なぜ私を選ぶのか
この間、スマホに差出人不明のショートメッセージが届いた。
よくある、自分の名前を書かずに「機種変したからよろしく」みたいな内容で、普段なら即ゴミ箱行きなのだが、今回は少し違っていた。
メールの冒頭で「タグチくん」と呼びかけていて、明らかにこちらの名前を知っているのである。
一瞬返信するべきか逡巡したが、私にくん付で呼びかけてくる相手など、何人かしか思い当たらないし、その人たちが機種変のたびに番号を変えるような面倒なことはしそうにないので、そのまま無視することにした。
とにかく誰かが、私の番号と名前を紐づけた情報を持っているのである。
これは明らかに通販関係のサイトから漏れたものと思われるが、確かめる術はない。
いつもとは違う緊張感が走った出来事であった。
どうも最近の詐欺メールが不穏だ。
いや、今やメール詐欺は一世代前のものになりつつあり、現状では、なんだろう詐欺SNSとでも言ったらいいのだろうか。
例えばFacebookのなりすましの友達申請。
これがしょっちゅうくるのわけだが、ちょっと前までは数打ちゃ当たるみたいなスタンスで、よく米軍勤務の「男性」医師なんぞを名乗る人物からメッセージが来ていた。
おそらく私の名前の最後に「コ」がつくので、機械的に女性と判断していたのだと思うが、最近はだんだんそういう詐欺側の杜撰さが改善?されつつあるように思うのだ。
先程の例でいえば、申請してくる相手が、中国企業の「女性」CEOだの、引退した(余裕ありげな)未亡人だのに変化していて、年齢もキレイめの40代くらいから、同世代の白髪女性まで、こちらの好みを探るように申請してくるのである。
敵もさるもの、確実に進化しているわけだ。
もちろん現状では、だいたい相手の文章が「あなたの素晴らしいを投稿見て感動しました」みたいな、いかにも中身のないものなので、こちらも騙されることはない。
「また来てるよ」くらいの認識で、笑い飛ばす余裕もある。
ところが先日来た別のメッセージには、ちょっと考えさせられてしまった。
これまた申請詐欺なのだが、どうもしっかりとこちらのプロフィールを読み込んでいるらしくて、「Facebookの"友達かも"の欄にあなたの名前がよく表示されます。私も木工をやっています」と言ってきたのである。
確かにその「木工作家」の友達欄には、間違いなく私の知り合いがいる。
その上、ご丁寧にも自分の作品だという画像まで添えてあるではないか。
昔のウブな私なら、引っかかってしまったのではないかと思う。(実際似たような経緯で友達申請を受け入れた「本物」の方も何人もいるのだし)
結論として、この「作家さん」の「作品」と称するものはネット上の拾いものであることが確認できた。
また、申請メッセージはそれらしくできていても、見に行ったフィードはそこまでの緻密さはなくて、相変わらず、「自然に感謝」とか「美味しい食事」みたいな短文投稿で、肝心の木工についても何もなかった。
「まだまだだね」というわけだ。
しかし本当に相手がやる気を出して、真剣にこちらを騙しにかかったらちょっとわからないな、くらいの危険領域には入っているように思う。
流行りのAIでも駆使したら、そこまでの労力をかけずとも、私も騙されてしまうような日が遠からずくるのかもしれない。
というわけで、全世界の詐欺師諸氏に一言。
私を騙しても巻き上げられるような財産がないんですよ。
ほんと無駄な労力ですので、やめてくださいね。