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猫再び

共同アトリエには、時々わたしのnoteにも登場する、自腹で地域猫に餌をやっている作家さんがいる。
先日の朝、彼女がこちらの顔を見るなり「タグチさん、お願いがあるのです」といってきた。

このお嬢さんは決して悪い人ではないが、相当ちゃっかりしている。
そして押しが強い。

そもそも地域猫への餌やりも、管理者側の「そういう事されると、近所から苦情が来るかもむにゃむにゃ・・」というやんわりしたお達しに、「そうですねぇ誰がやっているんですかねぇ」みたいに見え見えのシラを切って既成事実化して来た猛者だ。

その彼女がお願いがあるというのだ。
この段階で、もう何だかわからないが断れないかもしれないなと覚悟した。

そういえば去年の夏には、ヨーロッパに旅行する彼女に代わって、しばらく餌やりの代行を仰せつかったことがあった。
あれは、「猫は一週間もすれば餌をくれる相手を認識するが、それと奴らが心を許すというのはまた別物である」という当たり前の「気付き」を得た出来事であった。
犬なんか3時間でデレデレになるというのに、まったく猫って生き物は・・・。

さて、お願いというのは、案の定、猫のことだった。

「急に寒くなったじゃないですか、ノラは凍死することもあるんです」

どうやらお嬢さんは、最近アトリエに通ってくる、元飼い猫らしい2匹を気遣っているらしい。
初心者ノラが初めて野外での冬を迎えるという状況に、危機感を覚えたのだろう。

「で、猫小屋を作って欲しいのです」

猫小屋?
キャットタワーとか、猫のゲージみたいなものは見たことがあるが、わたしは寡聞にして野外に置く猫小屋というものを知らない。
犬小屋なら知っているが、本当にそんなものがあるのだろうか。

そう聞くと、確かにあるという。
「見たことないぞ」とさらに確かめると「みんな隠して建てているのです」と、ますます訳がわからない。

とにかく10分ほどの立ち話で、わたしが猫小屋を作ることはどうも確定事項らしいことがわかってきた。

前述の通り、覚悟はしていたので、まぁそれはいいのだけれど、困ったことにどうも猫小屋に対する具体的なイメージが湧かない。
ネットで検索してみても、犬小屋と何が違うのか、同じでいいのか、冬限定のものなのか、何か外せない条件があるのか、などなど、疑問が湧いてくるばかりである。

難しい仕事になりそうだ。

そして、アトリエの猫たちは相変わらず、全然愛想がない。
誰のために悩んでいると思っているのだ。

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