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6年『比』の学習のポイントは1時間目:「2量としてみる経験」が思考のしなやかさを生む

今回は6年生『比』の内容を紹介します。

学習指導要領では、「二つの数量の大きさを比較しその割合を表す場合に,どちらか一方を基準量とすることなく,簡単な整数などの組を用いて表す方法が比である。(p304)」とあるように割合の学習と関連があります。

この単元は以下のような内容を学習します。(教育出版の単元を参考)

  1. 比の意味と表し方

  2. 比の値

  3. 比の性質

  4. 比を使った活用問題(比から部分の数量を求める)

  5. 比を使った活用問題(比から全体の数量から部分の数量を求める)

  6. 比を使った活用問題(日常に関連した問題)

扱いやすさからか「比」の単元は研究授業でもよく参観します。その多くは5の「比を使った活用問題(比から全体の数量から部分の数量を求める)」の内容(比例配分)です。

例えば、このような問題です。

 当たりくじとはずれくじの数の比が3:7になるようにくじを作ります。くじの数は全部で120枚にするとき、当たりくじの数は何枚にすればよいでしょうか。

教育出版 小学算数6 p165

この比例配分を扱い、子どもと共に解決してうまくいった研究授業に私はあまり出会っていません。

自分の実践も含めてうまくいかない時には共通点があります。

それは、「全体の量を比としてみるなんていいの!?」と子どもたちが戸惑ってしまう状況に陥っていることです。

今回は、その戸惑いを解決するための手立てを紹介します。
これからこの場面で授業を控えている方へ、少しでも参考になればと思います。


① 比例配分の難しいところ 〜「比」の理解〜

単元の流れとして、以下のような問題を解決していくことになります。

ミルク2はいとコーヒー3ばいでミルクコーヒーを作りました。
同じ味のミルクコーヒーを作ろうとしています。
どちらの考えが正しいでしょうか。

①ミルク4はい コーヒー5はい
②ミルク4はい コーヒー6はい

教育出版 小学算数6 p156/157

クラスで長方形の形をした旗を作ります。
縦と横の長さの比が3:4で横の長さを60cmにするとき、縦の長さは何cmにすればよいでしょうか。

教育出版 小学算数6 p163

教育出版では具体的な場面のある問題はこの2問です。その他は比の値を求めたり、比を簡単にしたりするような数を操作する問題となっています。

比例配分の問題でつまずくのは、この教科書の構成に1つ要因があるのではないかと考えています。教科書通りに授業を進めていくと、比をイメージする問題は「ミルクコーヒー」と「旗」の2つです。どちらも「部分」と「部分」を2つの量の比としてみています。

そして、その直後に比例配分の問題に取り掛かることになります。先行知識として「部分」と「全体」を2つの量の比と見たことがある子ども以外は、なかなか「全体を比として使う」イメージがもてないのです。


それが、「全体の量を比としてみるなんていいの!?」という子どもの戸惑いにつながるのです。


このように比例配分の内容を理解すためには、「部分と部分」という比のイメージではなく、「どんな数量でも「2量」とみることができる」という認識へと導く必要があります。

先ほども述べましたが、比は「二つの数量の大きさを比較しその割合を表す場合に,どちらか一方を基準量とすることなく,簡単な整数などの組を用いて表す方法(文部科学省,p304)」です。

部分や全体の量を含めた様々な数量を「二つの数量」と見いださせ、子どもが自然と「どんな数量でも「2量」とみることができる」と感じる場面をつくりだすことができれば解決できるはずです。その手立てを打つのは「比例配分」の場面ではなく「比の理解」をする場面。単元の導入場面です。



② 様々な量を「2つの量」としてみたくなる体験を生む授業 〜教科書の簡単アレンジ〜

1時間目

単元の1時間目です。

教科書の問題ではミルクとコーヒーですが、この題材だと「同じ味」が分かりにくいと感じました。そこで、視覚的に「同じ色」なら判断できるのではないかと考え「色水」を準備しました。

色水は絵の具ではなく、もっと粒度の細かいインクのようなものを使います。すると、透明な色水ができるので実際に混ぜた時に色がだんだん変わってくところも素敵です。

子どもたちには、まず「色水を作ります。」という提示だけです。

そこに赤い水と青い水を出します。
すると、「紫の色水を作るんだね!」と反応が返ってきます。

赤をコップ2杯出し、青をコップ3杯出して混ぜてみせます。
「おぉ〜〜〜〜!」と歓声が上がります。



この後がポイントです。

ここまでの流れを黒板で整理するときに、赤と青の折り紙で色水を出すだけではなく、紫の折り紙も提示することです。

そして、
「赤2杯と青3杯で紫ができたね。紫は何杯できたかな?」
と軽く問うだけです。
「もちろん5杯!」と子どもたちも簡単なのですぐに答えます。

ここでいう紫の色水は「全体の量」です。

あらかじめここで確認しておくだけで、子どもたちは「全体の量」も関連付けて考えられるようになります。

また、これまでの割合の学習は「全体の量」をよく「基準量」として考えています。「全体の量」を「基準量」として考えなくても、2つの数量の関係だけ見れば分かるところが比のよさですが、そのよさに気付きやすくなるためにも単元の導入で「全体の量」を出すことで比較対象にもできます。


授業の流れに話を戻します。

「同じ紫色を作ろうと思うんだけど、赤を4杯にしたら青は何杯必要かな?」と問いかけます。

少し考えた後に聞くと、「青は5杯必要」と「青が6杯必要」と2つに考えが分かれました。そこで、子どもたちに自分の考えの理由をノートに整理してもらいました。

5杯必要だと考えた子は「差が1杯分だから、青は5杯」と考えていました。

しかし、少し自信がないらしく「なぜ+2をしているの?」と6杯と考えている子たちに問いかけました。

それに答えるように、6杯必要だと考える子たちが説明していきます。

  • 2杯から4杯は×2だから3×2で6杯(比例の考え)

  • 全体を100%とすると赤は40%青は60%だから(割合)

大きく分けると2つの考えをもとにしています。紫の色水を確認したことで、全体の色水を100%にするという発想が生まれています。

そして、これらの説明を基に「赤2、青3の割合を変えてはいけない」という点が明確になりました。

そこで、比という言葉を伝え赤と青なら「2:3」「4:6」と確認します。すると、「じゃあ、紫でも?」という声が上がるので、「紫と青なら10:6」「紫と赤なら10:4」と折り紙の数を確認しながら比で表していきます。




以上のような流れで導入の授業を行いました。

この子どもたちと行った比例配分の授業が以下のようになっています。

6時間目 比例配分の問題

多くの子が様々な表現方法で「部分」と「全体」の比で見ていることが伝わるでしょうか。

比例配分のような面白い問題も、素地がないまま扱っても難しいと感じてしまう子が出てきてしまいます。

難しい問題に直面する前に関係する素地を養うことで、自分たちの手で「わかった!」「なるほど!」としなやかに考えられる子どもたちの姿を引き出していけると素敵ですよね。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



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