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モチーフ
二つやっている教室の片方が、年内の予定を終了、「良いお年を」という挨拶を今年初めて発声する。
うむ、今年もいよいよ押し迫ってきた。
生徒さんの作品も今日は締めくくりにふさわしく、どなたもレベル高く仕上げていただけた。
わたしの教えることがなくなってしまうので、あまり上手になられるのも良し悪しであるが、贅沢な悩みというものだろう。
さてここは水彩画教室で、毎回果物だとか花だとか、ちょっとしたモチーフを用意して、それを描いてもらっている。
で、モチーフにする素材は、だいたいその日、駅から教室まで歩く道すがら見つけることになっている。
何も考えずに家を出て、下車駅に着いたあたりから、なんとなく頭に浮かんだイメージを頼りに商店街を徘徊して探すのだ。
月に二回の教室だが、題材はせめて1年くらいは被らないものを並べたいし、できうることなら、ちょっと珍しくて描きがいのありそうなものがいいし、さらに予算もあるから、安いに越したことはない。
色合いとか季節感とかも大切だし、描いたときの難易度も考える。
そんな都合の良いものを、よく行き当たりばったりで見つけるものだと自分でも思うのだが、これで何十年もやっていて見つからなかったことはないのである。
我ながら大した能力だ。(別の能力の方がよかったけれど)
ただ、それでもモチーフ選びに苦労することはある。
今日はまさにそんな日だった。
いつもわざとちょっと遠目の駅で降り、2つの商店街を通り抜けて30分ほどかけて会場に向かうルーティーンなのだが、今日は最初に目星をつけた店で、そこそこいいものを見つけたにも関わらず、いやこの先にもっといい品物があるに違いない、という謎の天啓に従ってしまったのだ。
結果、最後まで「もっといい品物」は見つからず、30分かけて最初の店に戻った。
それで昼食を食べ損なったわけだが、わたしのモチーフを見つける才能というのは、突き詰めると、こういう無駄に歩き回ることを厭わない、ポンコツな性格によるところが大なのかもしれない。
というわけで今日のモチーフ。
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