくる設定です。このあたり、周到に計算されています。
大喜利、未知との遭遇
アルピーと福留とのやりとりから次に、佐久間P.D.は彼女の回答ぶりに逸材ではないか、を検証するためトンツカタンの森本との動画企画を立ち上げます。滝沢カレンや渋谷凪咲に続く存在として値踏みをしているのです。つまり、P.D.としては自分がタレントを見いだしたことを確認するためもあり、森本をダシに使っているわけです。始まる前に、
「福留さんよりおもしろい大喜利の答えを出し続ければいいから」と焚きつけます。
森本も、
「いいんですね」とすっかりその気です。
破天荒のおもしろさは動画に譲り、こんなお題があったということだけを二つ紹介しておきます。
「このゾンビ、持てようとしているな。なぜそう思った?」
これに対して森本は
「首スジを噛む前にチュッとする♥️」
と答え、ドン滑りします。
もう一つは
「こんなコンビニいやだな、というコンビニどんなの?」
森本は
「2.4時間営業」と答えますが、クリーンヒットとはいきません。
これらに対して福留嬢の答えは、おおっ!と思わせたり、意表をついていたり、野郎じみていたり、で、佐久間P.D.に大ウケ、スタジオもざわつきます。
森本は、終了後「キレが凄すぎて!」と完全に兜をぬぎます。私に言わせれば、そりゃあ
E.T.にかなうわけないでしょう、となるわけです。
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構成企画のおもしろさ
配信番組としては、アイドル修業中女子とプロ芸人との大喜利合戦といった体で、いちばんはそこのおもしろさではあるのですが、実はそのおもしろさを倍増する仕掛けも手がこんでいます。
そもそも、ドッキリを仕掛けていることからくるのですが、それが単純ではなく、二重三重に織り成すおもしろさになります。そこに新人タレント福留としてのE.T.の才能が発揮されるので、きわめてシュールな展開となっていきます。ここ、おそらくP.D.の予想を超えるものと思われます。
そこを核としながら、福留のレスポンスに佐久間P.D.の笑いが入り、おもしろがっていることが強調される効果がでてきます。鋭く反応する人の反応に、人間は理解を促進されます。おもしろがっていることは、おもしろいのです。また、スタジオの制作スタッフのざわつきも、同じような効果につながります。
つまり、番組が二重三重に「入れ子」になっているのです。
また、素人(実はE.T.)とプロ(お笑い芸人)の対抗になっていて、プロがやり込められるという構図のおもしろさがあります。
福留光帆のヤバさ
しかし、そもそもE.T.が美しく人間の女性に整形して、その外見と、口からさりげなく吐き出されるトークのギャップが見ものです。大喜利回答の効果をさほど気にしていないような、あっさりと語られるコメントや、四十五十のおっさんが言いそうなトークを芳紀二十歳の女性が顔色変えずに吐く。
特に、進行していくと、福留がボートレースにはまっていることが判明してきます。しかも、その入れ込みようや、こだわりが、半端でなく、対する芸人だけではなく制作スタッフをも圧倒してきます。何、このオヤジ感、この可愛らしい顔から飛び出す、このギャップ!
私は、単なる利発な若い女子とは受け止められません。これは、地球外生命体が人間の姿に化身しているとでも思うしかありません。圧倒的であり、突き抜けているのです。人間を超えた才能と捉えると、しっくりきます。
彼女のボートレースへの熱も、異次元の笑いを誘います。女の子がボート選手やそのレース展開に、アイドル男子を推すかのごときトーンでうれしそうにコメントするなんて、ただの人間や新種の人類とも思えません。私は差別をしているのではなく、気圧されているのです。そのスペックの高さに。
![](https://assets.st-note.com/img/1711940825565-9mnbORpnh0.png?width=1200)
特に、彼女がおじいちゃんやおとうさんにボートレースについて教えられ「育てられてきた」というくだりは、おもしろさのスタートダッシュが凄まじい。尼崎という土地柄からくるものとはいえ、この時、私は微妙に「男」が彼女に入ったような気がします。大喜利の返しコメントにそれが自然に混じりこんできたりもするのです。
しかし、私は彼女のこのコメントを聴きながら、おじいちゃんやおとうさんの人差し指が
幼児時代の彼女の指に一瞬触れて、燦然とインスパイアする、あのE.T.とエリオット少年のあの瞬間を想起します。その時、コネクトし、トランスファーし、E.T.福留光帆が誕生したに違いありません。
何度でも同じ動画を視聴してしまうことですが、おいしい食べものについてのことが思いだされます。味が複雑なほどおいしいとされます。それと同じように、登場人物のキャラの多様性、番組構成の複雑さ、まして異性人まで入り込んでくるのですから、味わい深さが増してきます。
アルコ&ピースの平子の通常見せることのない表情、酒井の率直な驚き、トンツカタン森本のタレント女子にやり込められてしまう、
ぶちギレ感、今YouTubeは、新しいおもしろさの領域を拡張しているように思います。そんな中、新人福留光帆は、Extra-Terrestrialではなく、Excellent-Talentとして異次元の活躍を見せる期待を感じさせます。
今、彼女は自らの才能に目覚めつつあると思われますが、この他人ごとのように自分に気づく段階はとても魅力的な時間帯と私は思っています。この一時的なレイヤーにいる状態を私はE.T.と呼びたいのです。やがて、まもなく彼女は、人間のタレントとして羽ばたき始めるでしょう。★
※高橋弘樹氏は、昨年テレ東退職後ABEMAに入社しているもよう。個人的な番組制作のできる環境なのでしょう。