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父の話(1)

先だって母が亡くなった。
勢いで写真をSNSにのせたら、お前によく似ているとコメントがついた。
だがしかし、そうではない。
わたしが本当に似ているのは、多分父の方なのだ。

父は母より1年若かったが、10年早く亡くなった。
ボケてしまったけれども、体は最後まで健康で、本当の意味での老衰であった母と違って、父は不摂生のデパートみたいな人だった。

糖尿をこじらせて、脳梗塞と心筋梗塞をほぼ同時に発症するという、世にもまれな最後だったが、そうなる直前まで、家族に隠れて豚骨ラーメンだのハンバーガーだのを食べていた。

あげく、まだらボケで駅前のマクドナルドから家に帰れなくなったりする。

酒もやめられなかった。
そう、父は困った人だったのだ。

別に借金を作って家族を困窮させるとか、暴力を振るうとか、そういうA級のクズの人ではない。

例えばわたしが、母の日に思いつきでカーネーションを買って帰り、「そうか今日は母の日かぁ」などと家族で盛り上がっているところ、
帰宅した彼が「父の日には何もしてくれなかった」などと言い出して、自室にこもってしまうとか、
正月の朝、母の作ったご馳走を前に、「今年はますます生活が苦しくなるぞ。お前たちはどんな覚悟で新年を迎えたのだ」というような説教を始め、子供達一人一人を詰めた挙句、お年玉をやらないと言い出して泣かせるとか、

いわばC級の人だった。

人に話すと、「愉快なお父さんだね」といわれて笑い話にされるのだが、その場にいた人間にはたまったものではない。

その父にわたしは似ている。
容姿ではなく性格の方で。
なかなか重たい事実である。


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